第66回 藤本 和子先生
2011年の東日本大震災以降、災害医療の現場は支援する側・支援される側ともに大きく変化してきました。今回は、日本災害医療薬剤師学会の理事を務め、災害医療支援薬剤師の養成に尽力している藤本和子先生に再度ご登場いただきます。
現在の災害医療現場の仕組みや体制、今後災害医療に携わることを希望する薬剤師が活躍するための方法などについてうかがいました。
災害医療に携わる医療機関は「病院」「診療所」「薬局」「緊急医療救護所・医療救護所」と分類されます。災害が発生した場合、各医療機関はそれぞれに割り振られた役割を担うことになります。
災害発生直後はまず、「医療拠点病院」が管轄する「(緊急)医療救護所」が立ち上がります。救護所がどこに設営されるかは区の防災地図などに情報がありますが、大抵は医療拠点病院の近接地です。平時に確認しておくといいでしょう。
「医療拠点病院」では、主に重症の患者を受け入れ、診療を継続します。またその近接地に設営される「(緊急)医療救護所」は主に軽傷者の治療にあたります。
薬局は「病院」「診療所」「薬局」「緊急医療救護所・医療救護所」のうちどの医療機関を支援するのか、市区町村によって、あらかじめ決められています。発災直後は混乱していますし、支援物資なども届きにくい状況にあります。発災から72時間の医薬品は、薬局での備蓄品を使用して支援を行うことが必要になります。
いざ、災害が起きたときに慌てないように自分が勤務する薬局の市区町村に問い合わせ、災害時の役割分担について確認をしておくとよいでしょう。
次に、発災から72時間以内の薬剤師の役割について確認しましょう。
超急性期には薬剤師のみならず医師を含めた医療従事者全員が、医療を提供するための環境を整える仕事に携わることが多くなります。
○情報収集・整理
店舗をはじめ近隣の医療施設の被害状況の把握、職員の安否の確認などを行います。通行止めの道路があった場合の道案内なども必要なので、地元の人からの情報は重要です。
○トリアージの補助
医療救護所で医師が行う一次トリアージの補助をします。救護所にやってきた患者さんが「歩いてきた(歩ける)か/歩けない状況か」がわかるだけで、医師の負担も違います。実際に薬剤師がトリアージタグを切ることはありませんが、知っておきましょう。
また、「具合が悪い」と救護所に来た人のなかには「被災してパニックになっている(負傷していない)人」「(軽傷のため)OTC医薬品で対応可能な人」などもいます。こうした人たちを見分けて対応できると、トリアージ中の医師の負担を減らせるでしょう。
○医療救護所での活動準備
救護所や避難所で活動する場合は、物品の整理も欠かせない作業です。医療の提供がスムーズに行えるよう、患者動線の確認や調剤場所のレイアウトなども検討しながら、収納場所や体制を整備します。
超急性期は傷病者の命を救えるか否かを決する重要な期間であるにも関わらず、他地域などからの医療の支援がまだ不十分で、医療の供給不足が懸念される期間でもあります。この期間は地域の力のみで医療を提供し続ける心づもりをしておき、薬局の場合は常に72時間すなわち3日分程度の医薬品を備蓄しておくことが必要です。