患者さんに伝わりやすい具体的な説明の工夫を
待ち時間対策の最大のポイントは、患者さんを不満や不快な気持ちにさせないことです。待ち時間が生じる場合は、処方せん受付時にあらかじめ、できるだけ具体的に提示するのが基本です。「今日は混みあっておりますので、〇分ほどお待ちいただきます」というのが定番の言い回しですが、このときぜひ実践してほしいのが、お願いや質問形式で伝えることです。
「〇分くらいかかりますが、よろしいでしょうか?」「〇分ほど、お待ちいただけますか?」というように、患者さんの意向を尋ねるかたちで伝えます。待つかどうかを患者さんに決めてもらうと、患者さん自身に選択権があることを認識してもらえるので、不満やクレームが生まれにくくなるのです。
さらに、待ち時間が生じる理由を具体的に伝えるとより納得してもらいやすくなります。たとえば、長期・多剤処方の一包化や薬の取り寄せなどの時間がかかりそうな処方を受けた場合。「今日は機械で分包する処方の患者さんが続いて、すでにおふたりにお待ちいただいております。そのため、1時間ほどお待ちいただくかもしれませんが、よろしいですか」というように待ち時間にどんな業務をしているのかイメージできるような説明を心がけましょう。
初めて薬局で薬をもらう患者さんは、「ただ薬を受け取るだけ」だと思っている場合があります。そのため薬をお渡しするまでの工程を説明することは、「薬を集めるだけじゃなくて、いろいろやることがあるのね」と薬剤師業務を理解してもらううえでも有効です。
最初に伝えた時間よりも待ち時間が長くなりそうな場合は、予定の時間を過ぎてから謝るのではなく、間に合わないかもしれないと思った時点で早めに伝えるのがポイントです。「大変お待たせしております」「お急ぎのところ申し訳ございません」というように労わりや気遣いの言葉を添えた上で、「さきほど1時間とお伝えしましたが、もう少しお時間がかかりそうです。あと10分ほどお待ちいただくことは可能でしょうか」などと謝罪とお願いを伝えます。
同じ10分間でも、次々と業務を行う薬剤師とずっと座って待機している患者さんでは感じ方がまるで異なります。常に患者さんの立場になって、いらいらせずに待ち時間を過ごしてもらえるかを考えましょう。
待ち時間対応の心構え
相談者さんは真剣に丁寧に患者さんと向き合っていて素晴らしいと思いますが、謝るたびに憂うつになってしまうのはちょっと困りもの。おそらく相談者さんのなかで「クレーム=嫌なこと」というイメージが定着して離れないのでしょう。そこで、いつでもフラットな気持ちで対応ができるよう、「待ち時間にまつわる業務」に対する思考を切り替えてみることをおすすめします。
まず、待ち時間についてのクレーム等は、相談者さん個人に対するものではないと理解すること。怒られたり非難されたりするのはつらいことですが、待ち時間は相談者さん自身に問題があって起こるものではありません。薬局の代表として堂々と対応してください。
そして、もっとリラックスして前向きな気持ちで対応すること。「また待ち時間で文句を言われた」とマイナスに考えるのではなく、「今日は違う言い回しで説明してみよう」「こういう説明だと分かりやすいかも」などと創意工夫を持って対応してみてはいかがでしょうか。
最後に、クレームをよく言う患者さんと信頼関係を築くことです。ちょっとした世間話を気軽に交わせる関係、もっと言えば、名前を呼んでもらえるくらいの関係になれば、クレームを言いたくなる気持ちも薄れていくはず。
クレームを言うからといって必ずしも気難しい患者さんとは限りません。積極的に挨拶するなど患者さんの懐に自分から飛び込んでみると、意外と話しやすくてすんなり馴染むことができるかもしれません。気軽に「混んでるみたいだから、後で取りに来るね」と言ってもらえるような関係性を築けるよう、日ごろから思いやりや親しみが感じられる対応を心がけましょう。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日 同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: https://smilegrdn.exblog.jp/
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