薬学生のためのお役立ちコンテンツ 更新日:2024.04.02公開日:2024.02.15 薬学生のためのお役立ちコンテンツ

薬剤師は文系から目指せる?薬学部に入るためのポイントや注意点とは

文:岡本妃香里(薬剤師ライター)

文系に進んだけれど、薬剤師を目指したいと考える方もいるでしょう。「理系が苦手でも薬学部には進学できるの?」「文系卒の社会人だけど薬学部の受験はできる?」など、疑問に思うことがあるかもしれません。薬剤師になるには、高校の文理選択で理系を選ぶケースが一般的です。しかし、文系から薬学部に進めないわけではありません。今回は、文系から薬学部に入る方法とともに、文系卒の社会人が薬剤師を目指す方法について紹介しましょう。

1.薬剤師は文系からでもなれるが、理系のほうが有利な理由もある

薬剤師の資格を取得するには、6年制の薬学部を卒業し、国家資格を受験して合格する必要があります。受験科目さえ履修していれば文系からでも進学可能です。
 
しかし、薬科大学や薬学部のある大学は医学部や歯学部などと同様に、理系の学部に分類されるため、基本的には理系に進んでいるとスムーズです。その理由を詳しく見てみましょう。

 

1-1.受験科目に数Ⅲや化学が含まれることが多いから

ほとんどの薬学部、特に国立大学では、受験科目に数Ⅲや化学が含まれています。
 
文系を選択してしまうと、そもそも受験に必要な科目の授業が受けられないケースもあるため、薬剤師を目指す場合、理系を選ぶ人が多いです。

 

1-2.薬学部に入った後も理系の勉強がメインだから

薬学部に入ると、1年目から数学や化学などの講義が始まります。数学は数Ⅲの内容となる微分積分がメインです。数Ⅲが受験科目にない大学を受けて薬学部に入ったとしても、数Ⅲの内容は後で必ずクリアしなければいけません。
 
また、物理化学という物理と化学を融合させたような科目も学ぶ必要があります。学年が進んでいくと有機化学や薬物動態学などさらに難しい内容を学ぶ必要があるため、高校生のうちに理系科目の基礎を築いておくことが大切です。
 
スタートからつまずいてしまうと、少しずつ講義の内容についていけなくなってしまう可能性があります。

 

1-3.薬剤師国家試験を突破するためには理系の知識が必要不可欠

薬剤師国家試験には薬理や法規、薬物治療など暗記が中心の科目もありますが、物理や薬剤など計算が絡んでくるような問題もあります。大学に入ってからしっかりと勉強すれば問題はありませんが、やはり理系に進んで基礎を固めておいたほうが有利でしょう。
 
「計算が苦手だからほかの科目でカバーしよう」と思っても、科目ごとに足切りの点数が定められているため、おざなりにはできません。薬学部に入るためにも、薬剤師になるためにも、理系の科目を避けて通ることはできないのです。

 
🔽 薬剤師国家試験の勉強法を解説した記事はこちら

2.文系から薬剤師を目指すには?

受験科目に理系の科目が含まれることや、大学入学後も理系の知識が必要になることから、早くから薬剤師を目指しているなら理系を選んだほうが良いでしょう。
 
しかし、文系を選んだ後に薬学部に進みたいと考えることもあるはずです。文系だからといって薬剤師になるのを諦める必要はありません。また、理系科目が苦手でも努力次第で薬剤師を目指すことができます。

 

2-1.数Ⅲの試験がない大学を受験する

文理選択が終わった後に進路を変更する場合、理系に変更(理転)するのもひとつの方法です。また、数Ⅲの試験がない私立大学を選べば文系のままでも薬学部に入学できる可能性はあります。
 
試験科目が現代文と英語、理科(化学基礎・生物基礎)のみの大学もあり、そこでは数Ⅲが試験範囲になりません。
 
ただし、私立大でも化学が試験科目となっている大学が多いので、化学だけでも事前に対策しておくと選択肢が増えるでしょう。

 

2-2.独学で勉強して受験に挑む方法もある

本屋で参考書を購入し、受験科目を独学で学ぶのも良いでしょう。しかし、時間と気持ちにある程度の余裕がないと独学を続けるのは難しいかもしれません。
 
受験が間近に迫っているのであれば、学校や塾の先生に質問しながら効果的な学習法を指導してもらいましょう。
 
文系であっても、理系の先生や友人などを頼って勉強を進めれば習得できる可能性はあります。

 

2-3.予備校や受験対策アプリを活用するのもあり

予備校に通えば、受験に必要な科目を自分で選べます。文系クラスでは履修できなかった科目を選択すれば、効率的に学べるでしょう。
 
ただし、予備校は年間50万円ほど~100万円以上の費用がかかります。決して安い値段ではないため、比較的手軽な費用で利用できるスマートフォンのアプリを活用している人もいるようです。
 
アプリであれば月に数千円で必要な科目を受講できるものがあります。一定の費用はかかりますが、ポイントを絞って受験対策ができるため、勉強を進めやすくなるのがメリットです。

 
🔽 薬剤師になる方法を解説した記事はこちら

 

3.文系から薬剤師になるときの注意点

文系からであっても、薬剤師になることは可能です。とはいえ、文系から薬学部に入れたとしても、入学後には理系分野に直面します。
 
特に理系科目が苦手な人は、入学後のことを考えておくことが大切です。文系から薬学部に進んだ際の注意点や不安材料などを把握しておきましょう。

 

3-1.理系科目ができないと薬学部に入学してから苦労する

「理系科目が苦手だから文系中心の受験科目で入学できる大学を選んだ」という方は要注意です。入試はパスできても、薬学部に入ると数Ⅲや化学などに関連する講義が始まります。
 
必修科目は単位を落とすこともできません。理系科目が苦手でも毎日少しずつ復習をしていけば、理解は深まるはずですが、周りに理系が得意な学生がたくさんいる中、自分だけつまずいていると焦ってしまうかもしれません。
 
入学後は、「苦手だからこそ、余裕をもって理系科目を勉強しよう」という気持ちを忘れずに挑みましょう。理系科目が得意だという人も侮らないよう日頃から準備しておくことが大切です。

 

3-2.私立大学の学費は約1,200万円かかるので経済的負担が大きい

私立大学であれば数Ⅲなどの受験科目がなく、文系から入学しやすいところもあります。しかし、国公立と比べて私立は学費が高く、6年間で約1,200万円もの費用が必要です。

 
🔽 薬学部の学費について解説した記事はこちら

 

日本学生支援機構の第二種奨学金を使えば満額で月に14万円、年間168万円が借りられます。満額で借りても学費を完全に補うことはできませんが、活用することも視野に入れてみると良いでしょう。
 
参照:第二種奨学金(有利子で借りる)|日本学生支援機構(JASSO)

 
🔽 薬学生の奨学金について解説した記事はこちら

 

3-3.理系出身でも留年する人は少なくない

薬学部はどちらかといえば理系が得意な学生が多いところです。しかし、トップクラスの高校や理数科を卒業している学生でも、留年する人はいます。
 
逆に進学校出身ではなかったり文系出身だったりしても、コツコツと勉強している人はストレートで進学していくものです。
 
薬学部は理系出身の人にとっても甘い世界ではありませんが、日頃から地道に勉強しておけば文系でも薬剤師を目指すことができます。「大学受験よりも、入学後の定期試験や国家試験の勉強のほうがつらい」とこぼす学生もいるので、ある程度の覚悟が必要でしょう。

 

4.文系卒の社会人が薬剤師になるには?

薬学部には、ほかの大学をすでに卒業した人や社会人を経験してから入学する人もいます。社会人から薬剤師になることも可能です。
 
しかし、文系出身の社会人が薬剤師になるのは、簡単なことではありません。

 

4-1.独学もしくは予備校に通って受験科目をマスターする

薬剤師の国家試験の受験資格を得るには、原則として6年制の薬学部を卒業する必要があります。社会人から薬剤師を目指すのであれば、まずは薬学部に合格しなくてはいけません。
 
文系出身の人なら受験に必要な理系科目をどのようにして習得するのか考えておきましょう。参考書を購入して独学をする、仕事の合間を使って予備校に通う、スマートフォンのアプリを使うなど、自分のライフスタイルに合わせて勉強を進める必要があります。

 

4-2.6年間の学費や生活費を捻出する方法を考えておく

6年間の学費や生活費をどうやって払うのかも考えておかないといけません。社会人のうちにできるだけ貯金をして、費用を確保すると良いでしょう。
 
家族に支払ってもらう、奨学金を利用するといった方法もあります。学費のほかに教科書代や実習代などでさらに数十万円ほどかかるため、余裕を持って計算しておくと安心です。

 

4-3.仕事をしながら薬学部に通うのは現実的ではない

「フルタイムで働きながらでも薬学部を卒業できる?」と聞かれたら、答えはNOです。ときにはアルバイトをする時間すら確保するのが難しいほど、勉強に追われる日々を過ごさなければいけません。
 
そのため「学費は働きながら補おう」と考えている方は要注意です。社会人から薬剤師になりたいと思っているのなら、今の仕事を辞める決意が必要です。

 

4-4.周りの学生との年齢差は気にしすぎないことが大切

大学は何歳からでも学べる場所なので、本来なら年齢を気にすべきところではありません。しかし、自分より年下が多い環境で「うまく周りと溶け込めるか」「現役生から距離を取られないか」など、どうしても気になってしまうかもしれません。
 
ただ、薬学部は医学部や歯学部に入学するために浪人していた学生が入ってくることも多く、現役生より2~3歳上の人も多く見られます。40代で入学してくる人もいるので、あまり気にしすぎる必要はないでしょう。

5.文系からでも薬剤師にはなれるが努力が必要

薬学部は理系から進学する人がほとんどです。入試科目に数Ⅲや化学が含まれていることが多いため、理系を選択していないと受験できないことがあります。
 
しかし、文系からでも薬剤師は目指せます。受験に必要な科目を予備校やアプリを使って習得したり、理系科目のない私立大学を受験したりすることで薬剤師への道が開けるでしょう。
 
ただし、薬学部に入ってからも理系の講義がいくつもあるので、薬学部に入れたからといって安心はできません。入学してからが本番です。薬学部では暗記科目も多いので、理系科目が苦手な人でも努力次第ではストレートで卒業して薬剤師になれます。文系だからといって諦めずに、薬剤師を目指してみてくださいね。


執筆/岡本妃香里(おかもと・ひかり)

薬剤師ライター。薬学部を卒業後、都内の大手ドラッグストアでOTCメインの薬剤師として4年間勤務。その後ライター業に転身し、正しい医療知識や医薬品の使い方、選び方などを広めるため執筆を続けている。自身が薬剤師としての働き方に悩んだ経験から、資格にとらわれない働き方も発信。スポーツファーマシストや化粧品検定1級、漢字検定準1級や薬事法管理者などの資格も取得し、伸び伸びと幅広く活動をしている。

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