薬剤師の接遇マナー・テクニック 更新日:2023.02.28公開日:2014.07.02 薬剤師の接遇マナー・テクニック
困ったときに薬(やく)立つ、薬剤師の接遇・マナー
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疑義照会で怒られた後、医師に連絡するのが怖い
疑義照会で怒られた後、医師に連絡するのが怖い

患者さんから処方せんをお預かりして内容を確認したところ、用量のことで少し疑問に感じる点がありました。そこで「用量が違うと思います」と医師に電話をかけたのですが、強い口調で怒られ電話を切られてしまいました。今後、この医師に疑義照会をするとまた怒られるのではないかと怖いです。

Answer
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疑義照会は簡潔にわかりやすく、丁寧な言葉遣いを心がける

このケースは、2通りの考え方ができると思います。
まず一つ。この質問の文面通りに受け答えをしたのであれば、「用量が違うと思います」という言い方に、問題があったのではないでしょうか。誰でも真正面から否定されると、思わずムッとしてしまうものです。もしかすると、医師はちゃんと指示をしたのに、事務の人が入力ミスをしたのかもしれません。にもかかわらず、「用量が違う」と指摘されれば、おもしろくないでしょう。
 
医師が上、薬剤師が下という立場の問題ではなく、コミュニケーションを円滑にするための社会人マナーとして、「同じお薬で前回は1日3回だったのですが、今回は1日2回に変更ということでよろしいでしょうか?」のように、間違っていると決めつけずに、処方せんの内容を確認する形で会話をすべきです。
 
もちろん、医師が電話に出たときは、「お忙しいところ申し訳ありません」と感謝の意を述べることを忘れずに。また、丁寧なのはいいのですが、あまりにも回りくどくだらだらと話をするのもNGです。診察中の医師は忙しいので、簡潔にわかりやすく伝えられるよう、電話をかける前に要点を整理しておきましょう。
 
► 【関連記事】薬剤師が疑義照会をする上で知っておきたいポイントは?

「たまたま機嫌が悪かっただけ」と思えるプラス思考も必要

もう一つの可能性として考えたいのは、怒られたのはたまたま機嫌が悪かっただけということです。診察が立て込んで、かなりバタバタしているところに、看護師さんが電話を取り次いでくれた。あるいは朝、家庭で親子喧嘩をしてしまったという事情があるのかもしれません。「プロなんだから仕事とプライベートは切り離すべき」と口で言うのは簡単です。しかし医師もひとりの人間です。体調や気持ちが、仕事現場でも顔や口調に思わず出てしまったということは、誰でも経験があるはずです。
 
ですから、1度や2度の疑義照会で対応が冷たかったからといって、落ち込むことはありません。「自分が疑義照会したせいで怒らせてしまった」と考えるのではなく、少し柔軟性をもたせて「病院が混んでいるのかな」、「今日はたまたま機嫌が悪いのかな」と考えてみることも時には必要です。
 
もちろん、なんでもかんでも「私のせいじゃない」と流してしまうのも問題ですが、1、2回対応が怖かったからといって、「この先生は怖いから疑義照会はしたくない」と委縮してしまうようでは、薬剤師としてちょっと頼りないですね。
 
また、あるアンケート調査では、「よく疑義照会や質問をしてくる薬局はむしろ信頼できる」と答えた医師の数は、89.1%にものぼったそうです。疑義照会は薬剤師の大切な仕事。患者さんの命や健康問題を預かる立場として、万が一のミスを防ぐためにも、自信を持って行ってください。
 
► 【こんなときはどうする?】医師が疑義照会に応じてくれないときは
言い方一つで印象は大きく変わる。クッション言葉を上手に使って、スムーズな疑義照会を!
言い方一つで印象は大きく変わる。クッション言葉を上手に使って、スムーズな疑義照会を!

村尾 孝子
村尾 孝子(むらお たかこ)
薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
株式会社スマイル・ガーデン : http://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: http://smilegrdn.exblog.jp/
薬剤師さんからの質問大募集!村尾孝子先生が、あなたの質問にお答えします
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