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20代薬剤師の転職成功・失敗例~必要なスキル・経験と平均年収は? 文:松岡マイ(薬剤師ライター、研修認定薬剤師)

柔軟性や学習意欲の高さが転職で評価されやすい

薬剤師資格を取得して間もない20代の薬剤師であっても、今働いている環境が合わないと感じれば転職を考えることもあるでしょう。しかし、初めての転職に戸惑い、どうすればよいかわからない方も多いのではないでしょうか。
今回は、経験が浅い20代薬剤師だからこそ考えたい転職を成功させるポイントについて、20代で2度転職した筆者の経験を元にお伝えします。

1. 20代薬剤師の転職理由

20代の薬剤師といえば、薬剤師としての勤務も数年目を迎え、仕事もプライベートも一段落する頃です。自分の将来を考えたときに、「転職」の文字が頭をよぎることもあるのではないでしょうか。20代薬剤師が転職を考えるとき、どんな理由があるのか具体的にみてみましょう。

① 職場の人間関係

薬剤師の多くは、毎日同じ人と長時間顔をあわせて仕事をしています。例えば、調剤薬局勤務では、少人数で業務をこなしているケースがほとんどで、上司や先輩が絶対の存在となりがちです。そうした狭い人間関係は、ときに息苦しさを感じたり、つらくなったりすることがあります。日々、精神的な消耗を感じていると、せっかくの学びの機会を生かしきれず、モチベーションも低下するでしょう。このような背景から新しい職場で学びたいと考える若手薬剤師も多いかもしれません。

 

② 仕事にやりがいが感じられない

仕事を継続するうえで、大きな糧となるのは「やりがい」です。給料や福利厚生などの労働条件とは異なり、学びがあるか、働きやすい人間関係を構築できるかなどの「自分にとってやりがいがある職場かどうか」は、結局働いてみないとわからないのではないでしょうか。例えば、薬局薬剤師として患者さん一人ひとりと向き合いたいのに、処方枚数が多くて時間が確保できなかったり、事務作業がほとんどで薬剤師ならではの仕事が少なかったりして、理想と違う働き方になっていることもあるでしょう。自分にとってやりがいを感じられる職場を探したい気持ちも転職を決意する理由の1つとなります。

 

③ 年収が上がらない

就職後数年の勤務を経て、結婚を考える人も多いでしょう。家庭を持つことで、年収を上げたいと思うのは当然かもしれません。職場によっては、ハードな仕事内容に見合った給料を得られていないと感じて、転職を考えることもあるでしょう。

2. 20代薬剤師が転職市場で求められるスキル・経験

20代で転職を考えたとしても、スキル不足や経験が浅いことが不安材料になりがちです。その一方で、20代薬剤師は将来性があることから転職市場でも期待される存在といえます。ここでは転職を考える20代薬剤師が最低限意識したいスキルや経験、また実績があると優遇されるポイントをまとめました。

2-1. 20代薬剤師に最低限必要なスキル・経験

まずは、20代の薬剤師に最低限求められる3つのポイントについてみてみましょう。

 

・コミュニケーションスキル

・多科目で働いた経験

・研修認定薬剤師の登録

 

・コミュニケーションスキル
どんな転職先であっても、新しい職場や患者さんと円滑に信頼関係を築ける力が必要です。そのため、基本的な「コミュニケーションスキル」は重要視されます。20代薬剤師はまだまだキャリアを積み始めた段階なので、積極性や柔軟性をアピールしたいものです。

 

・多科目で働いた経験
転職時のアピールポイントとして注目されるのが、対応できる診療科の数です。複数の科目で働いた経験があると受け入れてもらえる幅がぐんと広がります。さらに職場でも重宝される存在となり、給料アップにつながったり、待遇が良くなったりする可能性もあります。転職前に複数の科目に対応する門前薬局を経験しておくと有利でしょう。

 

・研修認定薬剤師の登録
研修認定薬剤師の登録が済んでいると、「学ぶ意欲がある」「かかりつけ薬剤師になれる」など積極性と可能性をアピールできます。研修認定薬剤師の登録をするには費用がかかりますが、勤務先で負担してもらえる場合もあるので、新卒1~2年目のうちに取得しておくのがベターです。ただし、転職直前に勤務先の費用で取得すると、現在の職場に悪印象を与えることになりかねず、退職がしづらくなる可能性もあります。そうした場合には自費で登録するなど、タイミングや時期を考えて行動しましょう。

2-2. 20代薬剤師が優遇されるスキル・経験

上記では「最低限」必要なスキルについてお伝えしましたが、ここではさらに踏み込んで「もっているとより優遇されるスキルや経験」について紹介します。いずれも20代薬剤師が取得可能なスキルや経験です。自分に合ったスキルや経験を増やすことで、より良い転職先探しにつながります。

・総合科目のある病院や門前薬局で働いた経験

・認定薬剤師の資格

・管理薬剤師の経験

 

・総合科目のある病院や門前薬局で働いた経験
総合科目で働いた経験があると、知識や経験が豊富であるとみなされ、病院でも薬局でも重宝されます。筆者自身、2年目で転職をした際、総合科目門前の薬局で働いた経験を評価され、高時給で採用されることになりました。異動願いを出す機会があるなら、転職前に総合科目の門前薬局へ異動をして経験を積むのがおすすめです。

 

・認定薬剤師の資格
認定薬剤師の資格を持っていると、自分の強みを生かした職場で働ける可能性が高まります。20代薬剤師だと実績年数が限られるため、資格取得が難しいケースもありますが、可能な範囲で取り組んでみましょう。資格取得には費用がかかりますが、勤務先の負担で取得できる制度がある場合もあるので、確認しておきましょう。比較的、実務経験が短くても取れる認定資格の中から一部をご紹介します。

 

■実務経験が短くても取得できるおすすめ認定資格

資格名 取得条件 費用
プライマリ・ケア認定薬剤師 ・最初の申請は4年以内に50単位以上
・プライマリ・ケア認定薬剤師研修など指定の研修を受講
認定審査料が非会員1万5千円、会員1万円など
漢方・生薬認定薬剤師 「座学研修」「インターネット研修」「ビデオ集合研修」のいずれから選択して講義を受ける 認定手数料:約2万円、講義受講料6万500円など
在宅療養支援認定薬剤師 ・実務経験3年以上
・在宅業務実践の5事例を報告
・バイタルサイン講習会を受講
・日本在宅薬学会主催の学術大会に参加
・薬剤師認定制度認証機構により認証された生涯研修認定制度による認定薬剤師、日本病院薬剤師会生涯研修認定薬剤師、または日本医療薬学会認定薬剤師であること
・所定の研修講座受講により35単位以上の研修単位を取得していること
認定審査料:1万円など

 

・管理薬剤師の経験
店舗数が多い薬局や人手が足りない薬局では、3年目頃から管理薬剤師として活動する若手薬剤師も多く存在しています。若くして管理薬剤師の経験があると、スキル面だけでなく、薬局全体の管理を信頼して任せられるという安心感を与えることができます。給料面にも良い影響を与え、「管理薬剤師経験者限定」の求人にも応募できるため、選択肢をより広げることができるでしょう。

3. 20代薬剤師の転職成功例・ポイント

では実際に、20代薬剤師の転職成功例をみてみましょう。筆者自身、20代で2度の転職に成功しています。その経験から、気をつけるべき3つのポイントをまとめました。

3-1. 転職の理由を明確にし、優先順位をつける

「自分が希望する条件が全てそろう」といった理想の職場をみつけることは難しいものです。しかし、「今、なぜ転職したいのか?」を深堀りし、条件に優先順位をつけることができれば、選択肢となる転職先を絞り込めます。結果として、転職後のミスマッチを防ぎ、働きやすい環境を得られるでしょう。例えば給料、勤務時間、通勤時間など、自分のなかで優先すべきポイントを洗い出し、最も重視する条件を明確にしておきましょう。

 

3-2. 若さを武器に学習意欲をアピール

「将来性」があるという点で20代薬剤師ならではのアピールポイントといえます。スキルや経験が浅い反面、それだけ柔軟で意欲をもった働き方ができる存在です。面接などでは熱意をしっかり伝えましょう。

 

3-3. 新しい職場で貢献できるメリットを伝える

門前薬局での知識や認定薬剤師の資格など、これまでの経験やスキルや積極的に伝えることが大切です。即戦力になれる存在であることをアピールするとよいでしょう。また、ドラッグストアなど長時間勤務となる転職先であれば、転職先の希望に自分がどう貢献できるかを明確にし、採用するメリットを伝えましょう。

4. 20代薬剤師の転職失敗例・注意すべきポイント

一方で、転職に失敗し後悔してしまう20代薬剤師には特徴があります。3つの主な特徴について、具体例とともにみていきましょう。

4-1. 転職の理由がはっきりしていない

採用面接の際に転職の理由をはっきり伝えられないと、面接官は「仕事を長く続けられない人なのではないか」という不安を感じ、不採用になる可能性があります。現実的で具体的な理由を洗い出しておきましょう。

 

4-2. 情報収集不足

「なんとなく良さそうだから」、「大学の先輩が働いているから」など漠然とした理由で転職先を決めてしまい、後から「想像していた仕事内容と違った」「こんなに休日出勤が多いとは思わなかった」などと自分の理想とのミスマッチに後悔するケースもあります。人間関係など、実際に働いてみなければわからないことはありますが、仕事内容や勤務条件など事前に確認できる要素もあります。転職先を決めるのは自分自身なので、情報収集は怠らないようにしましょう。

 

4-3. 転職エージェントを通していない

上述した「情報収集不足」にもつながりますが、転職先の細かい情報を個人で入手するには限界があります。その点、転職エージェントを利用すれば、希望する転職先の口コミをみることができるほか、気になる点をその都度相談できます。個別のサポートを受ければ、安心して転職活動を進められるでしょう。有利に転職していくためにも、転職エージェントの活用はおすすめです。

5. 20代薬剤師の平均年収はいくら?

転職理由の1つにもなっている「収入」。20代薬剤師の平均年収を参考に、自身が目指す年収額を考えてみましょう。

5-1. 薬剤師は他職種と比べて高年収?

現役薬剤師500人に聞いたマイナビ薬剤師の調査によると、20代薬剤師の平均年収は、男性平均477万円、女性平均438万円です。他職種を含む、20代の平均年収(国税庁「民間給与実態統計調査」平成30年度)と比較すると、100万円以上高くなる傾向があります。

 

職業 男性 女性
20代薬剤師 約477万円 約438万円
20代社会人の平均年収(平成30年度) 約344万円 約287.5万円

 

薬剤師であっても男女間で年間40万円ほどの差があります。とはいえ、全体の平均と比べると高収入が望める仕事といえるでしょう。

5-2. 年収を上げるには?

他の職種と比べると平均年収は高いものの、地域や労働環境によって年収は異なります。では、薬剤師の資格を生かしつつ、さらに年収を上げるための方法を考えてみましょう。20代薬剤師が年収を上げる具体的な方法は、以下の4つです。

 

・資格を取得する

転職に有利な資格の取得は、年収アップにもつながります。

・役職手当をもらう

管理職への従事によって手当による年収アップが期待できます。

・人手不足の地域へ転勤する

特に人手不足になりがちな地域では高時給の求人が増えるため、就職エリアを変更するのもひとつの手です。僻地の勤務により手当が支給される場合もあります。

・働く業種を変える

一般的には、病院薬剤師よりもドラッグストアや製薬会社に就職した方が高い年収が期待できる傾向があります。

 

6. 20代薬剤師の転職を成功させよう!

20代薬剤師は、まだまだ成長段階でありスキルアップの可能性を持っています。採用側からみても、若手薬剤師は「柔軟で学習意欲がある」「対応が早い」などの点で貴重な存在であり、これらは年長者と比べて評価がされやすいポイントです。

 

また、未経験の職場に飛び込むチャンスもあります。特に公務員薬剤師を目指す場合には、年齢制限が設けられているため早い選択がよいでしょう。キャリアアップや学ぶ意欲を持った前向きな転職は、採用先からも良い印象を持ってもらえます。転職エージェントを活用すれば、自身に合った転職先の情報を得やすく、より理想の条件に近い職場も探せます。しっかりと情報を集めて、20代薬剤師の転職を悔いなく成功させましょう!


執筆/松岡マイ

薬剤師。研修認定薬剤師。京都薬科大学卒業。地元のドラッグストア就職後、ストレス性の顔面神経麻痺となる。その後、自身の働き方について考え直し、派遣薬剤師兼ライターとして、沖縄や北海道の調剤薬局・ドラッグストアなど全国各地で働く。内科、整形、耳鼻咽喉科、総合病院の門前薬局などで働いた経験や、自身の働き方・転職について記事を執筆。趣味は旅行で、トラベルライターとしても活動。

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