第65回 阿部翔太 先生
日々の発注業務、月末の在庫調整、年に数回の棚卸しなどの医薬品の在庫管理。
不足薬がないように調整すると在庫金額がふくらんで本社から注意を受けてしまったり、逆に在庫を絞ったら不足薬が出て、患者さんに迷惑をかけてしまったり……。誰もが一度はこのような経験をしたことがあるのではないでしょうか。
不足にも過剰にもなり過ぎない医薬品の在庫の調整はどのように行えばいいのでしょうか。
今回は、医薬品在庫管理のコツについて阿部翔太先生にお話をうかがいました。
店舗のメンバーに任せて在庫管理をしてもらっていますが、どうもうまくいきません。どうしたらいいのでしょうか。
複数の店舗を経営している薬局では、現場の各担当者に任せて店舗間で不動在庫のやりとりを促していることが多いのではないでしょうか。
ところが、店舗から提出してもらっている月次の在庫リストを見てみると、「○○店ではどうみても不動在庫である医薬品Aが、不動在庫の店舗間移動リストに出ていない」「△△店でよく調剤されている医薬品B。あと3ヵ月ほどで消化できそうなのに、他店舗から引き取る様子がみられない」など、店舗間での在庫のやりとりがうまくいっていない場面に遭遇することはありませんか?
店舗間での薬のやりとりは、本部が主導して行う方がうまく機能します。
たとえば不動在庫を本部で一旦すべて回収し、使用頻度の高い店舗へ必要な薬を割り振ったり、本部で集約している店舗の在庫データと卸のデータを突き合わせて返品を促すなど、現場ではわかりにくい部分を俯瞰できるためです。
細かな業務ですが、こうした対処をすることで、資金繰りを圧迫していた在庫をすっきりと整理できる可能性があります。
現場での在庫管理がうまくいかない理由の一つに、「調剤・投薬などの業務が忙しく、在庫管理に時間を割ける現場のメンバーがいない」ことが挙げられます。
店舗での発注業務にかかる時間は、一月当たりどのくらいかを現場のメンバーに聞き、それにかかる人件費を算出してみてください。もし「人件費>システム導入・運営費」だったら、在庫管理業務の負担を減らすためのシステムの導入を検討することも必要です。
また、不動在庫を店舗間でやりくりをしても廃棄するしかない医薬品が出てきてしまった場合には、法人間で不動在庫を融通し合うサービスもあります。販売価格が仕入れ値を下回る可能性もありますが、廃棄するよりはいいと考える場合には、少しでも損失を抑える手段としてこうしたサービスの利用も念頭に置いておくといいでしょう。
薬局を3店舗経営するほか、不動医薬品販売サイト「エコ薬」の運営などを手がける。