
医療に欠かせない職種でありながら、どこか影が薄いと言われてしまうこともある、薬剤師という哀しき存在……。「あるある話」を通して、もっと知ってください。私たち薬剤師のこと!
薬剤師しか分からない?薬局を掃除する時の心得【薬剤師のあるあるシーン#19】

今は調剤助手さんが活躍する機会も増え、業務分担が進んでいますが、かつては「薬局の掃除は薬剤師でないとできない」という考えが根強い職場もありました。私が若い頃にお世話になった薬局長も、そのタイプ。掃除に厳しい方で、1日2回の掃除は当番制。「掃除なんて誰がやっても同じでは?」と思いがちですが、薬局長の持論は違いました。「どこが汚れるか、どういう状態なら安心して仕事ができるか、それは調剤する薬剤師にしか分からない」――。
調剤業務では、散薬を計量したり、乳鉢で混ぜ合わせたりといった作業をします。この時、目に見えない微細な粉薬が、調剤台の上だけでなく、散薬棚や並んでいる薬品瓶など、あらゆるところに飛散してしまうのです。多少粉が残っていても作業自体は不可能ではありませんが、ふとした瞬間に気になり、調剤への集中力が途切れてしまいます。つまり、掃除を徹底することは、単純にきれいにするだけでなく、正確に調剤するための準備になっているのです。
若い頃はそういった掃除の効能に気付けず、仕事の一つとしてこなしていましたが、歳を重ねた今は掃除の時間が好きになってきました。汚れた場所を磨いていると、不思議と自分の心まで整っていく気がするのです。あの厳しかった薬局長のルールは、薬剤師としての規律や心の在り方を教えるためのものだったのかもしれない。今ではそう感じています。

東北大学薬学部卒業後、ドラッグストアや精神科病院、一般病院に勤務。現在はライターとして医療系編集プロダクション・ナレッジリングのメンバー。専門知識を一般の方に分かりやすく伝える、薬剤師をはじめ働く人を支えることを念頭に、医療関連のコラムや解説記事、取材記事の制作に携わっている。
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