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40代薬剤師が理想の転職をするために必要なスキルと経験とは? 文:松岡マイ(薬剤師ライター、研修認定薬剤師)

実務経験やマネジメント力が期待される、頼りにされる年代

薬剤師としての経験を重ねてきた40代での転職は、20代や30代と比べて「失敗したくない」という気持ちが大きくなるかもしれません。年齢的に本当に転職を成功させられるのか、不安で一歩を踏み出せない人もいるのではないでしょうか。今回は40代薬剤師が転職を希望する理由や転職成功例、転職時にあると有利になるスキルや経験について紹介します。

1. 40代薬剤師の転職理由

40代ともなると、20代、30代の頃と比べ、働くうえで体力面での不安を感じたり、親の介護といった生活の変化があったりして、やむをえず転職を考えるケースがあるでしょう。40代薬剤師が転職を考える理由について、筆者が周囲の薬剤師から聞いた経験談をもとに、主な傾向をまとめました。

 

1. 年収が低い

同じ薬剤師でも、調剤薬局・病院・製薬会社などの職場や勤務地によって年収が異なります。役職についている薬剤師もいれば、思うようにつけない薬剤師もいるでしょう。役職につけるタイミングは会社や勤務先の状況によって違うため、年収や立場が思うように上がらないと不満に感じる人もいるでしょう。また、子どもの受験や介護費用、家のローンなど生活の変化にともなう影響で、「より年収が高い職場への転職を考えた」という声が、周囲でも多く聞かれました。

 

2. 体力的に負担が大きい

夜勤のある病院や深夜勤務が必要となるドラッグストアは、体力的に負担が大きい職場といえます。若い頃と比べて、体力的に辛くなってきている40代薬剤師も多いのではないでしょうか。自身の体力に見合った勤務体系で健康的に働くために、転職したいと考えることもあるでしょう。

 

3. 家庭の事情

親の介護やパートナーの転勤などが原因で、転職を考えるケースもあります。私の周囲の薬剤師でも、プライベートでの生活が変化したために、これまで経験がなかった調剤薬局やドラッグストアに転職したケースがありました。

2. 40代薬剤師が転職市場で求められるスキル・経験

40代で転職する場合、即戦力を期待される傾向にあります。また20代、30代での転職と比べて、不安に感じることも増えるでしょう。40代での転職ではどのようなスキルや経験が必要となるのか、「最低限」必要なスキル・経験と持っていると有利なスキル・経験に分けて紹介します。

 

1. 40代薬剤師に「最低限」必要なスキル・経験

まずは、40代薬剤師の転職を成功させるために、最低限持っておくべきスキル・経験について確認してみましょう。

 

・調剤スキル

求人数が多い調剤薬局やドラッグストアでは、基本的な調剤スキルが求められます。とはいえ、調剤の経験がなくても、転職は可能です。筆者の知人のAさん(40代前半)は、研究職からドラッグストアへの転職を成功されました。Aさんいわく「調剤ではピッキングだけでなく分包や計量など覚えることがたくさんあります。最初の研修期間で丁寧に教えてもらえたのでしっかり学べました」とのこと。調剤を行う現場経験がない場合には、「調剤未経験の方は研修期間有り」などの職場を選び、真摯な気持ちで研修を受けることが大切です。

 

・電子薬歴への対応

近年、病院・調剤薬局・ドラッグストアでは、電子薬歴の導入が進んでいます。転職するうえで電子薬歴を使いこなせない場合は、大きな痛手となってしまう可能性があります。実際、筆者の職場では紙薬歴から電子薬歴に変更になったとき、年齢の高い薬剤師ほど電子への変更を拒んだり苦戦したりするケースが多いように感じられました。経験がなくて不安な場合には、転職時にその旨をしっかり伝え、研修期間を設けている職場へ転職することをおすすめします。

 

・謙虚な姿勢やコミュニケーションスキル

40代で転職する場合、転職先の同僚だけでなく、管理薬剤師やエリアマネージャーも年下である可能性があります。必然的に年下の上司に業務内容を教わったり、指導を受けたりすることになるでしょう。転職後に年下の上司と接する際にも、謙虚に学ぶ姿勢やコミュニケーションをうまく取るスキルが重要です。

2. 40代薬剤師が優遇されるスキル・経験

上記では、40代薬剤師が転職する際に「最低限」必要なスキルについてお伝えしました。ここではさらに踏み込んで、「持っていると優遇されるスキルや経験」について紹介します。

 

・前職での勤続年数の長さ

前職で長期間働いていたという実績は採用時に安心感を与えます。短期間で何度も転職を繰り返した経験があると、転職先に「またすぐに辞めてしまうのではないか」という印象を与えかねません。特に未経験分野の場合は、業務内容に慣れるまでにある程度の時間がかかることが想定されます。長く働ける人材を求めている転職先としては、勤続年数の長さをチェックするでしょう。

 

・マネジメント能力

40代の転職となると、その経験値から店長や管理薬剤師、エリアマネージャーとしてマネジメント能力を期待される場合も多くなります。薬剤師としての日々の業務だけでなく、部下に対するマネジメント能力があると、転職のしやすさや年収アップにつながります。薬局長や管理薬剤師、エリアマネージャーなどの経験があると、転職の際にアピールポイントにできるでしょう。

 

・臨床現場での実務経験

40代薬剤師の転職は、その年齢から考えても即戦力として期待される可能性が高くなります。実務経験として病院での臨床現場はもちろん、在宅やかかりつけ薬剤師として働いた経験は、転職の際にも有利なポイントといえます。

3. 40代薬剤師の転職成功例とポイント

では実際に、40代薬剤師が転職に成功した例をもとに、意識したいポイントをお伝えします。ポイントを絞ってチェックしながら、転職を成功に導きましょう。

 

1. 転職目的の優先順位をつける

40代での転職後、長く働き続けるためにも転職先に対する条件の優先順位を明確にしておくことが大切です。「なぜ転職を希望するのか」「勤務時間の短縮を優先したいのか、それとも年収アップを優先したいのか」など、転職の目的を洗い出してみましょう。

 

労働時間の短縮を目的に、フルタイムからパート勤務への転職を行ったBさんの場合、年収は減りましたが、「家族のお弁当を作る余裕ができ、送り迎えや介護など家族との時間を増やすことができた」と満足していました。このように、自分が優先したいポイントを把握し、目的をかなえられる働き方を選ぶことが大切です。同時に、優先したい項目を転職先にもしっかり伝えておくとよいでしょう。

 

2. ワークライフバランスを重視する

40代薬剤師は、年齢とともに体力の衰えを感じ始める方もいます。「自分は体力があるから大丈夫」と思っても、多忙な職場や人員不足の職場では、自身の体力に限界を感じ、仕事とプライベートの両立が難しくなってしまうことがあるかもしれません。「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、40代はワークライフバランスへの意識が重要です。転職先の勤務環境を正確に把握するためにも、転職前の情報収集をしっかりしましょう。

 

3. 転職エージェントを活用する

国家資格を保有し経験を積んできた薬剤師は、一般の40代と比べて転職しやすい環境にあるといえます。とはいえ、経験やキャリアをしっかりと積んできた薬剤師ほど、求める年収や労働条件にもしっかりこだわりたいと考えるのではないでしょうか。そんなとき、転職エージェントを利用すると、担当エージェントが待遇面の交渉をしてくれるため、自分の希望に見合った年収を得ることができます。また転職先の勤務環境についてリアルな情報が収集できるため、転職後のミスマッチを防ぎやすいというメリットがあります。転職エージェントを活用して効率的に転職活動をすることをおすすめします。

4. 40代薬剤師の転職失敗例と注意すべきポイント

新しい職場に採用されたとしても、その後のミスマッチが発覚すれば、早期退職につながる可能性があります。「転職に失敗した」と後悔する前に、ミスマッチを防ぐために意識したい3つのポイントをチェックしてみましょう。

 

1. 経験を正しく伝える

応募時や面接時には「自分に何ができるのか、また何が未経験なのか」をしっかり伝えておかなければ、ミスマッチが生まれやすくなります。たとえば、上述したような電子薬歴の対応レベルもそのひとつ。新しいルールや業務内容に慣れない期間が長引けば、ストレスもたまりやすくなるでしょう。

 

40代薬剤師は「経験が充分にある」ことを期待されるので、苦手な分野を言い出しにくいかもしれませんが、「できない」ことを伝えることも転職後の自分が働きやすくするために大切なことです。特に未経験分野への転職では、自身ができることを明確にし、しっかりと研修が受けられる環境かどうかを確認しましょう。

2. 応募先選びは「志望動機」を基準にする

転職活動では、むやみに多くの勤務先に応募するよりも、退職・転職理由に合った勤務先に絞るほうが転職後のミスマッチを防げます。そのためにはまず志望動機を明確にすること、そしてそれを応募先に提示することが重要です。履歴書やエントリーシートに記載する志望動機もおろそかにせず、自身の中で譲れない部分ははっきり明記することが大切です。応募先の意向に沿うような志望動機に無理に寄せてしまうと、求める働き方に沿わない可能性があるため注意しましょう。

 

3. 希望する働き方を転職前に伝えておく

実際に聞いた転職失敗例をご紹介しましょう。家庭での時間を確保するために、正社員からパート勤務での働き方に変更したCさん。しかし店舗数が増えるとともに人員不足となり、結局残業時間が増えてしまいました。希望した働き方ができなかったCさんは、働きづらさを感じたまま仕事を続けていました。

 

このように、最初に希望した条件からずれが生じてしまうと、ストレスが大きくなってしまいます。こうしたミスマッチが起こらないように、対応する処方箋枚数や常勤薬剤師の人数、また残業手当といった気になる点を事前に確認しておくことが大切です。同時に、自身がどんな働き方をしたいのか、転職先に伝えておく必要もあります。

5. 40代薬剤師の平均年収はいくら?

どの年代からも代表的な転職理由として上がってくるのが年収です。やはり転職を考える際にも、気になるポイントではないでしょうか。ここでは40代薬剤師の平均年収について、他職種との比較をもとに紹介します。

 

現役薬剤師500人に聞いたマイナビ薬剤師の調査によると、40代薬剤師の平均年収は、男性で約638万円、女性で約556万円でした。一方、国税庁が発表した「平成30年分民間給与実態統計調査」によると、薬剤師を含む40代労働者全体の平均年収は男性で約608万円、女性で約316万円となっています。

 

男性薬剤師は全体の平均年収と比べて、やや高い水準であることがわかります。そして大きく差が開いたのが女性の平均年収です。薬剤師であっても、労働者全体であっても、男性のほうが女性よりも年収が高いという結果になっていますが、薬剤師の場合は男女差が約80万円である一方、労働者全体では男女差が約300万円にものぼります。

これは、一般に結婚や出産にともない女性が仕事を辞めたり働き方を変更したりせざるを得ないケースが多い中で、薬剤師は求人ニーズが高くまた国家資格職であるために一般の40代に比べて復職がしやすいという背景があります。そのうえ、薬剤師がパート勤務で復職した場合でも、一般のパート職と比較してはるかに高い水準の時給を得られている点も影響していると考えられます。パート薬剤師の時給について詳しく知りたい方は「薬剤師のパートとしての働き方【仕事内容・やりがい・時給・キャリア】」をご参照ください。

6. 40代薬剤師が年収を上げるには?

40代で転職する薬剤師が年収を上げるには、どのような点に気をつければ良いのでしょうか? 具体的に下記の3点が重要となります。

 

① 転職先を選ぶ際、年収の高い職種に絞る

② 経験を生かして役職につき、手当を増やす

③ 自分に合った職場で長く働く

 

勤務形態によって年収水準が異なるため、転職で年収アップを狙うのであれば、職場選びから検討するとよいでしょう。例えば、調剤薬局やドラッグストアは病院と比べて平均年収が高い傾向にあります。マイナビ薬剤師の求人情報から算出した業種別の平均年収は、病院薬剤師が434.6万円、調剤薬局が488.3万円、ドラッグストアが512.5万円でした。

また、前職が製薬会社やMRの場合も、営業での経験を生かしたコミュニケーション力や管理職の経験など、自身のアピールポイントを生かして役職につく方法もあります。

 

また一般的に、勤務年数が長いほど年収水準は上昇していく傾向があるため、長期間勤務できる職場選びも重要です。なお年収アップには昇給率も重要であるため、将来的に勤続年数とともに年収を上昇させたい方は、転職エージェントを利用して応募前に昇給率を確認することをおすすめします。

7. 40代薬剤師の転職は目的を明確に

専門的なスキルを持つ薬剤師は、一般的な40代と比べて転職しやすいといえます。また、働き方も幅広く、フルタイムやパートなどの選択肢から選べることから、家庭環境や生活の変化に合わせた働き方も選択しやすいのではないでしょうか。選択肢の幅が広いからこそ、自身の転職の目的を明確にし、ワークライフバランスに合った職場を見つけて転職を成功させましょう!


執筆/松岡マイ

薬剤師。研修認定薬剤師。京都薬科大学卒業。地元のドラッグストア就職後、ストレス性の顔面神経麻痺となる。その後、自身の働き方について考え直し、派遣薬剤師兼ライターとして、沖縄や北海道の調剤薬局・ドラッグストアなど全国各地で働く。内科、整形、耳鼻咽喉科、総合病院の門前薬局などで働いた経験や、自身の働き方・転職について記事を執筆。趣味は旅行で、トラベルライターとしても活動。

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