第62回 阿部翔太 先生
日々の発注業務、月末の在庫調整、年に数回の棚卸しなどの医薬品の在庫管理。
不足薬がないように調整すると在庫金額がふくらんで本社から注意を受けてしまったり、逆に在庫を絞ったら不足薬が出て、患者さんに迷惑をかけてしまったり……。誰もが一度はこのような経験をしたことがあるのではないでしょうか。
不足にも過剰にもなり過ぎない医薬品の在庫の調整はどのように行えばいいのでしょうか。
今回は、医薬品在庫管理のコツについて阿部翔太先生にお話をうかがいました。
「不動在庫」とは今後調剤される見込みがなく、薬局の資金繰りを圧迫している在庫のことをいいます。
薬局における不動在庫には、
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①使用期限が迫っているもの
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②長期間調剤されていないもの
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③その他のもの(例:帰省時にたまたま来局した患者さんの薬で、今後処方される見込みがない、など)
などがありますが、自分が勤務する薬局の不動在庫はどのように定義されているか、把握できていますか?
例えば①の場合。「使用期限が迫っている」とは1年を切った場合を指すのか、それとも半年を指すのか。②は3ヵ月間処方されていない医薬品なのか、棚卸しのたびに確認するのか。その定義は、勤務する薬局によって異なります。
適正に在庫管理をするためには、不動在庫の整理が欠かせません。
まずは自分が勤務する薬局ではどのような薬を不動在庫とするのか、不動在庫の定義を確認しましょう。定義ができたら、それを薬局メンバー全員へ共有します。
「あの薬、最近動いていないかも……」「この薬を持っていく患者さん、最近来局していないな」と日常業務の中で感じることはありませんか。この“感覚”を目に見える形で管理することで、不動在庫を減らすことができます。
ここで、前回ご紹介した“特定の患者さん”のリストや発注ノートを活用しましょう。“特定の患者さん”のため、リストやノートを活用して薬を発注したら、次は実際に患者さんが来局したときにチェックをつけるようにしておきます。
そして毎月、月末など時期を決めてリストやノートの見直しを行います。来局しなかった患者さんがいたら、来局しなかったのは今月だけなのか、もしくはずっと来局していないのかを遡って確認しましょう。
「○ヵ月以上チェックがついていない期間(患者さんが来局していない期間)があったら、不動在庫として返品処理をする」など、処理のタイミングを薬局で決めておきます。
“特定の患者さん”の薬はコンスタントに動く医薬品と一緒に保管していると、不動在庫になっていることに気づきにくくなります。こうした薬は箱などを用意して他の薬とは別に保管したり、予製にするなどしておくと、管理しやすくなります。
薬局を3店舗経営するほか、不動医薬品販売サイト「エコ薬」の運営などを手がける。