薬剤師のためのお役立ちコラム 公開日:2026.01.15 薬剤師のためのお役立ちコラム

AIによって薬剤師の仕事はなくなる?薬局などでの活用事例やメリットも紹介

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

AI技術の進化によって、薬剤師の仕事がAIに取られるのではないかと不安に感じている人もいるかもしれません。薬剤師の仕事の一部はAIで代替できるものの、代替できない業務もあります。AI時代の薬剤師は、AIを上手に活用して、業務に生かすことが求められるでしょう。本記事では、AIの概要や、AIによって薬剤師の仕事がなくなるのかについて解説するとともに、AIの活用例やメリット、注意点についてもお伝えします。加えて、AI時代に薬剤師が求められることについて考えていきましょう。

1.AIとは?

AI(人工知能)とは、「Artificial Intelligence」の略で、人間のように学習・判断・推論する機能を持つコンピューター技術のことです。
 
人間が物事を考えるときのプロセスと似た形で情報を処理できる技術であり、機械学習やディープラーニング(深層学習)といった手法があります。
 
機械学習では、例えば犬と猫の画像を大量に学習させ、人間が両者の違いや特徴を提示することで、AIがそれぞれを見分けられるようにすることができます。
 
一方、ディープラーニングは、医療画像から疾患を検出するといった画像認識や、会話内容を文字に変換する音声認識などが該当します。人間が指示を与えなくとも、AIが自動的に特徴を抽出するため、より複雑な判断ができるようになるとされています。
 
参考:AIってなに?|文部科学省
参考:人工知能(AI:エーアイ)のしくみ|総務省

 

1-1.身近なAI活用例

AIが活用されている身近な例として、以下のようなものがあります。

 

活用分野 概要
画像認識 写真や映像のデータに、何が写っているかを判断する技術です。医療では、レントゲンやCT画像から病気の兆候を見つけるのに使われます。
音声認識 人の話す言葉を聞き取って、コンピューターに認識させる技術です。スマートスピーカーによって指示を実行したり、会議の音声を自動で文字に起こしたりできます。
自然言語処理 人間の言葉(文章)を理解して、返事をしたり翻訳したりする技術です。チャットボットや翻訳アプリに使われています。
自動運転 車に搭載されたカメラが周囲の映像をもとに歩行者や信号を認識し、安全に運転する技術です。

 

1-2.AIで代替される仕事・されない仕事

世の中の仕事には、将来的にAIに代替されるものと、されないものがあると見込まれています。そのため、すべての仕事がAIに取られるわけではありません。また、AIは単に人の仕事を「代替」するだけでなく、「補完」する役割も果たすとされています。
 
定型的で繰り返しの多いデータ入力や検品などの作業は、AIに代替される可能性があるでしょう。一方、薬剤師のように専門知識や人との対話が求められる仕事は、AIの活用によって質の向上が期待されています。例えば、患者さんの対応や最終的な判断は薬剤師が行い、AIは処方監査や在庫管理などの補完に活用できます。
 
このように、「人にしかできないもの」はAIに代替されない仕事となるでしょう。今後は、AIを業務の補完として使いこなす力と人間的な対応力を身に付け、業務の質を高めることが求められます。
 
参考:世界経済の潮流 2024年 I 第1章 第1節 AIによる職業・タスクの補完と代替|内閣府

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2.AIによって薬剤師の仕事はなくなる?

薬剤師の仕事はAIによって一部効率化される可能性はありますが、すべてが代替されるわけではありません。むしろ、薬剤師は「AIの影響を受けつつも、人の果たすべき役割が大きい職業」として位置付けられています。
 
内閣府の「世界経済の潮流(2024年)」では、アメリカの職業分類データをもとに、各職業に対するAIの影響と補完性を示した分析データが紹介されています。その中で薬剤師は、「AIの影響が大きく、補完性が高い職業(事務的タスクのシェアが大きいものの、意思決定の重要性が高く、AI任せにすることが社会的に望ましくない職業)」に分類されています。
 
薬剤師は、AIによる支援を受けながらも、専門的判断や患者対応など人間にしかできない業務が多く残ると考えられるでしょう。
 
参考:世界経済の潮流 2024年 I 第1章 第1節 AIによる職業・タスクの補完と代替|内閣府
 
薬剤師がAIに代替されにくい理由としては、以下のようなことが挙げられます。

 

● 副作用、相互作用、服薬アドヒアランスなど、患者さんごとの状況に応じた判断が必要
● 医師への疑義照会や処方提案など、専門知識にもとづくコミュニケーションが求められる
● 在宅訪問や対面での服薬指導など、対人対応が中心の業務が多い

 

厚生労働省の資料「薬局薬剤師DXの推進について」でも、ICTを活用した対物業務の効率化や、重複投薬・併用禁忌のチェックの自動化などにより、薬剤師には服薬指導や患者さんのフォローアップなど対人業務に集中できる環境づくりが求められていることが示されています。そのため、現時点ではAIによって薬剤師の仕事がなくなる可能性は低いと考えられます。
 
参考:薬局薬剤師DXの推進について|厚生労働省

3.薬剤師の仕事内容とAIの活用例

薬剤師の主な業務には「調剤」「処方監査・調剤鑑査」「服薬指導」「薬歴管理」「事務作業」などがあり、それぞれの分野で業務効率化や安全性向上のためにAIを活用できる可能性があります。今後、AIは補完的な役割として、薬剤師の専門性を支える存在となるでしょう。

 

3-1.調剤

調剤はAI技術の導入が進んでおり、調剤ロボットや画像認識AIが実務をサポートできるようになっています。例えば、全自動でPTPシートを調剤する機械や、注射薬を混注するロボットなどがあり、薬剤師の確認作業を補完する役割を果たします。
 
調剤業務へのAI技術導入は、調剤ミスのリスクを低減できるだけでなく、作業時間の短縮や人手不足の緩和にもつながるでしょう。特に、複数の薬剤を一包化する場合や、複雑な処方内容に対応する際には、AIの支援によって業務の標準化と安全性の向上が期待されています。
 
今後は、AIによる調剤支援がより高度化し、薬剤師が対人業務や専門的判断に集中できる環境づくりがさらに進むでしょう。AI技術は、単なる自動化ではなく、薬剤師の専門性を生かすための「補完的なパートナー」として位置付けられています。

 

3-2.処方監査・調剤鑑査

処方監査では、処方内容の妥当性を確認し、相互作用や禁忌薬のチェックを行います。AIは患者さんの年齢や腎機能、既往歴などの情報をもとに、重複投与や併用禁忌のリスクを自動で検出し、薬剤師の判断をサポートすることが期待されています。将来的には、疑義照会の効率化や処方提案の補助にも活用が広がると考えられています。
 
また、調剤鑑査については、一包化の際に錠剤の形状や刻印をカメラで読み取り、種類を自動で判別できる機械が実用化されています。ピッキングした医薬品を装置に置くだけで、種類や数量をチェックする機械もあり、薬剤師の調剤鑑査ミスを防ぐのに役立つでしょう。

 

3-3.服薬指導

服薬指導は、患者さんから必要な情報を聞き取った上で、薬の効果や飲み方、注意点を説明する業務です。服薬指導関連のAIとしては、自然言語処理による説明文の生成が進んでおり、患者さんの理解度や言語背景に応じた柔軟な対応が可能になります。多言語対応AIを活用すれば、外国人患者さんへの支援も強化できるでしょう。
 
服薬指導や薬歴関連のソフトにおいても、AIを導入した製品が開発されています。AIが処方内容や薬歴を解析し、疾患を推測したり、指導内容を提案したりできるようになると、患者さんに必要な情報を伝えるためのツールとして活用できるでしょう。

 
🔽 服薬指導について解説した記事はこちら

 

3-4.薬歴管理

薬歴管理では、服用歴や副作用、アレルギー情報などを記録・管理し、継続的な薬学的管理を行います。薬歴管理はデータ管理のため、AIが得意とする分野です。処方薬に対して既往歴や副作用症状との関連性を分析するといったサポートが期待されます。また、服薬状況の予測やフォローアップ支援にも活用できるでしょう。
 
また、音声認識AIによる指導内容の自動記録ができるAIも開発されています。会話内容を自動入力できるため、薬歴の入力時間短縮につながるでしょう。

 
🔽 薬歴管理について解説した記事はこちら

 

3-5.事務作業

薬局での事務作業として、処方箋の入力やレセプト業務、在庫管理などが挙げられます。AIを活用して、OCRによる処方箋の読み取りや在庫の発注、期限管理などの業務時間を短縮することで、薬剤師としての専門性を生かせる業務に集中できるようになるでしょう。

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4.薬剤師がAIを活用するメリット

薬剤師がAIを活用することで、調剤・服薬指導・在庫管理などの業務が効率化され、ヒューマンエラーの防止や患者対応の質向上につながります。ここでは、薬剤師がAIを活用するメリットについてお伝えします。

 

4-1.業務の効率化

薬剤師がAIで調剤業務の一部を自動化することで、業務の効率化が図れます。例えば、処方箋の入力・監査をAIが補助することで、入力ミスや禁忌薬の組み合わせなどを自動で抽出できるでしょう。薬剤師は検出されたものを参考に、最終確認をすることで業務を効率化できます。
 
また、AIで在庫管理を最適化することも可能です。処方のトレンドや季節によって処方が増える薬剤をAIが分析し、発注タイミングや数量を自動的に提案できれば、棚卸や発注業務の負担が軽減されます。
 
さらに、受付業務をAI化することにより、来局前の事前受付や呼び出し通知が可能になります。薬局内で待つ患者さんの人数が減るため、感染症対策としても期待できるでしょう。

 

4-2.正確性と安全性の向上

AIが処方薬や服用薬の相互作用・過量投与などをリアルタイムでアラートすることで、見落としを防ぎ、医療安全を確保できます
 
また、患者さんの服薬履歴や検査データをAIが解析し、指導内容や確認ポイントを提示したり、膨大な薬歴データから副作用・相互作用を予測したりすることで、新人薬剤師でも質の高い服薬指導が可能になるでしょう。

 

4-3.多言語への対応

AIの自動翻訳機能を活用すると、外国人患者さんへの対応に不安のある薬剤師でも、安心して服薬指導ができるでしょう。
 
インバウンド対応や地域医療の質向上につながるため、患者満足度の向上が期待できます。

 
🔽 薬剤師に求められる英語力について解説した記事はこちら

 

4-4.薬剤師の専門性の強化

業務にAIを取り入れると、対物業務に割かれる時間が削減されるため、より対人業務に集中することが可能になります。
 
患者さんとのコミュニケーションや心理的ケアなど、AIでは代替できない領域の専門性に強化につながるでしょう。

5.薬剤師がAIを活用する上での注意点

薬剤師がAIを活用する際は、誤情報の生成や個人情報の漏洩リスクなどに十分注意しなければなりません。AIの提案を鵜呑みにせず、薬剤師としての目で確認することが必要です。ここでは、薬剤師がAIを活用する上での注意点についてお伝えします。

 

5-1.誤情報(ハルシネーション)の可能性

AIは誤情報(ハルシネーション)を生成することがあります。事実と異なる内容でも、もっともらしい自然な文章として出力するため、注意深く確認するという意識が持てないと、誤情報を事実と捉えてしまうかもしれません。
 
特に医療分野においては、AIが提示したものを鵜呑みにするのはとても危険なため、参考情報程度にとどめる意識が必要になります。

 

5-2.個人情報・機密情報の取り扱い

AIに個人情報を入力すると、出力を通じて漏洩するリスクがあります。そのため、患者さんの氏名や病歴、服用歴などを、プライバシー保護の体制が整っていないAIに直接入力することは避けた方がよいでしょう。
 
薬局内でAIを利用する場合は、ローカル環境での運用や匿名化処理など、情報管理のルールを明確にして、個人情報や機密情報が漏洩しないように準備する必要があります。

 

5-3.AIの出力を過信しない運用姿勢

AIはあくまで補助ツールであり、薬剤師の責任を代替するものではありません。そのため、出力内容の検証、複数情報源との照合、患者さんごとの状況判断などにおいて、薬剤師の介在が不可欠です。
 
総務省の「令和6年版 情報通信白書」でも「AIの出力が正しいかどうかを確認することが望ましい」と明記されています。医療現場でのAI活用では、検索や裏取りを併用して、リスク管理を徹底して運用することが重要です。
 
参考:令和6年版 情報通信白書 第I部 第4章 第1節 1 生成AIが抱える課題|総務省

6.AI時代の薬剤師に求められること

AI時代の薬剤師は、AIを適切に扱えるようITリテラシーを身に付け、AIが提示するデータを正しく活用できるようになる必要があります。ここでは、AI時代の薬剤師に求められることについてお伝えします。

 

6-1.薬局業務や役割の変化への対応

AI技術の進展により、薬局業務の多くが自動化・効率化されつつあります。調剤支援システムや在庫管理の自動化、服薬指導のデジタル化など、従来の「作業中心」の対物業務はAIに置き換えられるでしょう。
 
一方で、薬剤師にしかできない役割がより重要になります。例えば、患者さんの不安や生活背景に寄り添った服薬指導、副作用の兆候を察知する観察力、医師や看護師との連携によるチーム医療への貢献などです。
 
AIが業務の一部を担うことで、薬剤師はより専門性の高い領域に集中できるようになります。今後は「薬を渡す人」から「患者さんの生活を支える医療人」への転換が求められるでしょう。

 

6-2.ITリテラシーとデジタルスキルの習得

AI時代においては、ITスキルの有無が業務効率や患者対応の質に直結します。電子薬歴の操作や在庫管理、オンライン服薬指導などの業務にAIが導入されていく上で、薬剤師自身がシステムの基本操作を理解し、正しく活用できることが求められます。
 
例えば、AIが提示した服薬アドヒアランスの傾向をデータから読み取ったり、患者さんの服薬履歴をもとにAIが副作用リスクを予測したりする場面では、ITリテラシーが不可欠です。
 
また、AIツールの導入にあたっては、現場の薬剤師が運用ルールや安全性を理解し、患者さんに説明できることも求められるでしょう。AI時代の薬剤師は、デジタル技術を生かす専門職としての姿勢が問われます。

 

6-3.コミュニケーションスキルの強化

いくらAI技術が進化しても、薬剤師の「人間力」は代替されません。患者さんとの信頼関係を築くコミュニケーションスキル、複雑な症状や服薬状況を多面的に判断する力、そして医療倫理に基づいた意思決定力などは、AIが担うのは難しい領域のスキルです。
 
特に、高齢者や多剤併用患者さんへの対応では、生活背景や心理的要因を踏まえた支援が求められます。地域医療や在宅医療の現場では、薬剤師が医師・看護師・ケアマネジャーなどと連携し、患者さんのQOL向上に貢献する役割を担っています。
 
AI時代においても「この薬剤師に相談したい」と思われる存在になるには、専門知識だけでなく、コミュニケーションスキルや柔軟な対応力を磨くことが不可欠でしょう。技術と人間性の両輪で、薬剤師としての価値を高めていくことが求められます。

7.AI時代に活躍できる薬剤師になろう

AI技術の進化により、薬剤師の業務は大きく変化しつつあります。調剤や在庫管理の自動化が進む一方で、患者対応や医療チームとの連携など、薬剤師にしかできない役割がより重要になります。
 
今後、薬剤師には、医療人としての専門性だけでなく、コミュニケーションスキルや倫理的判断力などがより一層求められるでしょう。加えて、ITスキルやデータ活用力も不可欠です。専門性と人間力を磨きながら、AIを味方につけて、薬剤師としての価値を高めていきましょう。

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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。