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薬剤師の年代別の転職理由とは? 退職時の伝え方もあわせて解説 文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

20代・30代・40代・50代薬剤師のよくある転職理由と具体的な伝え方

薬剤師が転職活動を進めるにあたり、退職時や面接時において「転職理由」を聞かれる機会が必ずあります。転職理由が「スキルを磨きたい」「キャリアアップを目指す」といったポジティブなものであれば、ある程度、率直な伝え方をしても悪い印象は与えにくいものです。しかし、転職に至った経緯がネガティブな理由である場合、勤務先はもちろん、転職先にどう伝えればよいのか悩む方もいるのではないでしょうか。今回は、薬剤師に多く見られる転職理由を年代ごとにまとめるとともに、転職理由の上手な伝え方についてお伝えします。

1. 薬剤師の転職理由は?

薬剤師が転職を考える理由はさまざまです。ここでは、よくある転職理由を年代別に紹介します

 

1-1. 20代薬剤師の転職理由

20代では、新卒からの就職で慣れない職場や人間関係に悩んだり、思った環境とは違うと感じたりして転職を考えるケースが見られます。

 

・気の合わない先輩や同僚……人間関係がうまくいかない

学生時代は気の合う仲間とだけ仲良くすればよかったかもしれませんが、社会人ともなればさまざまな価値観を持った人と一緒に仕事をすることになります。なかには、どうしても気の合わない先輩や同僚がいる場合もあるでしょう。ただでさえ慣れない業務に戸惑っているのに、狭い薬局のなかで人間関係に悩んでしまうと、大きなストレスを感じてしまいます。

 

・スキルアップが望めない

社会人としてある程度の経験を積むと、「いろいろな知識を付けたい」「新しい仕事に挑戦したい」といった目標を持つこともあるのではないでしょうか。しかし、職場によってはスキルアップできるような環境になかったり、学べる機会が少なかったりすることがあります。20代のうちに幅広い経験や知識をつけたいという思いから、転職を考える人もいるようです。

 

・年収だけで職場を決めてしまい、やりがいを感じられない

奨学金の返済があるといった理由から、年収を基準に就職先を決める人もいます。しかし、仕事内容に対する自分の適性などを考えずに就職した場合、やりがいを感じられなかったり、肉体的にも疲労を感じやすかったりするものです。結果として、自分のやりがいを得られるような職場への転職を考える人もいます。

 

1-2. 30代薬剤師の転職理由

30代ともなれば、それなりに現場の経験も得て、次のステップアップを考える時期です。そのため、キャリアプランを考えた転職理由が多く見られます。

 

・労働環境が悪い

身につけたスキルを武器に、もっと労働条件のよい職場で働きたいと考えて、転職に至るケースが見られる30代。「時間外労働が長い」、「通勤時間が長い」、「福利厚生に不満がある」といった理由から、より良い労働環境で働くために転職を考える人がいます。

 

・キャリアパスを考えてさらにスキルを磨きたい

経験を積んできた30代の薬剤師は、これからのキャリアパスを考えるものです。「いずれは薬局長やエリアマネージャーなどの役職につきたい」、「資格を取得したい」といった理由から、将来のキャリアパスを見据えて転職を考える人がいます。

 

・結婚や子育てなどを理由に転職

30代は、結婚や子育てといった変化が起こりやすく、ライフスタイルに合わせた働き方を考える時期ともいえます。特に女性薬剤師は、夫の転勤に合わせて転居することになったり、出産をきっかけに労働時間を短くしたりと、さまざまな理由から転職に至るケースがあります。

 

1-3. 40代薬剤師のよくある転職理由

40代薬剤師は、役職への期待や体力の低下などの理由から、働き方の見直しを考えるケースが多くみられます。

 

・現職でのキャリアアップやスキルアップに限界を感じる

40代ともなれば、後輩の指導などを担当することもあり、自身のスキルアップのための勉強時間がとりにくくなることがあります。また、管理薬剤師や薬局長といった役職を希望しても、なかなか空きが出ないことも。こうした現状への不満から、転職につながるケースが見られます。

 

・体力の限界を感じる

40代になると体力の低下を感じ、肉体的なストレスが大きくなる人もいます。長時間の立ち仕事や当直、ドラッグストア特有の力仕事など、年齢を重ねるごとに体力への不安も大きくなりがちです。「もう少し肉体的な負担の少ない仕事につきたい」という転職理由も多くみられます。

 

1-4. 50代薬剤師のよくある転職理由

ベテランともいえる50代薬剤師。その転職理由には、家庭環境の変化や定年後の働き方が関係していることも多いです。

 

・定年後も働き続けたい

「定年後の収入が年金だけでは不安」「定年退職後の働き方を考えたい」といった理由から、早い段階で転職を考えるケースもよくみられます。早期退職して転職に踏み切れば、その分、新しい職場に慣れる期間も長くなり、定着しやすいものです。50代は、薬剤師が定年後の働き方を見直す、最後のタイミングといえるかもしれません。

 

・子育てや介護といった家庭環境が落ち着いて本格的に働きたい

20代~40代の女性薬剤師は、「子育てに集中したい」といった理由で一旦退職したり、パート勤務に切り替えたりする人も少なくありません。しかし、50代ともなれば子育ても落ち着き、改めて本格的に仕事に復帰したいと考える人もいます。子育て中と比べて通勤や勤務の時間に余裕ができ、勤務先の選択肢も広がるため、スキルを活かしながら本格的に働ける職場を探して、転職活動を始める人もいます。

2. 退職時の転職理由の伝え方

いざ転職を決めたものの、現在の職場に対して、「退職すること」をどのように切り出せばよいのか悩む方もいらっしゃることでしょう。特に、ネガティブな印象を与えかねない転職理由の場合、なかなか切り出せないこともあります。ここでは、ネガティブな退職理由の場合の上手な「伝え方」のポイントをお伝えします。

 

2-1. 本音と建前を分ける

転職を考えるきっかけは、現職への不満からくることも多いでしょう。とはいえ、不満をそのまま伝えるのは得策ではありません。退職理由を伝える際は、本音と建前を分けるのがポイント。上手な言い換え方を考えながら、まとめてみましょう。具体例を紹介します。

 

<ネガティブな退職理由の言い替え例>

 

【本音】年収が低い
  ↓
【建前】他の職場で新しい経験を積みキャリアアップしたい
 
【本音】子育てに理解がない
  ↓
【建前】子供の習いごとに合わせて土日休みが選べる職場や、シフト制で定時に帰宅できる職場に転職したい
 
【本音】今の職場ではスキルアップできない
  ↓
【建前】在宅スキルを身につけたい、専門科の門前で働きたいなど、具体的な目的や目標を伝える
 
【本音】残業や休日出勤が多い
  ↓
【建前】勉強会などに参加したいので、業務後や休日に予定の立てやすい職場に転職したい
 
【本音】企業の規模が小さく、キャリアアップが望めない
  ↓
【建前】将来、大きな企業で管理職としてマネジメントに携わりたい

 

本音を建前に言い換えることで、不快感を与えずに退職理由が伝えやすくなるのではないでしょうか。ただし、人間関係が原因である場合は、言い換えるのが難しいケースもあり、むしろ現在の職場で正直に相談したほうが良い結果につながることもあります

 

「人間関係」は転職理由の筆頭に挙がる問題ではありますが、その点だけに着目して転職すると「今回の職場も人間関係が悪かった」と、居心地の良い職場を求めて転職を繰り返す可能性があります。人間関係が主な原因となる場合には、「スキルアップ」「働き方の見直し」といった別の視点をもって転職理由を考えてみましょう。

2-2. 最終手段は「家庭の事情」

あの手この手で転職理由を考えても、結局揉めてしまったり、引き止めにあったりするケースがあるのも事実です。そうした場合にも、できるだけ穏便に退職するには「家庭の事情」で通してしまうこともひとつの方法でしょう。結婚や出産、家族の転居、子育て環境、介護、実家の手伝いなど、その時に見合う家庭の事情を提示すれば、職場にも納得してもらいやすくなります。

ただし、安易な嘘はつかないように注意しましょう。というのも、「嘘が発覚した時にトラブルになる」「SNSなどを通して嘘であることが広まってしまう可能性がある」「嘘をついたという事実が転職先にも伝わってしまう」といった恐れがあるからです。転職理由として家庭の事情を持ち出す目的は、あくまでも円満退職を目指すため。跡を濁さずに退職するためにも、トラブルに発展しないような転職理由をまとめましょう。

3. 面接・履歴書での転職理由の伝え方【具体例付き】

転職活動では、応募時の書類や面接において転職理由を聞かれることがあります。元の職場とは円満退職できたとしても、転職先に過去の職場の不満を伝えてしまうと、印象が悪くなってしまうかもしれません。転職理由は、伝え方がカギ。ここでは、ネガティブな転職理由をポジティブな印象に変える方法を紹介します。

 

3-1. 発想の転換で転職理由を変える

たとえば、「現職の将来性に不安を感じて転職を考えた」としても、応募先の企業にその内情を伝える必要はありません。発想を転換して、「応募先の企業経営方針や経営状況などを魅力に感じた」という視点で転職理由をまとめてみてはいかがでしょうか。安定した企業で腰を据えて仕事に専念したい気持ちが伝われば、採用後も長く働いてもらえる、という印象を人事担当者に与えられます。

 

ほかにも、子育てに理解のないことが理由で転職を考えている場合には、応募先の「育休取得率、育休後復帰率、女性支援などに力を入れている点」を転職理由としてまとめるのも良いでしょう。子育てと仕事の両立を考えていることや、実際に両立している女性社員が多いことなどを転職理由に付け加えることで、就職したいという気持ちが伝わりやすくなります。不満からの転職理由を考えるのではなく、応募先の企業に感じる魅力をまとめることで、面接時にも好印象を持ってもらえるでしょう。

 

3-2. 転職理由はポジティブに向上心を盛り込んで伝える

ネガティブな転職理由も、ポジティブに変換することで前向きな印象に。さらに将来のビジョンを盛り込んで伝えることが面接を成功させるポイントです。具体例をまとめました。

 

例1

「偏った診療科の知識しか得られない」
   ↓
「幅広い診療科を経験し、スキルアップしたい」

 

偏った診療科の知識しか得られないという転職理由の場合、総合病院の門前や店舗数の多い企業など、幅広い専門科に対応している薬局が転職先の候補になるのではないでしょうか。面接時には、現在の職場に対する不満を伝えるのではなく、幅広い診療科の経験ができる点や、異動する度にさまざまな処方と接する機会ができるといった視点で、幅広い知識をつけるための前向きな転職であることをアピールしてみましょう。

 

例2

「残業が多く自分の時間がとれない」
   ↓
「プライベートの時間を確保することで体調管理を万全にし、勉強の時間を確保したい」

 

残業時間が多いことが不満で転職を考える場合、平均残業時間が少なかったり、シフト制で時間管理が行われていたりする転職先を探すことが多いでしょう。

 

そうした転職先での面接時には、具体的に「残業時間の短い職場に転職したい」という希望を伝えるだけでなく、「プライベートの時間で何をしたいのか」まで伝えてみてはいかがでしょうか。将来を見据えた前向きな転職理由に転換し、例えば、「リフレッシュすることで、コンディションを整えて仕事に臨める」、「認定資格の取得に励む」など、具体的なプランを伝えることで仕事に対する姿勢をアピールできます。

 

例3

「スキルアップができる環境ではない」
   ↓
「スキルアップに力を入れている職場で、薬剤師としてレベルアップを目指したい」

 

現在の職場ではスキルアップができないと感じているなら、社内勉強会や社外勉強会への参加支援を行っている企業などに魅力を感じ、転職先の候補として考えるのではないでしょうか。

 

この場合、「スキルアップに関して企業が力を入れていることに魅力を感じている」「薬剤師としてレベルアップしたい」といった前向きな姿勢を伝えてみましょう。さらに認定薬剤師や専門薬剤師の資格取得などを目指している場合には、具体的なキャリアプランを伝えると、転職への前向きな姿勢を伝えやすくなります。

 

例4

「給料が少ないのが不満」
   ↓
「資格や実績を会社に認められていると実感しながら働きたい」
「成果が評価される環境で、キャリアアップの意向とやりがいをもって働きたい」

 

年収への不満で転職する場合には、基本給やボーナスが高い職場や、手当がつく職場を転職先の候補に挙げるのではないでしょうか。

 
「忙しさの割に給料が安い」「能力が評価されない」など、年収アップを求める理由はさまざまでしょう。しかし、事実であっても、こうした不満を転職先の面接で伝えてしまうとネガティブな印象を与えます。年収アップを求める理由として、「家族を養うため」、「親に仕送りをするため」といった具体的な内容を伝えると同時に、転職先の評価システムに魅力を感じている点をアピールしてみてはいかがでしょうか。
 

例えば、在宅件数などの実績や認定薬剤師などの資格によって手当がつくといった条件を提示している企業であれば、そこに注目し、手当てがもらえるよう努力を惜しまないという姿勢を伝えます。実績作りや資格取得に向けた前向きな取り組みは、自身の評価につながるだけでなく、企業にとってもプラスに働きます。お互いにとってメリットがある点を訴えてみましょう。

4. ポジティブな転職理由で、前向きな転職を

円満退職するためには、退職理由を上手に伝えることがポイント。また、転職先に伝える転職理由も、職場の不満といったネガティブな理由からポジティブなものに変換することで、好印象を与えられます。転職は新しい環境へ向かう第一歩。せっかくならポジティブで前向きな転職活動をしたいものです。転職先の条件ばかりを考えるのではなく、自分がやりたいことや将来像にも目を向けて、それを達成するために必要な環境がそろっている職場を探してみてはいかがでしょうか。


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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