第88回 木村 百合先生
誤解を生むような表現によって、商品を手にする人が困らないように
医薬品等適正広告基準が改正され、平成29年9月29日に施行されました。
これを受け、医薬品のことを表現する際に大きく変わったポイントが4つあります。
1医薬品の効能・効果が1つでも表示可
これまで、医薬品の効能・効果を表示する場合は、2つ以上を表示する必要がありました。
たとえば、「頭痛・腰痛・関節痛・生理痛に○○○」といった具合です。しかし、1つのみの効能・効果での表示(例:頭痛に○○○)でも、消費者に不利益を与えるものではないとの観点から、今回の改正から1つのみの効能・効果での表示が可能となりました。
2特定の年齢別の使用表現が可能に
これまで、適用年齢や性別に制限がある場合以外は、特定の年齢や性別のみに使用されるような広告は不可となっていました。
今回の改正では、これらの表現が消費者に不利益を与えるものでは無いという観点から、他社誹謗や優位性の強調とならない範囲において使用が可能となりました。
ただし、「小児専門薬」、「婦人専門薬」については、承認名称の場合、および「小児用」、「婦人用」の用法・用量から判断できる場合のみ年齢別の使用表現が可能です。
3医薬品の使用前後の写真やイラストは使用可
これまで、医薬品使用前後の写真・イラストの使用は、医薬品の効能・効果または安全性の保証表現となるということで、不可とされていました。
今回の改正では、「承認された以外の効能・効果を想起させるもの」「効果発現までの時間や効果持続時間の保証となるもの」「安全性の保証表現となるもの」にあたらない限り、使用前後の写真やイラストの使用が可能となりました。
4「売上ナンバーワン」の表現は使用不可
医薬品の場合、売上ナンバーワンの医薬品が、消費者にとって、最も良い製品であるとは限りません。医薬品を選択するにあたって、こうした表記は誤った判断に至らせる可能性がある広告表現ということで、今回の改正より使用が不可となりました。
対象となるのは「医薬品」、新たに医薬部外品に移行した「新指定医薬部外品」(新範囲を含む)、「医療機器」、「再生医療等製品」です。
薬局にも、ドラッグストアにも消費者が選ぶのに迷ってしまうくらい、多くの商品が並んでいます。
自分が求める効能を得られる商品がどれなのか、正しく選ぶのは難しく、商品の説明をお客さまから求められることがあると思います。そのとき気をつけたいのは口頭での説明。これも、薬機法および景品表示法の規制の対象になるので、公正で真摯な商品説明をすることが大切です。
また、いつ相談を受けてもより適切な説明ができるよう、どの商品にどのような成分が含まれているのか。それぞれの商品にはどのような特徴があるのかを、「薬剤師」という専門家のフィルターを通して理解し、お客さまに伝えられるようにしておけると良いですね。
それを続けていれば、お客さま自身にも、知識が積み重なっていき、誇大広告に惑わされず、商品を選ぶ選別眼を養うことにもつながっていくかもしれません。
薬科大学卒業後、化粧品会社に入社。20年間にわたり、化粧品原料および化粧品の品質管理、薬事業務、化粧品開発、安全性試験に従事。退職後韓国系化粧品会社に入社し、品質保証マネージャー、総括製造販売責任者として、輸入化粧品の薬事・品質管理業務に携わる。同社退職後、株式会社ミナモを設立し、現在に至る。