薬剤師のスキルアップ 公開日:2025.10.02 薬剤師のスキルアップ

20代薬剤師の平均年収はいくら?男女別のデータや年収アップの方法を紹介

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

20代薬剤師の年収は、職場や地域によって相場が異なります。そのため、年収アップを目指すなら、就職先や働くエリアを見直すのも選択肢の一つです。本記事では、20代薬剤師の平均年収について、職場別、都道府県別のデータなどを紹介するとともに、年収アップのコツや、20代薬剤師が考えたい「納得できる年収」のポイントについてお伝えします。

1.20代薬剤師の平均年収

厚生労働省が公表している「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、20代前半の薬剤師の平均年収は約400万円、20代後半の薬剤師の平均年収は約500万円となっています。
 
ここでは、年齢別の薬剤師の平均年収について詳しく見ていきましょう。

 

1-1.20代前半の平均年収

「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、20代前半の薬剤師の平均年収は399万9,000円です。

 

■20歳~24歳の薬剤師の平均年収
性別 月収 賞与・ボーナス 年収
男女計 33万2,300円 1万1,400円 399万9,000円
男性 34万3,700円 1万3,100円 413万7,500円
女性 31万8,800円 9,500円 383万5,100円

※月収は「きまって支給する現金給与額」、賞与・ボーナスは「年間賞与その他特別給与額」、年収は「きまって支給する現金給与額」×12カ月+「年間賞与その他特別給与額」で算出しています。

参考:令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種(表番号5、7)|政府統計の総合窓口 e-Stat

 

20代前半の薬剤師の平均年収と比較すると、男性薬剤師の平均年収は全体より高く、女性薬剤師は低くなっていることが分かります。

 

1-2.20代後半の平均年収

同じく「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、20代後半の薬剤師の平均年収は500万9,700円です。

 

■25~29歳の薬剤師の平均年収
性別 月収 賞与・ボーナス 年収
男女計 36万7,900円 59万4,900円 500万9,700円
男性 37万3,500円 63万6,300円 511万8,300円
女性 36万4,700円 57万1,200円 494万7,600円

※月収は「きまって支給する現金給与額」、賞与・ボーナスは「年間賞与その他特別給与額」、年収は「きまって支給する現金給与額」×12カ月+「年間賞与その他特別給与額」で算出しています。

参考:令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種(表番号5、7)|政府統計の総合窓口 e-Stat

 

20代後半の薬剤師についても、男性薬剤師の平均年収は全体の平均より高く、女性薬剤師は下回る結果となっています。
 
一方で、20代前半と比較すると、20代後半の薬剤師の平均年収は男女ともに約100万円増加しており、年齢が上がるにつれて収入が大きく伸びる傾向が見られます。

 
🔽 薬剤師の平均年収について解説した記事はこちら

2.職場別の20代薬剤師の平均年収

文部科学省の資料によると、2019年3月に6年制薬学部を卒業した薬剤師の初任給は、以下がボリュームゾーンとされています。

 

■職場別の薬剤師の初任給(最も割合の高い金額区分)と年収の目安
職場 初任給の目安 年収の目安
薬局 26万円超~30万円 312万円超~360万円
ドラッグストア 30万円超 360万円超
病院・診療所 22万円超~26万円 264万円超~312万円

※年収は初任給×12カ月で、賞与等は考慮せずに算出しています。

参考:薬学系人材養成の在り方に関する検討会(第2回)参考資料4 薬学教育関連資料|文部科学省

 

また、厚生労働省の職業情報提供サイトjob tagによると、20代前半の「医療情報担当者(MR)」「医薬品製造」「臨床開発モニター」の平均年収は、以下のとおりです。

 

■企業薬剤師の職種別初任給と平均年収の目安(20歳~24歳)
職種 初任給の目安 年収の目安
医療情報担当者(MR) 29万5,400円 376万3,900円
医薬品製造 23万7,000円 388万1,300円
臨床開発モニター 26万300円 310万5,200円

※初任給は「経験年数別の所定内給与額(0年目)」、年収は「年齢別の年収(20歳~24歳)」を参照しています。

参考:厚生労働省職業情報提供サイト(job tag)

 

上記は薬剤師資格保有者以外も含むデータではあるものの、職場や職種によって年収の相場は異なることが分かります。

 
🔽 薬剤師の初任給について解説した記事はこちら

3.20代薬剤師の平均年収は都道府県によっても異なる

一般的に、都心で勤務する方が平均年収は高いイメージがあるかもしれませんが、薬剤師の場合、そうとは限りません。薬剤師の平均年齢が高い地域や、人員が不足していて薬剤師の需要が高い地域の方が、年収が高くなることがあります
 
厚生労働省の「令和6年度賃金構造基本統計調査」では、都道府県別の薬剤師の平均年収が公表されています。平均年収が高い順のランキングは、以下のとおりです。

 

■薬剤師の都道府県別平均年収ランキング
順位 都道府県 平均年収
1位 熊本県 761万8,400円
2位 広島県 715万7,200円
3位 山口県 687万9,400円
     
45位 北海道 528万6,200円
46位 岡山県 513万5,500円
47位 宮崎県 510万9,900円

※年収は同調査における「きまって支給する現金給与額」×12カ月+「年間賞与その他特別給与額」で算出しています。

参考:令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 都道府県別(表番号3)|政府統計の総合窓口 e-Stat

 

同調査によると、東京都の平均年収は第23位で609万2,500円、大阪府は第36位で569万7,800円でした。1位の熊本県と47位の宮崎県では、250万円ほどの差があります。そのため、20代薬剤師の平均年収も、働くエリアによってばらつく可能性があるといえます。

4.20代薬剤師が年収アップを目指す方法

20代の薬剤師が年収アップを実現するには、スキルアップや経験の積み重ねが欠かせません。中でも資格の取得や管理職の経験は、年収アップにつながりやすいでしょう。
 
ここでは、20代薬剤師が年収アップを目指す方法についてお伝えします。

 

4-1.資格取得や勉強会への参加などでスキルを磨く

薬剤師は日々学び続けることを求められる職業です。自己研鑽の証明にもなる認定資格を取得することは、スキルの証明だけでなく年収アップの面でもプラスに働く可能性があります。
 
認定資格の種類は、研修認定薬剤師のように幅広い知識を学べるものから、妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師腎臓病薬物療法認定薬剤師といった専門性が高いものまで多岐にわたります。
 
こうした認定資格はかかりつけ薬剤師の要件でもあるため、将来的な年収アップやキャリアの幅を広げる際の強みとなるでしょう。

 
🔽 認定薬剤師の種類について紹介した記事はこちら

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4-2.管理職の経験を積む

管理職の経験を積むことも、年収アップにつながります。管理薬剤師になるには一定の実務経験が求められるため、20代のうちにチャンスが訪れるとは限りませんが、管理薬剤師を目指せる機会があれば、積極的に挑戦してみるとよいでしょう。
 
管理薬剤師と薬局長を兼務する場合は、仕事内容がハードになりがちですが、手当による年収アップだけでなく、キャリアアップの道も広がります。そこで得た経験は、転職をする際も有利に働くでしょう。

 
🔽 管理薬剤師について解説した記事はこちら

 

4-3.副業で収入を得る

20代薬剤師が収入を増やすための副業には、さまざまな選択肢があります。医療系ライティングやSNSでの情報発信など専門知識を生かす方法のほかに、投資信託や株式投資などの資産運用、健康講座や学生指導などスキルシェア型の活動によっても収入アップを目指せます。
 
自分が興味のある分野や得意分野に合わせて副業を選ぶことで、無理なく継続できるでしょう。将来的な収入基盤の獲得にもつながるかもしれません。

 
🔽 薬剤師の副業について紹介した記事はこちら

 

4-4.転職も視野に入れる

現在の職場ではスキルアップや資格取得のためのモチベーションが保てなかったり、管理職の枠に空きがなく経験を積むのが難しかったりする場合もあるでしょう。現職で状況を変えられないのであれば、思い切って転職するのも一つの方法です。
 
例えば、資格取得による手当が充実している職場に転職することで、モチベーションも向上し、年収アップとキャリアアップが同時に果たせるかもしれません。ある程度の経験があれば、管理職に就くことを目的に転職できる可能性もあるでしょう。今後の働き方も考慮しながら、転職を視野に入れてみましょう。

5.20代の薬剤師が考えたい「納得できる年収」のポイント

現在の薬剤師としての年収に納得できないこともあるでしょう。年収アップを目指すなら、転職も選択肢の一つですが、年収アップだけを目的に転職をしても、理想を実現するのは難しいかもしれません。
 
スキルや経験を積みやすい環境であったり、ライフステージの変化に対応しやすい職場であったりすることも、働く上で重要なポイントとなります。

 

5-1.20代は年収アップのための準備期間

大学を卒業してから間もない20代のうちは、将来的に年収アップを実現するための準備期間ともいえます。経験が浅いまま、理想の年収を目指すのは難しいものです。
 
20代は、患者さんと接しながら知識と経験を積んでいく期間でもあります。認定薬剤師や専門薬剤師といった専門性の高い資格取得を含め、高度なスキルを習得していくことが、将来的な年収アップにつながります

 

5-2.結婚や出産などライフステージに合わせた働き方を考えることも大切

基本給が高い職場であっても、産休・育休などの制度が充実していなかったり、制度はあっても取得実績がなかったりすれば、将来働きづらさを感じる可能性があります。20代のうちに、ライフステージの変化も見越して、キャリアを継続できる働き方を考えてみましょう
 
目先の年収にとらわれず、ライフステージが変わっても働き続けられる職場環境かを判断することも大切です。今は「年収が低い」と感じていても、将来的に満足度が高くなる場合もあります。

 

5-3.働きやすさを考慮する

20代の薬剤師の職場選びでは、年収だけではなく、職場環境も含めて総合的に考えることが大切です。業務量と給料が見合っていなかったり、勤務時間が長かったり、休暇の調整がしづらかったりすると、年収が高くても満足度が下がることがあります。
 
ワークライフバランスのほか、スキルアップできる環境であることや、頼りになる同僚や上司がいることも働きやすさにつながります。年収には表れない要素も考慮した上で、現在の働き方を総合的に評価してみましょう。

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6.20代の薬剤師として納得できる年収を目指そう

薬剤師の年収相場は地域や職場によって異なります。特に20代の薬剤師は、管理職経験や資格取得の有無によって、同期の年収と差が出るケースもあります。思い通りに年収アップを実現できず、焦ることがあるかもしれませんが、年収への満足度はその金額だけではなく、職場の環境や働き方とのバランスによって決まるといえます。20代の薬剤師は今後を見据えて自己研鑽を続けながら、納得できる働き方と年収を目指すとよいでしょう。

 
🔽 年代別の薬剤師の平均年収を紹介した記事はこちら



 
🔽 20代の薬剤師の転職について解説した記事はこちら


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。