【国内製薬大手19年3月期決算】グローバルシフト鮮明に~第一三共除き増収を確保
国内製薬大手4社の2019年3月期決算が出揃った。第一三共は、主力品の降圧剤「オルメサルタン」の特許切れに直面して減収となったものの、武田薬品、アステラス製薬、エーザイの3社は増収で着地した。武田は、シャイアー買収関連費用で大幅減益となったが、3カ月分の旧シャイアー製品売上を計上し、売上高は2兆円を突破。アステラスは抗癌剤「エンザルタミド」、エーザイは抗癌剤「レンビマ」が全地域で成長し、主力品がグローバルで拡大。海外展開が加速し、薬価制度の抜本改革でマイナス成長となる国内市場の影響を跳ね返した。今期は武田が巨額の最終赤字を計上し、アステラスが二桁減益となる見通し。
売上高を見ると、武田は3カ月間の旧シャイアー製品が連結対象に加わり前期比19%増の二桁成長。シャイアー製品を含まない決算では、グローバル製品の伸長で1%増となった。医療用医薬品の海外売上収益では5.6ポイント上昇し、75.0%となった。
潰瘍性大腸炎治療薬「エンティビオ」は欧米で拡大し、34%増と今年度は3000億円を突破する勢い。癌領域では、多発性骨髄腫治療薬「ベルケイド」が7%減となったが、後継の「ニンラーロ」が販売する全地域で成長。1000億円超のブロックバスターは3製品となった。シャイアー製品では、血友病A治療薬「アドベイト」など希少疾患治療薬が計上され、3092億円上乗せした。
アステラスは、国内は長期収載品の落ち込みで5%減となったが、グローバル製品でカバーし、0.5%増とわずかに増収を確保した。国内、EMEAの落ち込みを、米国を含めた米州とアジア・オセアニアで吸収し、海外売上比率は2ポイント増の70%となった。
抗癌剤のエンザルタミドは、世界全地域で売上を伸ばし、13%増の3331億円と国内製薬企業が販売する中でトップ製品となった。過活動膀胱(OAB)治療剤のミラベグロン製剤は二桁の伸びを示した。
エーザイは、北米が13%減と落ち込んだが、レンビマの売上がほぼ倍増。米メルクからの一時金・マイルストン収入による貢献もあり、7%増と順調に推移した。抗癌剤「ハラヴェン」が4%増、抗てんかん薬「フィコンパ」も32%増とグローバル製品が成長した。
一方、第一三共は、主力のオルメサルタンが特許切れの影響で30%減と大幅に落ち込み、全体で3%の減収となった。グローバル戦略品では、抗凝固薬「エドキサバン」が43%増となり、1000億円を超える大型製品に成長。国内では特例拡大再算定品目の抗潰瘍剤「ネキシウム」が10%減となり、ワクチンを含む医療用医薬品事業では3%減となった。
利益面では、武田はシャイアー買収関連費用が響き大幅減益となったが、単体では67%増の最終増益となった。アステラスとエーザイは増益。第一三共も前期に減損損失を計上していた特殊要因があり、増益となった。
20年3月期は、武田はシャイアー製品が通期で寄与し、売上高3兆円を突破するものの、シャイアー買収関連費用が重荷となり、3830億円の最終赤字を見込む。第一三共は、抗癌剤「DS-8201」の契約一時金などで増収営業増益、エーザイは3期連続の増収増益を計画。アステラスはOAB治療薬「ベシケア」などの特許切れ影響で、減収二桁減益を予想する。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
国内製薬大手4社の2019年3月期決算により、各社のグローバル展開の様相が浮き彫りになりました。注目は日本企業で過去最大額となる約6兆2000億円でアイルランド製薬大手シャイアーを買収した武田薬品。買収関連費用で大幅減益となっていますが、売上高では3カ月間の旧シャイアー製品の売り上げを計上し、前期比19%増の2兆円を突破しています。その他の詳細な決算は下記のリストを確認しましょう。