薬剤師のためのお役立ちコラム 公開日:2023.10.13 薬剤師のためのお役立ちコラム

0410対応とは?薬局での対応ポイントや注意点、オンライン服薬指導との違いを解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

新型コロナウイルス感染症流行に伴う特別策として始まった「0410対応」。2022年9月の薬機法施行規則(省令)改正により、オンライン服薬指導を実施する環境が整う中、0410対応はいつまで続くのか、疑問に思うこともあるでしょう。今回は、0410対応について詳しく解説するとともに、オンライン服薬指導の違いや0410対応の実施期間についてお伝えします。

1.0410対応とは

0410対応とは、2020年4月10日に公布された事務連絡「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」への対応を指します。院内感染を含む感染防止対策として、非常時のオンライン診療・服薬指導のニーズが高まったことを受けて、一部解禁されたものです。電話や情報機器を使った診療や服薬指導などの取り扱いを明確にするため、時限的・特例的な対応がまとめられています。

2.0410対応における薬局の対応ポイント

0410対応における薬局の対応として覚えておきたい3つのポイントをお伝えします。

 

2-1.処方箋の取り扱い

備考欄に「0410対応」と記載されている処方箋が、医療機関からファックスやメールなどを使って処方箋情報として送付された場合、薬局は送付された処方箋情報を基に調剤を行うことができます。医療機関から処方箋の原本を入手後は、送付された処方箋情報と共に保管しなければなりません。

 

2-2.電話や情報通信機器を用いた服薬指導について

新型コロナウイルス感染症の拡大防止などを目的としていることに加え、患者さんの情報や服薬状況などを考慮して、電話や情報通信機器を使った服薬指導が可能と判断できる場合に限り、0410対応の服薬指導が可能です。患者さんの情報や服薬状況の確認ポイントには以下のようなものがあります。

 

・患者さんのかかりつけ薬剤師・薬局として有している情報
・当該薬局で過去に服薬指導等を行った際の情報
・患者が保有するお薬手帳に基づく情報
・患者さんの同意の下で、患者さんが利用した他の薬局から情報提供を受けて得られる情報
・処方箋を発行した医師の診療情報
・患者さんから電話等を通じて聴取した情報

参照:新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて|厚生労働省

 

ただし、注射薬や吸入薬など手技の指導が必要な薬剤については、上記の情報に加え、医師の指導内容や患者さんの理解度を確認した上で、判断しなければなりません。これらを考慮して、電話や情報通信機器を使った指導が難しいと判断される場合は、対面での服薬指導を促すことが認められています。

 

2-3.薬剤の配送等について

薬剤を渡す方法については、患者さんとよく相談した上で決める必要があります。処方薬の品質を守ることを考慮しつつ、確実に処方薬を患者さんの手元に届ける方法を検討しましょう。郵送や書留郵便、家族への手渡しなど、患者さんの希望も考慮することが大切です。
 
加えて、薬局は薬剤の発送後、患者さんの元に処方薬が届いたかを確認する必要があります。
また、薬剤によって冷所保管が必要なものや早急に服用する必要なものもあるでしょう。状況によって、薬剤師や薬局のスタッフが直接自宅まで届けることも検討するよう求められています。

 
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配送料や薬剤費の支払いについては、配送業者による代金引換の他、銀行振込、クレジットカード決済、その他電子決済等の支払方法により実施して差し支えないとされています。

3.0410対応を行う際の留意点

続いては、実際に0410対応を行う際の留意点について見ていきましょう。

 

3-1.0410対応における費用や手間などのデメリットを伝える

0410対応では薬剤の配送に送料がかかる、服薬状況の把握に手順が必要になるといったデメリットがあります。対面での服薬指導と異なり、手間や費用がかかる点などについて、患者さんにしっかりと説明を行い、記録を残さなければなりません。

 

3-2.服薬アドヒアランスの低下などを防ぐための対応

0410対応は、対面による服薬指導に比べて、得られる情報や伝えられる情報に限りがあります。服薬アドヒアランスの低下が懸念されているため、処方薬や患者の状態などを考えて、以下のような対応することが求められています。

 

・必要に応じて、事前に薬剤情報提供文書等を患者にファックス等により送付してから服薬指導等を実施する。
・必要に応じて、薬剤の交付時に、電話等による方法も含めて再度服薬指導等を行う。
・薬剤交付後の服用期間中に、電話等を用いて服薬状況の把握や副作用の確認などを実施する
・上記で得られた患者の服薬状況等の必要な情報を処方した医師にフィードバックする

参照:新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて|厚生労働省

 

0410対応では、処方薬が患者さんの手元にない状態で服薬指導を行うことがほとんどです。そのため、患者さんの手元に薬が届いた時に、新たな疑問や不安が生じる可能性があります。処方薬が手元に届いたタイミング、または服用期間中に、必要に応じて服薬指導や服用状況を確認したり、処方医へ情報提供をしたりするといった対応が必要です。

 
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3-3.対面による服薬指導の必要性について判断する

0410対応では、服薬指導の内容が上手く伝わらなかったり、服薬状況といった情報が十分に得られなかったりする場合があります。0410対応による服薬指導が難しく、対面による指導が必要と判断される場合は、速やかに切り替えることとされています。

 

3-4.患者さんのなりすまし対策

0410対応では、被保険者の確認などが対面で行われないため、患者さんの身元確認が難しい状況にあります。そのため、患者さんのなりすまし防止の観点から、以下の対策が必要です。

 

・映像を含む情報通信機器を使用する場合、被保険者証により受給資格を確認する。
・電話を使用する場合は、ファックスやメールなどを使用して被保険者証の写しを確認する。
・電話を使用する場合であって、ファックスやメールでの被保険者証の確認が難しい場合は、口頭で氏名や生年月日、連絡先に加え、保険者名や保険者番号などを確認する。

参照:新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて|厚生労働省

 

なお、被保険者証の確認に加えて患者さんの本人確認を行う場合には、「保険医療機関等において本人確認を実施する場合の方法について」等に留意して適切に対応することが求められます。また、虚偽の申告による処方が疑われる場合は、所在地の都道府県に報告しましょう。

 

3-5.その他の注意点

0410対応を行う場合であっても、患者さんの状況によっては次回以降、対面での服薬指導が必要な場合があります。そのため、できる限りかかりつけ薬剤師・薬局、または住まいに近い薬局を利用することが好ましいとされています。

また、医師が0410対応で診断や処方が難しいと判断した場合、近隣の医療機関へ受診するよう促されるケースがあります。この時、患者さんの状況によっては、すぐに受診することができず、インターネットを使って市販薬の購入を検討することもあるでしょう。こういったケースでは、薬局が適切に情報提供を行い、濫用などが起こらないよう留意する必要があります。薬局は0410対応を行う際、以下の点について薬局内の掲示板やホームページに掲載し、医療機関や患者さんなどに周知することが求められています。

 

・服薬指導等で使用する機器(電話、情報通信機器等)
・処方箋の受付方法(ファックス、メール、アプリケーション等)
・薬剤の配送方法
・支払方法(代金引換サービス、クレジットカード決済等)
・服薬期間中の服薬状況の把握に使用する機器(電話、情報通信機器等)

参照:新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて|厚生労働省

 

0410対応をする場合は、医療機関や患者さんなど関係者にしっかりと情報提供するとともに、さまざまなことに配慮しながら行う必要があります。

4.0410対応と改正薬機法でのオンライン服薬指導の違い

0410対応と改正薬機法でのオンライン服薬指導の違いを見ていきましょう。

 

■0410対応と改正薬機法でのオンライン服薬指導

0410対応 改正薬機法でのオンライン服薬指導
実施方法 初回でも、薬剤師の判断により、電話・オンライン服薬指導の実施が可能 実施の都度、薬剤師の判断・責任により、初回からオンライン服薬指導の実施が可能
通信方法 電話(音声のみ)でも可 映像および音声の送受信
薬剤師 かかりつけ薬剤師・薬局や、患者の居住地にある薬局により行われることが望ましい かかりつけ薬剤師・薬局により行われることが望ましい
診療の形態 どの診療の処方箋でも可能(ただし、備考欄に「0410対応」と記載されている処方箋に限る) 診療の形態に関わらず全ての処方箋が対象
薬剤の種類 原則として全ての薬剤 原則として全ての薬剤
服薬指導計画 特に規定なし 服薬指導計画の策定はなく、必要事項を明らかにしたうえで実施

大きな違いは、0410対応では、音声のみの服薬指導が認められている点でしょう。その他の項目についても細かなルールが決められています。
 
オンライン服薬指導について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

 
▶ オンライン服薬指導の導入ポイントとは?メリット・デメリットも紹介

5.0410対応はいつまで続く?

2022年9月30日の事務連絡「『新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いに関するQ&A』の改定について(その3)」で、0410対応期間について以下のように示されました。

 

「Q:事務連絡による時限的・特例的な取扱いは新型コロナウイルス感染症の感染が収束するまでの間とされているが、具体的にはどのような状態を収束と呼ぶのか。」
 
「A:新型コロナウイルス感染症の感染の収束の定義については、今後専門家も交えて議論が必要であるが、事務連絡による時限的・特例的な取扱いの趣旨を踏まえると、院内感染のリスクが低減され、患者が安心して医療機関の外来を受診できる頃が想定される。」

 

新型コロナウイルス感染症の流行状況によって、0410対応ができる期間が決まります。今後の流行状況に注視しましょう。

6.新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着くまで0410対応は続く

0410対応は、新型コロナウイルス感染症の流行対策として、時限的・特例的に実施しています。そのため、0410対策はしばらく継続されることが予想されます。薬剤師や薬局は、0410対応とオンライン服薬指導の違いを理解し、適切に対応できる体制を整えましょう。

 


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。