- 1.薬学生の主な就職先
- 1-1.調剤薬局
- 1-2.医療施設
- 1-3.ドラッグストア
- 1-4.企業(MR)
- 1-5.治験関係(CRO・SMO)
- 2.薬学生の就活スケジュール
- 2-1.インターンシップに参加する
- 2-2.自己分析や業界研究を始める
- 2-3.合同説明会に参加して企業研究を始める
- 2-4.気になる企業にエントリーして面接を受ける
- 2-5.国家試験の結果を内定企業に伝える
- 3.薬学生の就活はいつから始めるべき?
- 3-1.薬局や病院の実習が終わってから
- 3-2.6年生になってから
- 3-3.国家試験が終わってから
- 4.薬学生用の就活サイトを活用するとスムーズに進めやすい
- 4-1.求人を効率的に探せる
- 4-2.企業のイベント情報が届く
- 4-3.国家試験の勉強会に参加できる
- 5.国家試験の勉強をスムーズに進めるために就活は早めのスタートがおすすめ
1.薬学生の主な就職先
厚生労働省が発表した「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、薬剤師の58.7%は薬局で働いているとされています。
※参考:令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況|厚生労働省
特に調剤薬局は、就活でも人気の職場です。私が薬学生だったころ、最も面接を受けている人が多かったのは調剤薬局、次に病院でした。
就職先によって薬剤師としての働き方は大きく変わります。まずは、就職先の候補となる施設の種類と特徴を見てみましょう。
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1-1.調剤薬局
多くの薬学生が就職先として候補に挙げるのが調剤薬局です。幅広い医療機関の処方に触れる機会があることと、夜勤がほとんどないのがメリットでしょう。
チェーンの調剤薬局で働けば異動になるケースもあり、さまざまな科目の処方箋に触れられます。土日や祝日が休みになることが多く、比較的プライベートの予定を立てやすいのも特徴です。
🔽 調剤薬局で働く薬剤師の仕事について詳しく解説した記事はこちら
1-2.医療施設
上述した厚生労働省の資料によると、薬剤師の約20%が医療施設で働いています。医師や看護師など、さまざまな医療従事者と近い距離で働ける就職先です。注射剤や輸液、院内製剤の調剤も経験できるのが、調剤薬局との大きな違いでしょう。
医療施設によっては当直があり体力的につらいことがあるかもしれません。しかし、緊急時に対応するスキルや知識を身につけられるため、スキルアップにつながります。
また、医療施設によっては病棟に足を運んで患者さんの病態や治療効果を自分の目で判断し、医師と相談して治療スケジュールを組むなど、チーム医療への参画も可能です。
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1-3.ドラッグストア
ドラッグストアは、調剤メインの調剤併設店と、調剤と売り場をローテーションで回るケース、また、OTC専門店の大きく3つに分けられます。
ドラッグストア勤務で、調剤も行いたい方は調剤併設店がおすすめです。OTC専門店では、調剤業務がまったくありません。
調剤のみを扱う調剤併設店の場合、業務内容は通常の調剤薬局とほとんど同じです。OTCも扱う場合はポップや利益を上げるための売り場作り、店舗として力を入れている販売強化品の売り込みなどもこなします。
化粧品や健康食品、日用品などさまざまな知識を得られるため、幅広い知識を習得できるでしょう。24時間営業のドラッグストアは、夜勤が発生したり、チェーン店では異動やヘルプが発生したりする可能性もあります。
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1-4.企業(MR)
製薬企業に属し、医療施設や介護施設などに自社製品を採用してもらったり最新の医薬品情報を伝えたりするのがMRです。
医療現場で医薬品を使った結果起きた治療効果や副作用などの情報収集も行います。正しい医薬品の情報を普及させたいと思っている人はもちろん、調剤薬局や病院と比べると期待できる年収が高い傾向にあるため、高年収を狙っている薬学生に人気です。
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1-5.治験関係(CRO・SMO)
医薬品開発業務受託機関(CRO)や治験施設支援機関(SMO)は、新薬を世に出すために必要な仕事を行う組織です。
治験を行うスケジュールを管理し、患者さんや医師などとうまく連携を取りながら治験を進めます。未来の治療薬を作り、治療薬がなく困っている患者さんを助けることができる仕事です。
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2.薬学生の就活スケジュール
経験したことがないため、いつからどういう順番で就活をするのか、分からないことだらけという方もいるでしょう。ここでは薬学生の一般的な就活スケジュールを紹介します。
2-1.インターンシップに参加する
5年生の夏から冬にかけて参加しておきたいのがインターンシップ。インターンシップとは、簡単に言うと就業体験のことです。
気になっている企業で実際に模擬就職することで、薬剤師としての仕事をリアルに体験できます。基本的にインターンシップは必ず参加しなければいけない訳ではないものの、「想像していた企業の雰囲気と違った」「思っていたよりも自分に合っている職場だった」など、新たな発見につながります。
🔽 薬学生のインターンシップについて詳しく解説した記事はこちら
2-2.自己分析や業界研究を始める
5年生の夏ごろからは、インターンシップと同時に自己分析や業界研究も始め、薬剤師業界の大まかな全体像をつかみましょう。
自己分析とは、自分がどういう環境で働きたいのか、何を重視して働きたいのかなどを考えることを指します。自分が本当にやりたいことを明確にすれば、合わない就職先を選ぶ確率を減らせます。自己分析をしっかり行っておけば、働き始めてから感じるギャップを最小限に抑えられるのが利点です。
また、業界研究とは、薬剤師の就職先としてどのようなところがあるのか、それぞれどういった業務内容を担当するのかなどを調べること。薬局長や店長、SVや商品開発部など、将来的なキャリアパスを調べることも大切です。
業界全体について一度調べておくと、視野を狭めることなく就活を進められます。業界研究をしっかり行っておくことで、薬剤師として働き始めてからのキャリアを描きやすくなるため、志望動機も書きやすくなるでしょう。
2-3.合同説明会に参加して企業研究を始める
業界の大まかな動向や特徴をつかんだら、次に気になる企業に焦点をしぼってさらに情報を収集します。
合同説明会では多くの企業が一度に集結するので、複数の企業の情報をまとめて得られます。質問や相談なども直接できるチャンスです。気になる企業があれば積極的に参加しましょう。
合同説明会は比較的気軽に質問できる雰囲気があるため、上手に活用するのがポイント。企業が個別に説明会を開いていることもあるので、開催日のチェックも忘れずに。企業のサイトを見ただけではわからない直近の売り上げやマーケティング戦略、店舗の拡大などの詳しい話が聞けるのが魅力です。
2-4.気になる企業にエントリーして面接を受ける
応募する企業を最終的には2~3社ほどにしぼり、エントリーします。多くの企業は6年生に上がる直前の3月ごろからエントリーの受付が開始されるので忘れないようにしましょう。
ただし、エントリー数が多すぎると履歴書の作成や面接で時間が取られて、国家試験の勉強がおろそかになりがちです。多くても3社ほどにとどめておくのがおすすめ。もちろん1社だけでも構いません。企業によってエントリー受付開始の時期が異なるので、見逃さないように注意しておきましょう。
1回の面接だけで内定が決まるところもあれば、数回にわたって面接を受けたり適性試験を受けたりする必要があるところもあります。
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2-5.国家試験の結果を内定企業に伝える
6年生の2月末ごろはいよいよ国家試験です。試験が終わり、自己採点が済んだら、内定を受けていた企業にできるだけ早く結果を伝えましょう。内定になっていても、国試の結果次第では取り消しになる企業もあります。
万が一不合格になった場合でも内定取り消しにはならず、薬剤師ではなく一般従事者として働かせてもらえたり、翌年まで内定を保留してくれたりする企業もあるので、もし不合格になった後の流れについてもしっかり確認しておきましょう。
🔽 薬剤師国家試験合格後の流れを解説した記事はこちら
3.薬学生の就活はいつから始めるべき?
薬学生の就活は人によって始める時期が少しずつ違います。始める時期によってメリットやデメリットがあるため、自分に合うのはどの時期からなのかを知っておきましょう。
3-1.薬局や病院の実習が終わってから
薬局や病院の実習が終わってから本格的に就活を始める薬学生は多いでしょう。実習を終えて大学での講義が再開すると「エントリー先は決めた?」「そろそろ就活を始めないと」といった声が聞こえてくるようになるかもしれません。
周りと同じタイミングで始めると「みんなと一緒のスタート」という安心感があるのが大きなメリットです。
3-2.6年生になってから
すでに希望の就職先がしぼられている薬学生は6年生になってから始めているケースもあります。業界研究や企業研究を事前に行っていれば、やや遅めのスタートでも周りに遅れを取りづらいでしょう。
しかし、先にもお伝えしたとおり、大手の製薬会社や一部の病院などは決まった時期にしか応募を受け付けていないことがあります。うっかり応募期間を見過ごしてしまわないよう注意が必要です。
3-3.国家試験が終わってから
少しレアケースなのが、国家試験が終わってから就活を始めるという場合。実習が終わったタイミングや6年生になってから就活を始めると、どうしても国家試験の勉強に割く時間が就活の影響で削られてしまいます。一方で、国家試験が終わってから就活を始めることで、勉強時間をしっかり確保できるのが利点です。
製薬会社や大きな病院はエントリーの受付時間が限られているため国家試験の後だと応募できないことがありますが、調剤薬局やドラッグストアなどであれば国家試験が終わった後でも問題なく内定まで進める場合があります。
就職先の選択肢は狭まってしまいますが、国家試験の勉強に打ち込めるのがメリットです。
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4.薬学生用の就活サイトを活用するとスムーズに進めやすい
初めての就活は、何をしたらいいのか分からず戸惑ってしまうことが多いでしょう。忙しい大学生活をしながら企業の情報をもらさず入手するのは思っているよりも大変なことです。そこで活用したいのが薬学生用の就活サイトです。
4-1.求人を効率的に探せる
調剤薬局や病院などの業種、エリアなど希望の条件でしぼって簡単に求人を検索できます。興味のある条件をしぼって検索できるため、効率的に自分の希望に合った求人を探すことが可能。
また、興味のある求人が複数あった時、比較するのも簡単です。情報収集が効率化すれば、国家試験の勉強時間も確保できます。
4-2.企業のイベント情報が届く
企業が定期的に開催している説明会やセミナーの情報が入手しやすいのもメリット。自分で企業のサイトをこまめにチェックするのもよいのですが、意外と手間がかかります。その点、就活サイトに登録しておくことでイベント情報が自動的に届くようになります。
基本的にイベントに参加しなかったからといって就活が不利になることはないものの、可能ならイベントに参加してしっかりと企業研究を進めておくとよいでしょう。また、イベントに参加すれば、未来の同期たちと交流を深める機会も得られます。
4-3.国家試験の勉強会に参加できる
企業の中には、国家試験対策の予備校講師を招いて、勉強会を開いてくれるところも多くあります。就活サイトに登録すると勉強会の開催情報についてもお知らせが届くようになります。
本来なら受講費が必要なところを企業が負担してくれるため、薬学生の負担ゼロで参加可能な場合もあります。
同時に、その企業に興味がある他の薬学生との交流もできるため、自分が知らなかった情報を入手できるチャンスもあるでしょう。
🔽 薬剤師国家試験の勉強法を解説した記事はこちら
5.国家試験の勉強をスムーズに進めるために就活は早めのスタートがおすすめ
5年生で実施される実習が終わってから、本格的に就活を開始する薬学生は多いでしょう。ちょうどその頃に大学で合同説明会が開かれることも多く、必然的に就活を意識する機会が増えてきます。
実習後の早い時期に就活を始めておけば、国家試験の勉強に割く時間を確保できるのが利点です。国家試験に受からなければ内定が取り消しになることもあるため、できるだけ効率よく進めていけるよう就活の準備にも力を入れておきましょう。
国家試験の勉強に注力したいと考えているのであれば、試験が終わってから就活を始めるのもよいでしょう。「勉強もしないといけないのに」と焦ることなく落ち着いた心で就活を進められます。
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薬剤師ライター。薬学部を卒業後、都内の大手ドラッグストアでOTCメインの薬剤師として4年間勤務。その後ライター業に転身し、正しい医療知識や医薬品の使い方、選び方などを広めるため執筆を続けている。自身が薬剤師としての働き方に悩んだ経験から、資格にとらわれない働き方も発信。スポーツファーマシストや化粧品検定1級、漢字検定準1級や薬事法管理者などの資格も取得し、伸び伸びと幅広く活動をしている。
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