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派遣薬剤師とは? 仕事内容・やりがい・時給相場…働き方の特徴 文:加藤鉄也(研修認定薬剤師、JPALSレベル6)

効率的にキャリアを積みたい、プライベートを重視したい薬剤師におすすめ

正社員、パート薬剤師とは別に、派遣薬剤師という働き方があります。自分の希望条件にマッチした勤務先を選択して契約期間内で働くスタイルで、ある程度キャリアを積んだのちに選択肢となる働き方でしょう。今回は、そうした派遣薬剤師の仕事内容ややりがい、収入事情などについてお伝えします。

1. 派遣薬剤師とは

派遣薬剤師は直接勤務先と契約するパート社員と異なり、人材派遣会社と契約を交わして、派遣先で薬剤師として勤務をする働き方です。派遣会社から自分の希望に合った派遣先を紹介してもらうか、派遣募集の求人から選択して契約するのが一般的な流れです。

 

勤務時間や契約期間は勤務先によって異なりますが、同じ職場で働けるのは最長3年間です。単発での派遣になることも多く、「繁忙期の3カ月だけいてほしい」「常勤薬剤師が辞めてしまうため、次の常勤薬剤師が決定するまでの期間だけ働いてほしい」「1週間だけヘルプしてほしい」など、派遣先の要望はさまざまです。

一般的なパート勤務より時給が高い傾向にあり、働く側としてもしっかり稼ぎたい、空いた時間に扶養控除適用内で効率的に働きたいといった希望をかなえることができます。短時間から勤務可能な場合もあり、子育てや介護などにより勤務できる時間に制限がある人や、プライベートを充実させたいと考えている人に向いている働き方といえるでしょう。

 

1-1. 薬剤師も派遣切りの可能性がある?

「派遣で働く」となれば、ニュースなどでよく聞く「派遣切り」のイメージがあるかもしれません。しかし、有資格者である薬剤師は、派遣という勤務形態でも需要も高く即戦力が期待されます。そのため「派遣切り」どころか、派遣期間内に、派遣先から正社員登用を打診される可能性もあります。正社員を目指している場合には、正社員としての採用を前提で派遣される「紹介予定派遣」を利用するのもよいでしょう。

 

1-2. 派遣薬剤師の待遇

派遣薬剤師について、誤解が多いのが「福利厚生がない」と思われている点です。実際には、派遣会社が提供する福利厚生を受けられます。派遣会社との契約時に、福利厚生の利用について必ず確認してください。退職金やボーナスはほとんどの派遣会社では支給していませんが、社会保険完備のケースが多いです。

 

また、1週間あたりの勤務時間に応じて有給休暇を取得でき、雇用保険、労災保険へも加入できます。派遣であっても産休育休制度の利用が可能で、厚生年金保険にも加入できます。2018年の「働き方改革関連法案」により、派遣社員であっても正社員と同じ業務を行っていれば、同一労働同一賃金の待遇となります。業務内容によって異なるケースもありますが、雇用契約の契約先が勤務先の職場ではなく派遣会社というだけで、派遣と正社員の不合理な待遇の格差がなくなるように変化しつつあります。

 

2. 派遣薬剤師の仕事内容

派遣薬剤師として勤務する職場の種類はさまざまですが、最も求人が多いのは調剤薬局です。他にも病院薬剤師やドラッグストアの募集もあり、それぞれの職場によって仕事内容が異なります。

 

 

2-1. 調剤薬局への派遣勤務

調剤薬局の主な業務を「調剤」と「投薬」のふたつに分けた場合、派遣薬剤師がメインで担当するのは「投薬」業務、というのが一般的でしょう。調剤業務は薬局ごとで薬品の位置、分包機の操作、賦形の有無、細かな調剤ルール、近隣病院との取り決めなどを理解する必要がありますが、短期間でそうした調剤内規や薬局ごとの取り決めを理解・実践できないかぎり、作業効率が悪くなってしまいます。

 

一方、監査や投薬で医薬品ごとの注意事項や指導する内容はどの職場でもほとんど変わりません。こうした作業効率性を考えると、派遣薬剤師は投薬前の処方監査、薬品数・入力監査、服薬指導、薬歴入力などを主に担う傾向があります。

 

ただし、在宅専門の薬局では、正社員が患者さん宅を訪問し服薬指導を行うケースが多いため、派遣薬剤師がメインで調剤を担当することもあります。また、勤務先によっては一人薬剤師の派遣もあり、その場合は調剤、監査、投薬まですべてを担当することになるでしょう。

 

 

2-2. ドラッグストアでの派遣勤務

OTC販売単独のドラッグストアへの派遣は少ない傾向にあります。多くの場合、処方箋調剤の服薬指導をしながら、ときにはOTC販売も行うといった一日になるでしょう。

 

調剤併設のドラッグストアへの派遣であれば、担当する業務内容は調剤薬局とほとんど同じです。この場合も、処方箋調剤の投薬がメインですが、OTC医薬品の取り扱いが比較的多くなります。また、OTCの販売業務では、お客さんのニーズを聞き健康相談に乗ったり、既往歴や併用薬を聞き取ったりしながら服薬指導を行います。他にも、レジ打ちやOTC商品の補充といったドラッグストアの日常業務に対応します。

正社員とは異なり、在庫管理や売上管理といった業務への対応を求められることはほとんどありません。ただし、一人薬剤師の場合や、マネージャーが不在だったり、管理システムが充実してなかったりする店舗では、派遣薬剤師であっても管理業務を任されることがあるでしょう。

 

 

2-3. 病院での派遣勤務

病院に派遣される場合、雇用条件が薬局やドラッグストアとは異なります。というのも労働者派遣法の第4条「労働者派遣事業を行ってはいけない業務」にあたり、一般的な派遣として病院で働くことができないからです。
 

例外として、将来的な直接雇用を前提とする「紹介予定派遣」や「産前産後休業、育児休業、介護休業などによる代替」の場合には、病院での勤務が可能です。こうした条件下にあることから、派遣といえども正社員の代わりといった色合いが強く、正社員とほぼ同じ仕事内容を担当することになるでしょう。ただし、調剤と病棟業務のどちらが多いかと考えると、調剤の業務を担当するほうが多い傾向にあり、外来がある病院では外来患者さんへの服薬指導も派遣が担う重要な仕事です。

 

一方、正社員の代わりといっても契約が短期間になる可能性がある場合には、院内感染チームなど他職種と連携して行う業務を担当するケースは現状少ないようです。

 

入院設備のある病院では夜勤がありますが、基本的に正社員のみで、派遣薬剤師はありません。夜勤の依頼を受けることはあるかもしれませんが、基本的に断っても問題ないでしょう。ただし、紹介予定派遣として直接雇用を予定している場合は、就職後のことを想定して引き受けてみるのもおすすめです。実状がわかるので、経験してみてもよいかもしれません。

 

 

3. 派遣薬剤師のやりがい

続いて、派遣で働く場合のやりがいについて見ていきましょう。

 

3-1. スキルアップができる

派遣では短期間でいろんな形態の職場を経験できるため、大きなスキルアップのチャンスを得られるでしょう。さまざまな疾患領域での薬剤管理やOTC専門知識、販売や在宅、抗がん剤の取り扱いなど、多くの専門スキルを身につけることが可能です。

 

加えて、各職場の良いところを学べるのも魅力です。患者さんに対するサービスやマーケティング、業務効率化のシステムや機器など、実用的な取り組みを目の当たりにできるでしょう。短期間でスキルを向上させたいと考えている人や、独立開業を目指す人は貴重な経験ができるはずです。

 

3-2. 短時間で効率的に稼げる

派遣薬剤師として働くメリットのひとつに、時給が高い点が挙げられます。特に薬剤師の採用が難しい地方の求人のなかには、おどろくような高額時給が設定されているケースもあります。また、交通費や宿泊先が準備されている求人もあり、自己負担なく短期間で稼げることにやりがいを感じる人もいるでしょう。

3-3. 人間関係にしばられることが少ない

職場の雰囲気や人間関係によって、モチベーションが左右されることもあるでしょう。派遣先の職場環境は派遣会社が調査しているので、基本的に大きな問題がある職場に派遣されることはあまりないようです。とはいえ、ときには雰囲気が悪い職場に派遣されることもあるかもしれません。そうした場合でも期間が決まっていれば我慢できることも多いでしょうし、どうしても我慢できない場合は派遣会社に伝えて勤務先を変えてもらうこともできるでしょう。人間関係にしばられず仕事に集中できるので、薬剤師の仕事にやりがいを感じるのではないでしょうか。

 

4. 派遣薬剤師のデメリット

やりがいも多い派遣薬剤師ですが、派遣という勤務形態ゆえのデメリットもあります。

 

4-1. 管理職につきたい人には向かない

同じ企業内で継続的に働くわけではないため、勤務先で役職につくといったキャリアアップは見込めません。派遣薬剤師のキャリアアップといえば、個人として能力を高めることが主になるでしょう。管理薬剤師としてマネジメントをしたい、将来管理職について営業や教育、採用に関わりたいといったキャリアプランをもっている人には向きません。

 

4-2. 長期間同じ職場で働きたい人には向いていない

同じ職場で働いていると、職場で友人関係を築くこともできます。また、患者さんと長期に渡ってお付き合いすることもあり、生活に寄り添った仕事には薬剤師としてやりがいを感じます。一方、派遣薬剤師は、契約期間が限定されており、短期で終了する場合も少なくありません。長く働き続けたいと思っていても、契約満了とともに職場を離れなくてはいけませんから、居心地の良い職場で長期にわたって働きたい人は派遣の働き方が合わないかもしれません。

 

4-3. 職場のルールにしばられてストレスを感じる

派遣薬剤師は、勤務先が代わるたびに、職場ごとに異なるルールを把握する必要があります。調剤の賦形基準や後発医薬品への変更基準、疑義照会の基準など、以前の勤務先と新しい勤務先で違うこともあるでしょう。

 

効率の良い方法を知っていたとしても、派遣薬剤師の立場からは提案しづらいものです。非効率的な業務方法にイライラしたり、非合理なルールにストレスを感じたりすることは多かれ少なかれあるかもしれません。

 

5. 派遣薬剤師の時給

調剤薬局や調剤併設型ドラッグストアに対する派遣薬剤師の募集は比較的多い傾向にあります。目安として時給2,000円以上から、地方で薬剤師の採用が困難な地域では時給4,000円以上という高額時給も見られます。過疎地域や繁忙店舗、一人薬剤師など、薬剤師が集まりにくいような条件の求人を選ぶと、高時給になる傾向があります。

一方で、OTC単独のドラッグストア、病院薬剤師の派遣募集はあまり多くありません。それでも、地域や期間に制約があるものの、時給は2,000円~4,000円の募集が見られます。

 

また、扶養控除適用の範囲内で働きたいといった希望がある場合、週2~3回の短時間勤務を選ぶことで、年収の調整が可能です。

 

 

6. 派遣薬剤師のキャリアプラン

派遣薬剤師としてどの派遣先でも安定してスキルを発揮できるようになれば、仕事探しに苦労することはないでしょう。派遣先が気に入り、派遣先からの要望があれば、派遣会社に相談してそのまま就職することも可能です。

 

また、派遣薬剤師として、さまざまな職場を経験し、そこで得られた知見をたくわえ、最終的に調剤チェーンの管理部門に就職することも考えられます。経験を独立開業に活かすといったキャリアも選択肢のひとつです。

 

派遣薬剤師として働いている人には、他の仕事や自分のやりたいことと両立したい人も多くいます。運営資金や生活資金を確保するために派遣薬剤師をしながら、カフェや飲食店、IT会社の経営を行うなど、自分の夢をかなえる道もあるでしょう。

 

派遣薬剤師は、短時間勤務から長時間勤務まで幅広い勤務形態が選択できる働き方といえます。勤務地も日本全国にあり、自宅から近い勤務先で働く方法もあれば、地方の生活を楽しむように遠方の職場を選ぶのもよいでしょう。派遣薬剤師としての働き方は、自分のライフプランを見つめ直したときに、ひとつの魅力的な選択肢になるのではないでしょうか。


執筆/加藤鉄也

薬剤師。研修認定薬剤師。JPALSレベル6。2児の父。
大学院卒業後、製薬会社の海外臨床開発業務に従事。その後、調剤薬局薬剤師として働き、現在は株式会社オーエスで薬剤師として勤務。小児、循環器、糖尿病、がんなどの幅広い領域の薬物治療に携わる。医療や薬など薬剤師として気になるトピックについて記事を執筆。趣味は子育てとペットのポメラニアン、ハムスターと遊ぶこと。

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