薬剤師のスキルアップ 更新日:2024.02.27公開日:2024.02.22 薬剤師のスキルアップ

SOAP薬歴の分かりやすく効率的な書き方とは?Do処方時や個別指導についても解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

薬歴入力において、充実した内容を分かりやすくまとめることは、患者さんが安心安全に薬物治療を行うためにも大切です。しかし、分かりやすさを重視していると薬歴を丁寧に書きすぎてしまい、長文になったり、入力に時間がかかったりします。今回は、SOAP薬歴の書き方のポイントを解説するとともに、効率的な記載方法やDo処方時の記載ポイント、個別指導での指摘事項についてお伝えします。

1.SOAP薬歴とは?

SOAP薬歴とは、SOAP形式で記載した薬歴のことで、薬剤師だけでなく医師や看護師など他の職種でも患者さんの状態が把握しやすいという特徴があります。
 
薬局のルールによって記載内容が異なる場合もありますが、まずは基本となる内容を項目ごとにおさらいしましょう。

 

1-1.SOAPとは?

SOAPの「S」「O」「A」「P」について、改めて項目の意味を確認してみましょう。

 

● S:Subjective Data(主観的データ)
服薬指導で収集する患者さんの意見などを記載する項目です。基本的には患者さんが話した言葉をそのまま記載します。

● O:Objective Data (客観的データ)
血糖値など検査データなどの数値や、薬剤師から見た患者さんの様子を記載する項目です。

● A:Assessment(分析・評価)
S(主観的データ)とO(客観的データ)を踏まえて、薬剤師として判断した課題について記載します。

● P:Plan(計画)
A(分析・評価)に基づいて、今後の服薬指導の方針や注意点を記載します。A(分析・評価)の内容を患者さんに伝えるため、A(分析・評価)とP(計画)は同じような内容になることが多い項目です。

 

それぞれの項目を簡潔に分かりやすく書き、第三者が見ても一目で把握できる薬歴を目指しましょう。

2.SOAP薬歴の書き方のポイント

では、分かりやすいSOAP薬歴を書くには、どうすればよいのでしょうか。具体的なポイントを見てみましょう。

2-1.箇条書きにする

要点が一目で分かるように、できるだけ箇条書きでまとめます。S(主観的データ)は患者さんの話した言葉をそのまま記載するのが基本ですが、長すぎると次回確認時に時間がかかってしまいます。
 
ポイントを絞って簡潔に記載すれば、分かりやすい薬歴になるだけでなく、薬歴を書く時間の短縮につながります。

 

2-2.第三者が見ても分かるようにする

誰が読んでも患者さんの状況が分かるように書くことが大切です。薬局内には、ベテラン・新人、在籍期間が長い人・短い人など、さまざまな薬剤師がいます。
 
新人薬剤師が見ても分かるように、専門用語や略語を使わないように配慮したり、転職や店舗間異動などで在籍期間が短い薬剤師でも経過が分かるように記載したりと、誰が見ても理解できる薬歴を書くように意識しましょう。

3.SOAP薬歴を速く丁寧に書くために単語帳機能を活用しよう

薬歴は単語帳機能を最大限活用することで、丁寧かつ、入力時の時間短縮が可能です。単語帳機能は、パソコンと電子薬歴それぞれに搭載されているので、それぞれの使用ポイントをまとめました。

 

3-1.パソコンの単語帳機能を使用する

医療系の専門用語は難しく、1回で変換できずに手間取ることがあります。最近のパソコンは変換機能が優れており、変換パターンを学んでくれるので、頻繁に使う用語については、すぐに変換される場合が多いでしょう。
 
しかし、頻度の少ない用語は変換に時間がかかる可能性があるため、パソコンの単語帳機能に登録するのがおすすめです。
 
ただし、自身が頻繁に使用する文言だからと、安易に登録するのは避けた方がよいでしょう。例えば「HbA1c」の入力が面倒なため「へ」と入力するだけで候補に挙がるように設定したとします。薬局内に複数のパソコンがある場合は、それぞれのパソコンで登録をしなければなりません。また、登録した本人以外の薬剤師が使用するときにも変換されてしまうため、人によっては使いにくさを感じる可能性があります。
 
一人薬剤師の薬局であれば、自分が使いやすいようにカスタマイズしても問題ありませんが、複数人でパソコンを使用する薬局の場合は配慮が必要です。

 

3-2.電子薬歴の単語帳機能を使用する

電子薬歴は薬歴をスムーズに書くための機能が搭載されています。あらかじめ定型文が登録されていたり、ログインIDごとにカスタマイズできたりと、さまざまな機能があります。疾患に応じた「S」「O」「A」「P」の定型文がある場合は、クリックだけで薬歴が完成することもあるでしょう。
 
ただし、単語帳機能だけに頼らず、必要に応じてキーボードで情報を追加するなど、特記事項を意識することも大切です。また、電子薬歴の中には、音声入力機能を搭載したものもあり、繰り返し使用して入力精度を上げれば、さらに利便性が高まります。
 
電子薬歴は薬歴作成に特化しているため、薬剤師が頻繁に使う医療用語などの登録も多く見られます。電子薬歴の機能を最大限活用すれば、丁寧かつ効率的に薬歴をまとめられるでしょう。
 
※参照:ENIFvoice SP+A|東邦薬品株式会社

 
🔽 効率的な薬歴の書き方を解説した記事はこちら

4.Do処方が続くときのSOAP薬歴の書き方例

Do処方が続くと、代わり映えのしない薬歴が続いてしまうことがあります。Do処方でも変化をつけて薬歴を記載するポイントを見ていきましょう。

 

4-1.副作用や残薬、疾患の経過などを適時記載する

同じ処方が継続していても、副作用の発現状況や残薬を確認するのは、薬剤師にとって基本的かつ重要な仕事です。その都度評価することで、安全に薬物治療が行えます。
 
例えば、モーラステープが毎月継続的に処方されているケースでは、かぶれや光線過敏症といった副作用の確認が必要です。特に光線過敏症は、薄着になる時期や使用部位によって起こりやすくなるので、患者さんに確認し、情報提供を行いましょう。
 
加えて、痛みの度合いなどを聞き取ることも大切です。痛みが続いているのであれば、使用効果が十分ではない可能性がある上、副作用のリスクだけが伴います。痛みが和らいでいるのであれば、痛みの頻度を確認し、症状によって使用頻度を変更するといった提案ができるでしょう。
 
実は大量に余っているといった情報を得ることもあるため、Do処方であっても症状や残薬などを詳しく聞き取り、薬歴に残しておきましょう。

 

4-2.患者情報を更新する

処方内容の確認だけを記録する薬歴は、記録内容が充実させにくいものです。処方内容の確認に加えて、副作用歴や服用歴、アレルギー歴といった基本情報や食事・運動をはじめとする生活習慣など、どれか1つでも新たな情報を聞き取れば、Do処方の薬歴に変化をつけられます。
 
例えば、1日3食取っていた食事習慣が1日2食に変わっている場合、その背景には、食欲の低下や生活習慣の変化などが考えられるでしょう。食生活の変化は服薬状況を確認したり、食欲低下の原因が処方薬に含まれないかを考えたりするきっかけになります。
 
あらゆる視点から聞き取りを行い、新たな情報を得ることが、Do処方の薬歴に変化をつけるコツです。

5.薬歴作成を効率化する情報収集のポイント

分かりやすいSOAP薬歴を書くには、情報収集スキルを高める必要があります。薬歴作成をより効率化するために意識したい、情報収集力向上のポイントを見てみましょう。

 

5-1.患者さんとの雑談も気を抜かない

服薬指導は、病状や服薬状況に関する情報を得る時間です。同時に、何げない雑談から貴重な情報を得る機会ともいえます。「スポーツジムに通い始めた」「ペットを飼っている」「仕事を始めた・辞めた」といった生活の変化に関する情報が、今後の服薬指導に役立つからです。
 
例えば、糖尿病患者さんは、運動や食事によって血糖値の変動が大きくなることがあります。そのため、スポーツジムに通ったりペットを飼ったりすれば、運動量が上がり低血糖症状が現れる可能性が考えられます。
 
また、仕事を辞めると生活習慣が変わりやすいため、運動量の低下や食習慣の変化により高血糖状態がさらに続くかもしれません。糖尿病に限らず生活の変化は病状に影響する要因です。ささいなことでもできるだけ薬歴に書き残す情報としてつかんでおきましょう。

 
🔽 患者さんとの会話のポイントを解説した記事はこちら

 

5-2.経験やスキルを高めて多くの情報を得る

SOAP薬歴の分かりやすさは、薬剤師自身の知識や経験、スキルによっても変わります。薬局薬剤師は、処方箋や服薬歴から、患者さんの病態や今までの経過を予想し、服薬指導時に確認や聞き取りを行います。
 
そのため、医薬品の知識や聞き取り力、コミュニケーションスキルなどが長けているほど得られる情報が多くなるでしょう。得られた情報から必要な情報を取捨選択するにも、経験が求められます。自身のスキルを高め、分かりやすく情報量の多い薬歴入力を目指しましょう。

 
🔽 薬剤師がコミュニケーション能力を向上させる方法を解説した記事はこちら

6.個別指導の指摘事項になりやすい薬歴内容

近畿厚生局の資料では、個別指導における指摘事項を公表しています。薬剤服用歴の記録については、さまざまな項目を明記し「記載がない」「不適切」「乏しい」場合に改善を求めるとしています。近畿厚生局が提示する「記載しておくべき項目」について、SOAP薬歴と患者情報に分類して確認しましょう。
 
参照:平成28年度個別指導(調剤)における主な指摘事項|近畿厚生局

 

6-1. SOAP薬歴に記載しておきたい項目

SOAP薬歴に残しておくべき項目は以下です。

 

● 患者さんや家族などからの相談事項の要点
● 服薬状況
● 残薬状況の確認
● 残薬状況の確認ができなかったときの理由
● 体調の変化
● 併用薬などの情報
● 服用中の薬剤との相互作用が認められている飲食物の摂取状況
● 副作用が疑われる症状の有無
● 手帳による情報提供の状況
● 服薬指導の要点

 

併用薬や飲食物、副作用情報などはSOAP薬歴以外の部分に入力するシステムもあります。局内に導入されているシステムや薬局内ルールに合わせて適切に記録を残しましょう。

 

6-2.患者情報について

患者情報で残しておくべき項目は以下のとおりです。

 

● 体質
● アレルギー歴
● 副作用歴
● 合併症を含む既往歴
● 他科受診の有無
● 後発医薬品の使用に関する患者の意向

 

後発医薬品使用の承諾が取れた場合は、初回のみの確認となることが多いのですが、その他については定期的に確認する必要があります。
 
毎回すべての項目を確認することは難しいかもしれません。しかしながら、服薬指導を行う前に、最終チェック時期が古い項目から優先的に聞き取るようにしましょう。

7.分かりやすいSOAP薬歴を書くためのポイントを押さえよう

分かりやすいSOAP薬歴を書くには、集めた情報から取捨選択し、簡潔に記載することがポイントです。誰が見ても一目で患者さんの状況が分かる薬歴を残すことで、次回の服薬指導をスムーズに行えます。要点を絞って効率よく記載できれば、薬歴を書くための残業も減ることでしょう。自分なりに丁寧かつ効率的に記載する方法を工夫してみましょう。

 
🔽 薬歴について詳しく解説した記事はこちら


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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