薬剤師のスキルアップ 公開日:2021.08.19 薬剤師のスキルアップ

薬剤師として、より良い服薬指導を行うために知っておきたいポイントとコツ 文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

薬剤師にとって、服薬指導は重要な業務の1つ。患者さんに安心して薬を服用してもらうためにも、医薬品や治療に関する情報を正しく提供することが大切です。しかし、患者さんの中には、無口だったり、話を聞こうとしなかったりする人もいます。こうした患者さんにもしっかりと情報提供して、アドヒアランス向上を目指したいものです。今回は、薬剤師が服薬指導を行ううえで理解しておきたいポイントや、より良い服薬指導を行うためのコツをお伝えします。

1. 薬剤師が行う服薬指導とは

服薬指導は、薬剤師が患者さんに処方された薬を渡す時に、薬に関する情報を提供し、安全に服薬してもらうように指導するものです。薬の薬効や用法用量を説明して、正しい方法で服用してもらうだけでなく、副作用などの健康被害を未然に防いだり、患者さん自身で副作用の出現に気づいてもらったりすることにつながります。

 

親身な服薬指導は、患者さんのアドヒアランスが向上するだけでなく、患者さん自身の健康を維持するために必要な情報を伝える大切な機会です。薬を扱う薬剤師は、人の命に関わる仕事であることを認識したうえで、服薬指導にあたる必要があります。

 


2. 服薬指導で説明するべきポイント

服薬指導を実施する際には、薬の名称や薬効、用法用量はもちろん、保管方法や副作用、副作用が行った時の対処法、飲み忘れた時の対処法、服用中の薬や食べ物との相互作用などを説明する必要があります。

加えて、朝ごはんは食べるのか、夜勤など不規則な生活リズムではないか、習慣的に食べている物やサプリメントの服用の有無など、ライフスタイルに関わる情報を得ることも、服薬指導を行ううえで大切なポイントです。生活習慣によって薬の服用方法が変わる可能性もあるため、服薬指導では薬や治療の情報を提供するだけでなく、個々の状況をしっかり聞き取り、患者さんに合わせた服薬指導を心がけましょう。

 
►会話を嫌がる患者さんへの接し方で気をつけること

3. 上手な服薬指導をする薬剤師の特徴

薬剤師のなかには、患者さんから指名を受けるほど上手な服薬指導をする人がいます。ここでは、上手な服薬指導をする薬剤師の特徴について見てみましょう。

 

3-1. 患者さんの話をよく聞く

服薬指導に慣れていない薬剤師のなかには、患者さんに間違いなく薬を服用してもらうことに注力してしまい、一方的な説明で終わってしまうことがあります。薬の情報を正しく伝えることはとても大切なことですが、患者さんの話をよく聞いて、患者さんそれぞれに合わせた服薬指導を考える必要があるでしょう。その点、信頼される薬剤師は、患者さんの言葉に耳を傾け、求めている情報を察知してから丁寧に指導しています。

 

3-2. 患者さんとの信頼関係を築く

患者さんとのやり取りをスムーズに進めるには、日々、信頼関係を築く努力も欠かせません。服薬指導が上手な薬剤師は、相手の立場に寄り添い、上手に相槌を打つといった傾聴の姿勢で対応しています。

 

 

服薬指導では、治療とは関係のない家族や友人に関する悩みを相談されることも少なくありません。しかし、こうした薬とは無関係に思える話が服薬指導に役立つことがあります。
雑談の中で患者さん自身の考え方や生活習慣などを知ることもあるものです。

また、どんな話でも聞いてもらえるという安心感が、患者さんとの信頼関係を築くきっかけになります。患者さんから信頼される薬剤師は、医師には言いづらいことを相談される機会も増えてきます。患者さんから受けた相談に対して、親身に対応するうちに、患者さんのコンプライアンスやアドヒアランスの向上にもつながります。

 

3-3. 小児や高齢者など相手に合わせた指導ができる

患者さんが小児の場合、服薬指導を行う対象は保護者になることがほとんどです。上手な服薬指導をする薬剤師は、薬を服用する人が本来の患者さんではないことを念頭に置いたうえで、対応します。

 

特に、子どもが初めて薬を服用する場合、保護者は不安を抱いているものです。薬の説明だけでなく子どものケアに関する不安な点を聞き取り、保護者が安心して子どもに服用させられるように説明するといった工夫が必要です。薬の種類や剤形によっては子どもが嫌がるケースもあります。そうした状況でも、柔軟に対処法を提案できるスキルがあれば、保護者に安心感を与えられるでしょう。

 

一方、高齢の患者さんに対する対応も、工夫が求められます。患者さんのなかには、視力や聴力が低下し、細かい文字が読めなかったり、説明が聞こえづらかったりする人も少なくありません。上手な服薬指導をする薬剤師は、薬袋の文字が読めるかを確認したり、指導内容を理解しているのか言動から察知したりするスキルが高い傾向にあります。また、自身で薬の管理をすることが難しい場合には、医師からの服薬指示を確認し、生活習慣や家庭環境に合わせた服用方法を提案しています。

 
►【接遇・マナーの先生に聞く】高齢の患者さんへのマナー

 

3-4. 患者さんに合わせて指導時間を調節する

いつも同じ薬を服用している患者さんに毎回細かく説明したり、急いでいる患者さんに丁寧過ぎる服薬指導をしたりすると、クレームにつながる可能性があります。逆に、薬や病気に不安があり、しっかり説明を聞きたい患者さんもいます。服薬指導の上手な薬剤師は、患者さんの状況に合わせて、話すスピードや聞き取り方などを変えて指導時間を調節しています。

 

3-5. 指導箋や薬情を上手に活用

指導内容をすべて口頭で説明することも可能ですが、帰宅後の患者さんがすべて覚えているとは限りません。特に、風邪や発熱といった体調不良を抱えている人や、認知症を患っている患者さんは、記憶があいまいになりがちです。帰宅後も安心して薬を服用できるように、薬情や製薬会社が作成した指導箋を使用することも、上手な服薬指導をする薬剤師の特徴といえるでしょう。

 

4. 服薬指導後のSOAP薬歴の書き方

電子薬歴が普及し、現在はSOAP形式で薬歴を記載している薬局や病院が増えてきています。SOAP形式で服薬指導の記録を残すことで、必要な時に情報を探しやすくなります。薬歴入力にあたり、まずはSOAPの項目についておさらいしましょう。

 

■ SOAPの項目

・S → Subjective Data(主観的情報):患者さんの主訴や、話の内容など

・O → Objective Data(客観的情報):検査の結果や処方変更など客観的情報

・A → Assessment(評価):SやOをもとにした、薬学的な考察

・P → Plan(計画):S~Aを踏まえたうえでの治療計画、今後行うケアの予定

 

薬歴は治療を安全に行うためにとても大切なものです。患者さんごとに薬の服用状況や飲み忘れ、体調変化の有無、併用薬などの情報を記載しておくことで、経時的に服用歴が管理できます。

 

自分以外の薬剤師が指導にあたっても、SOAP形式なら、指導内容や検査結果などを簡単に確認でき、薬歴チェックの時間短縮につながります。一目で内容が分かるように箇条書きにするなど、誰が読んでもわかりやすい薬歴になるように、丁寧に取り組みましょう。

5. ワンランク上の服薬指導を目指して

薬効や用法用量を覚えているだけでは、十分な服薬指導はできません。服薬指導では、患者さんが安心安全に薬を服用できるようサポートする必要があります。一人ひとりの患者さんに合わせたサポートができるよう、常に知識やスキルを蓄積する必要があるでしょう。そのためにも、日頃から本や医療雑誌を読んで勉強を続けることが大切です。

例えば、ハイリスク薬の副作用や注意事項を覚える、患者さんに対する伝え方のバリエーションを増やすなど、勉強すべき項目は多くあります。同じ情報を提供するとしても、伝え方によって、患者さんが薬の服用に抵抗感を覚え、服用を拒否することもありえます。反対に、重要性が伝わらずアドヒアランスが向上しない可能性も考えられます。患者さんの性格や考え方を考慮しながら、伝え方を工夫するスキルもワンランク上の服薬指導をするためのコツといえます。

 

加えて、服薬指導の質を上げる要素の一つとして、コミュニケーションスキルを高めることも忘れずに。患者さんと信頼関係を築くにはコミュニケーション力が必要であり、コミュニケーションが良好に行えれば、治療に対する積極性を促すことができ、結果としてQOLの向上や治療効果の向上を期待できるようになります。患者さんの話を聞き、状況を見極めながら相手が求める情報を提供できれば、信頼される存在に近づきます。コミュニケーションについてもスキルアップを図る機会を設けてみてはいかがでしょうか。

 
►「コミュニケーション能力」を高めるには?

6. 今後は英語での服薬指導スキルも必要

日本政府観光局(JNTO)によると、訪日外国人の数は2018年が3,119万1,856人、2019年が3,188万2,049人と増加しています。2020年は新型コロナウイルス感染症が流行したこともあり、訪日外国人数は411万5,828人に減りましたが、今後、感染症流行が落ち着く頃には、また増える可能性があります。

 

また、みずほ総合研究所は、日本に滞在する外国人の人口、増加数、増加率が、2019年には過去最高と報告しており、15~44歳の年齢層では日本人よりも外国人が多いようです。10代、20代の外国人が日本で家庭を築く可能性を考えると、将来的に、日本に住む外国人は増えることが考えられます。今後は、医療施設を訪れる外国人が増える可能性を考慮して、薬剤師としてスムーズな対応ができるような英語力が求められるかもしれません。

 

英語のスキルが必要だと理解していても、英会話が苦手で何から手を付けたらよいのか困っている薬剤師もいることでしょう。まずは、製薬企業くすりのしおりなどで作成されている英会話の資料を集めるのはいかがでしょうか。

 

例文に沿って発音してみたり、指差しで提示してみたりすると、外国人の患者さんにも伝わりやすくなります。コロナ禍で外国人の訪問人数が少ない今だからこそ、外国人の患者さんが増え始めた時に備えて準備をするチャンスかもしれません。

 
►外国人の患者さんへ接する時の心構えとは

7. より良い服薬指導を行うために

より良い服薬指導を行うためには、患者さんとのコミュニケーションを円滑にすることがとても大切です。たくさんの知識や経験を持っているのに、コミュニケーションスキルが原因で患者さんへ役立つ情報を提供できないのはもったいない。薬剤師は、医薬品や医療に関する知識や経験を高めるとともに、患者さんとの信頼関係を築く努力が欠かせません。より良い服薬指導を行えるよう、日々スキルアップに取り組みましょう。


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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