薬学生のためのお役立ちコンテンツ 公開日:2024.05.29 薬学生のためのお役立ちコンテンツ

薬学部のCBTとは?試験の合格率・難易度や勉強方法について解説

文:篠原奨規(薬剤師ライター)

6年制薬学部の4年次には、CBTという試験が実施されます。受験にあたり、どのように勉強したらよいか分からず困っている薬学生もいるのではないでしょうか。この記事では、CBTの概要や目的、試験内容などについて解説するとともに、合格するための具体的な勉強方法や対策のポイントをお伝えします。

1.薬学部のCBTとは?

薬学部のCBT(Computer Based Testing)とは、実務実習を行う前年度に実施される薬学共用試験のひとつです。CBTの概要や目的、薬剤師国家試験との違い、OSCEとの違いなどについて解説します。

 

1-1.CBTの概要

CBTでは「薬学教育モデル・コア・カリキュラム」に基づいて、4年次までに学んだ薬学の知識を問われます。大学の試験などで一般的に行われる筆記試験ではなく、コンピューターを用いて、5つの選択肢から答えを1つ選ぶ選択式となっています。
 
CBTの大きな特徴は、受験者一人ひとりに対して異なる問題が出題される点です。出題される問題は難易度に偏りがないように、これまでの試験結果から期待正答率の和が等しくなるように組み合わせて作成されています。
 
参照:CBTの概要|薬学共用試験センター
参照:薬学教育モデル・コア・カリキュラム 令和4年度改訂版|文部科学省

 

1-2.CBTの目的や意味

CBTは、実務実習に必要な知識が身に付いているかを評価するために実施されます。6年制薬学部の5年次には、病院と薬局で実務実習を行います。患者さんと接したり調剤を行ったりしながら、薬剤師に必要な知識や実践的スキルを身に付ける機会を得るものです。
 
しかし、薬学生は薬剤師資格を持たないため、調剤行為をすると薬剤師法第19条「薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない」の規定に反してしまいます。適法性を確保するためには、患者さんなどの同意を得た上で、実務実習の目的の正当性および実務実習における薬学生の行為の相当性が厳格に確保され、運用される必要があることから、実務実習を行う際には薬学共用試験への合格が参加条件のひとつとなっているのです。
 
参照:薬剤師法|e-Gov法令検索
参照:薬剤師養成のための薬学教育実務実習の実施方法について|厚生労働省
 
実習生として最低限の知識がないまま実習に参加してしまうと、調剤方法を間違えてしまったり、服薬指導のときに正しく説明できなかったりと、実習先や患者さんに迷惑をかけてしまう可能性があります。
 
実習先や患者さんの安全を確保するには、実習前に最低限の知識を身に付けておかなければなりません。そのため、実務実習前には、必要な知識や態度が身に付いているかを確認するCBTが実施されます。

 

1-3.薬剤師国家試験との違い

薬剤師国家試験(以下、国試)は6年制の薬学課程を修了し、卒業すると受けられる試験で、合格すると薬剤師資格を取得できます。つまり、CBTは実務実習に参加するための試験、国試は薬剤師資格を取得するための試験という違いがあります。
 
国試はCBTに比べて出題範囲が広く、難易度が高いのが特徴です。CBTでは実務実習を行うために必要な知識や態度を評価するのに対し、国試では医療人としての倫理観や一般教養、臨床で必要とされる知識や態度・技能など、薬剤師に必要なスキルを総合的に評価します。
 
参照:薬剤師国家試験のあり方に関する基本方針|厚生労働省

 
🔽 薬剤師国家試験について解説した記事はこちら

 

1-4.OSCEとの違い

薬学共用試験にはCBTとOSCEの2種類の試験があり、CBTについては上述したとおりです。一方のOSCEは、Objective Structured Clinical Examinationの略で、CBTと同様に実務実習前に行われます。
 
ただし、薬学共用試験で行うCBTとOSCEでは、試験内容や評価対象が異なります。CBTでは主に「知識」の習得度を評価する一方で、OSCEでは薬剤調製や調剤監査などの「技能」および「態度」を評価するのが特徴です。
 
CBTとOSCEの2つの試験に合格することが、5年次の実務実習に参加するための条件となっています。
 
参照:OSCEの概要|薬学共用試験センター

 

1-5.薬学共用試験にかかる費用とスケジュールの目安

薬学共用試験(CBT・OSCE)の受験料は24,000円で、各大学で徴収され、まとめて薬学共用試験センターに支払われます。
 
4年次の10月に受験申請を行い、11月頃に受験票が送付され、12月~1月の間で、大学が定めた日程で試験が行われます。具体的な試験日を知りたい場合は、薬学部の事務窓口に問い合わせてみるとよいでしょう。
 
試験に不合格となった場合や本試験を受けられなかった場合は、同じ年度内に一度だけ追・再試験を受験できます。追・再試験は、2月~3月に行われます。再試験でも、すべてのゾーンにおいて再度受験する必要があります。もし追・再試験でも不合格になってしまうと、5年次に進級できず、実務実習に参加することもできません。
 
参照:よくある質問|薬学共用試験センター

2.CBTの出題範囲

CBTは出題内容によって、3つのゾーンに分かれています。各ゾーンの内容と問題数は以下のとおりです。

 

ゾーン1
● 物理系薬学 30題
● 化学系薬学 35題
● 生物系薬学 35題
合計100題

 

ゾーン2
● 医療薬学[薬理・薬物治療系]  60題
● 医療薬学[情報系] 15題
● 医療薬学[薬剤系] 35題
合計110題

 

ゾーン3
● 基本事項 10題
● 薬学と社会 20題
● 衛生薬学 40題
● 薬学臨床 30題
合計100題

 

参照:出題範囲/問題数/合格基準|薬学共用試験センター

3.CBTの合格率や難易度

CBTに合格するには、全問題数の60%以上を正解する必要があるため、310題中186題以上が合格ラインです。各ゾーンに足切りはなく、全体の正解数が合格基準を超えていれば合格となります。
 
分野ごとの重要なキーワードや基本的な知識を問うような試験問題となっているため、4年次までに学んだ知識を十分身に付けている方であれば、特別な勉強をしなくても70~80%は正解できる難易度となっています。
 
2019年度から2022年度までのCBTの合格率は、いずれも95%を超えていることからも、難易度はそれほど高くないといえるでしょう。

 

■CBTの合格率
年度 合格率
2022年度 95.8%
2021年度 95.8%
2020年度 96.4%
2019年度 98.4%

参照:薬学教養試験の実施結果|薬学共用試験センター

 
🔽 薬剤師国家試験の合格率について解説した記事はこちら

4.CBTの勉強方法や対策のポイント

CBTの難易度は高くないといっても、受験者全員が合格しているわけではありません。合格に向けて、事前にしっかり対策をして試験に臨みましょう。CBTに合格するための具体的な勉強方法やポイントを解説します。

 

4-1.体験受験でコンピューターを用いた試験に慣れる

受験料2,000円を支払えば、CBTの本試験前に体験受験ができます。体験受験は4年次の7~9月に実施され、本試験と同じPC・ソフトウェアを用いて行われます。
 
CBTの本試験はコンピューターを使った試験となるため、特にコンピューター操作が苦手な方は、操作に慣れる機会として、積極的に受験しておくとよいでしょう。
 
また、体験受験の採点結果は後日フィードバックされます。採点結果から自身の苦手分野を把握できるため、本試験までに何を勉強するべきかが明確になります。試験直前に効率よく勉強を進めるためにも、体験受験はおすすめです。
 
参照:CBT体験受験|薬学共用試験センター

 

4-2.問題集や参考書を活用する

大学によっては、CBT対策用に問題集や参考書が用意されていることもあります。用意されていない場合は、問題集と参考書をセットで購入するのがおすすめです。知識を定着させるには、インプットとアウトプットを繰り返すことが大切です。
 
参考書で学習した後は、問題集を解き、分からなかった問題や身に付いていない知識があれば参考書に戻って再度インプットするなど、繰り返しの学習が成果につながります。問題集や参考書選びに迷う場合には、大学の先生や先輩に相談してみましょう。

 

4-3.事前に勉強のスケジュールを立てておく

試験の直前に慌てて試験勉強を始めることがないように、事前に勉強のスケジュールを立てることが大切です。目安として、4年次の7~9月に実施される体験受験までには、出題範囲をひととおり勉強しておきましょう。
 
また、体験受験を積極的に行えば、苦手分野が明確になり、本試験までに対策できます。CBTの合格率が高いからといって気を抜かずに、計画的に勉強することを意識しましょう。

 

4-4.ゾーン1の基礎科目を4年次の早い段階で学び直す

ゾーン1の試験範囲は、物理や化学、生物など、主に薬学部の1~2年次に学習する基礎科目です。CBTを受験する4年次には学んだ内容を忘れてしまっているかもしれません。対策に時間がかかる場合もあるため、4年次の4~5月など早い段階で着手しておくとよいでしょう。

 

4-5.ゾーン2と3は試験前に重点的に学ぶ

ゾーン2は3年次以降に学ぶ内容が多く、覚え直す手間が少ない傾向にあります。そのため、比較的点数を伸ばしやすいゾーンといえるでしょう。また、ゾーン3も衛生と法規をしっかり勉強しておけば、常識的な問題も多いため高得点が狙えるのが特徴です。ゾーン2と3は試験直前の追い込みとして、重点的に学ぶのがおすすめです。
 
特に薬理・薬物治療系は問題数が60題あり、CBT全体で最も問題数が多い分野です。処方鑑査や薬の説明をするときなど実務実習につながる知識も多いため、実務実習のときに生かせるようにしっかりと勉強しておきましょう。

 
🔽 薬剤師国家試験の勉強法について解説した記事はこちら

5.CBTに合格して、身に付いた知識を実務実習に生かそう

CBTは薬学共用試験のひとつで、5年次の実務実習に参加するために合格する必要があります。2022年度の合格率は95.8%であり、難易度はそれほど高くありません。
 
しかし、不合格になってしまうと実務実習に参加できなくなるだけでなく、すべてのゾーンで再試験を受けることになります。十分に事前準備や勉強をしておくことが肝心です。
 
ゾーン1は1~2年次に学んでいる内容が多いため、早めに対策に着手しましょう。ゾーン2と3は点数を伸ばしやすいので、試験直前に重点的に勉強を進めると高得点につながりやすくなります。
 
4年次の7~9月に実施されるCBTの体験受験を積極的に活用し、苦手分野を確認するとともに、コンピューターを使った試験に慣れておきましょう。
 
🔽 薬剤師になるまでの流れを解説した記事はこちら


執筆/篠原奨規

2児の父。調剤併設型ドラッグストアで勤務する現役薬剤師。薬剤師歴8年目。面薬局での勤務が長く、幅広い診療科の経験を積む。新入社員のOJT、若手社員への研修、社内薬剤師向けの勉強会にも携わる。音楽鑑賞が趣味で、月1でライブハウスに足を運ぶ。

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