- 1. 20代の薬剤師が持ちやすい年収にまつわる不安や不満
- 1-1. 年収優先で就職したためにやりがいを見出せない
- 1-2. 年収アップが見込めない職場だった
- 2. 20代の薬剤師の年収はどれくらい?
- 2-1. 20代前半の薬剤師の年収は?
- 2-2. 20代後半の薬剤師の年収は?
- 3. 働く地域や職場によって薬剤師の年収は変わる
- 3-1. 地域ごとの年収差
- 3-2. 職場ごとの年収
- 4. 20代の薬剤師が考えたい「納得できる年収」のポイント
- 4-1. 20代は年収アップのための準備期間
- 4-2. 結婚や出産などライフステージに合わせた働き方を考えることも大切
- 4-3. 働きやすさを考慮する
- 5. 20代の薬剤師が年収を上げるコツ
- 5-1. 資格取得やスキルアップ
- 5-2. 管理職の経験をもつ
- 5-3. 転職も視野に入れる
- 6. 20代の薬剤師として納得できる年収を目指そう
1. 20代の薬剤師が持ちやすい年収にまつわる不安や不満
まずは、20代の薬剤師が年収に対して抱きやすい不安や不満の例を見てみましょう。
1-1. 年収優先で就職したためにやりがいを見出せない
奨学金の返済や実家への仕送りを考えている場合、年収の高さを優先して就職先を選ぶことがあります。年収だけにこだわって就職先を決めてしまうと、実際に働き出した時にやりがいを感じられないことがあるでしょう。「患者さん一人ひとりに丁寧な服薬指導を行いたい」「認定薬剤師や専門薬剤師などの資格取得のために勉強したい」など、自分にとって価値のあることを仕事で実現できないと、やりがいを感じることができず年収優先で就職してしまったことを後悔することがあるかもしれません。
1-2. 年収アップが見込めない職場だった
一般的に、毎年昇給します。しかし、定期昇給制度があっても、年に一度の昇給はほんのわずか、というケースも多いでしょう。がんばりが反映されず、大きな収入アップにつながらなければ、不満に感じてしまうかもしれません。管理職やチームの責任者を務めたり、資格を取得したりして収入アップを目指したとしても、管理職の枠が埋まっていたり、資格手当がなかったりすることもあります。昇給しにくい環境にいると、このままでよいのかと悩むことがあるでしょう。
2. 20代の薬剤師の年収はどれくらい?
年収にまつわる悩みを解消するためにも、まずは自身の年収額が平均と比べて、高いのか低いのかを確認してみましょう。ここでは、厚生労働省が公表している「令和元年賃金構造基本統計調査」のデータをもとに、薬剤師と職業全体(正社員・正職員)の20代の平均年収を比較し表にまとめました。
2-1. 20代前半の薬剤師の年収は?
20代前半の薬剤師の平均年収は、男性が336.2万円。女性が391.0万円となっています。職業全体(正社員・正職員)における20代前半の平均年収は、男性が346.3万円、女性が315.5万円でした。女性薬剤師の場合は、職業全体の平均年収と比較して約80万円高い年収を得ていることがわかります。一方で男性薬剤師は職業全体の平均年収よりも10万円ほど低いことがわかります。これは、薬剤師が社会人として働き始める年齢が比較的遅いために、集計対象数自体が少ないことが影響しているかもしれません。
■20代前半の薬剤師の平均年収と職業全体の平均年収
※「所定内給与額」とは、6月分として現金給与額(控除前)から超過労働給与額(時間外勤務手当等)のこと。
※年収は同調査における「きまって支給する現金給与額」×12カ月+「その他特別給与額」で算出しています。
2-2. 20代後半の薬剤師の年収は?
厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」によると、20代後半の薬剤師の平均年収は男性が496.3万円、女性が464.1万円です。20代後半になると、勤続年数にともない昇給することに加え、薬剤師の場合は管理薬剤師や薬局長を務める人も増えることから、平均年収が上がっていると推測されます。20代後半の職業全体の平均年収と比較すると、薬剤師の年収は職業全体と比較して50~80万円前後高いことがわかります。
■20代後半の薬剤師の平均年収と職業全体の平均年収
※「所定内給与額」とは、6月分として現金給与額(控除前)から超過労働給与額(時間外勤務手当等)のこと。
※年収は同調査における「きまって支給する現金給与額」×12カ月+「その他特別給与額」で算出しています。
3. 働く地域や職場によって薬剤師の年収は変わる
薬剤師の年収は地域や職場によっても変わります。地域ごと、職場ごとの年収事情を見ていきましょう。
3-1. 地域ごとの年収差
一般的に、都心で勤務するほうが平均年収は高いイメージがあるかもしれませんが、薬剤師の場合そうとはかぎりません。需要と供給のバランスの関係もあり、薬剤師が不足している地域のほうが、年収が高くなることがあります。「年収が低い」と悩んでいる人の勤務地域の平均年収自体が、平均と比較して低い傾向にある可能性もあるでしょう。
厚生労働省「令和2年度賃金構造基本統計調査」をもとに都道府県別に薬剤師の平均年収を見てみると、1位は静岡県の698.6万円、次いで2位が長野県の689.5万円、3位が高知県の642.6万円です。一方、ワースト1位は長崎県の428.2万円、次いでワースト2位は徳島県の444.0万円、ワースト3位は新潟県の447.1万円となっています。
■都道府県別平均年収トップ3とワースト3
※カッコ内は調査対象の平均年齢
※年収は同調査における「きまって支給する現金給与額」×12カ月+「その他特別給与額」で算出しています。
同調査の薬剤師全体の平均年収は548.3万円なので、1位の静岡県とも最下位の長崎県ともそれぞれ100万円近くの差があり、地域ごとの年収格差は大きいといえます。現在の年収が「低い」と感じているのであれば、まずは自身が勤務する地域の平均年収を調べてみて相場を確かめてみてはいかがでしょうか。
3-2.職場ごとの年収
薬剤師が働く職場には、病院や調剤薬局などがあります。マイナビ薬剤師が行った年収と満足度に関する調査によると、病院薬剤師の平均年収は521.7万円、調剤薬局の平均年収は583.8万円で、一人薬剤師の調剤薬局では、年収が600万円を超えることもあるようです。
調剤薬局に勤務する薬剤師の満足度に関する調査によると、「とても満足」と回答したグループの平均年収と「とても不満」と回答したグループの平均年収では、141.8万円の差がありました。また平均年収が低い病院薬剤師は、年収について「とても満足」と答えた人がいなかったことから、年収額が職場への満足度に影響していると考えられます。
一方で、「有給休暇が希望通りにとれるから(給料が少なめでも気にならない)」としている薬剤師もいることから、年収よりも福利厚生や職場環境に魅力を感じている人もいることがわかります。
4. 20代の薬剤師が考えたい「納得できる年収」のポイント
年収が低いと悩んでいる20代の薬剤師のなかには、年収アップを目指して転職を考える人もいるでしょう。しかし、転職活動をする前に、今の状況に本当に不満があるのか、もう一度考えてみましょう。ライフステージや職場環境をふまえて「納得できる年収」にするためのポイントをまとめました。
4-1. 20代は年収アップのための準備期間
大学を卒業して数年しか経っていない20代は、将来的に年収アップを実現するための準備期間ともいえます。経験が浅いまま、理想の年収を目指すのは難しいものです。まずは、さまざまな疾患の処方に触れ、処方意図を学び、患者さんと接しながら知識と経験を積む時間ととらえてみましょう。また、ガイドラインや新薬、保険制度などを勉強することで幅広い知見が得られます。自分が興味を持てる分野が見つかれば、認定薬剤師や専門薬剤師など専門性の高い資格取得を目指すこともあるかもしれません。高度なスキルがあれば、将来的な年収アップを目指せます。
20代のうちに、管理薬剤師や薬局長を務める機会があれば、役職手当による年収アップも見込めます。そうした資格の取得や管理職の経験があれば、転職を検討する時のアドバンテージにもなるでしょう。20代は周りからフォローしてもらえる貴重な時期です。失敗を恐れず、さまざまな経験をしましょう。
4-2. 結婚や出産などライフステージに合わせた働き方を考えることも大切
基本給が高い職場であっても、産休・育休制度が充実していなかったり、あっても取得実績がなかったりすれば、将来働きづらさを感じてしまう可能性があります。20代のうちに、将来のライフステージを見越して、キャリアを継続できる働き方を考えてみましょう。女性は結婚や出産などをきっかけに働き方を見直さなければいけない可能性があります。目の前の年収にとらわれず、ライフステージが変わっても働ける職場環境かどうかを判断することが大切です。今は「年収が低い」と感じていても、将来的に満足度が高くなる場合もあります。
4-3. 働きやすさを考慮する
20代の薬剤師は、年収だけを見るのではなく、職場環境も含めて総合的に考えることが大切です。業務量と給料が見合ってなかったり、拘束時間が長かったり、有給休暇が取りづらかったりすると、年収が高くても満足度が下がることがあります。ワークライフバランスのほか、スキルアップできる環境であることや、頼りになる同僚や上司がいることも働きやすさにつながります。年収には表れない環境も考慮したうえで、現在の年収を評価してみましょう。
5. 20代の薬剤師が年収を上げるコツ
20代の薬剤師が年収アップするコツは、スキルアップや経験値を上げることに尽きます。なかでも資格の取得や管理職の経験は効果的です。
5-1. 資格取得やスキルアップ
薬剤師は日々学び続けることを求められる職業です。日々の研鑽の証明にもなる認定薬剤師などの資格取得は年収アップにも効果的に働くでしょう。認定薬剤師は、一定期間に決められた単位数を取得することで認定されます。
認定薬剤師の種類は、研修認定薬剤師のように幅広い知識を学べるものから、妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師、腎臓病薬物療法認定薬剤師といった専門性が高いものまで多岐にわたります。こうした資格はかかりつけ薬剤師になるための要件にもなるため、年収アップも考えて資格取得を目指すとよいでしょう。
5-2. 管理職の経験をもつ
管理職の経験をもつことも、年収アップにつながります。一般的には、実務を3年以上経験してから管理薬剤師を務めるケースが多く、早ければ27歳頃にはチャンスが訪れます。
管理薬剤師を目指せる機会があれば、積極的に受けるとよいでしょう。管理薬剤師と薬局長を兼務することもあり、仕事内容はハードですが、手当による年収アップだけでなく、キャリアアップの道も広がります。また、積んだ経験は、転職をする際も有利に働くことでしょう。ただし、かかりつけ薬局の管理薬剤師を目指す場合には5年以上の実務経験が必須です。
5-3. 転職も視野に入れる
今の職場ではスキルアップや資格取得のためのモチベーションが保てなかったり、管理職の枠に空きがなく経験できそうになかったりする場合もあるでしょう。現職で状況を変えられないのであれば、思い切って転職するのも一つの方法です。
例えば、資格取得による手当があつい職場に転職することで、モチベーション向上になり、年収アップとキャリアアップが同時に果たせるかもしれません。ある程度の経験があれば、管理職に就くことを目的に転職できる可能性もあるでしょう。今後の働き方も考慮しながら、転職を視野に入れてみましょう。
6. 20代の薬剤師として納得できる年収を目指そう
薬剤師の年収は地域や職場によって異なります。特に20代の薬剤師は、管理職や資格取得の有無によって同期の年収と差が出やすいものです。平均年収を知って焦ることがあるかもしれませんが、年収への満足度はその金額だけではなく、職場の環境やライフステージによって捉え方が異なります。20代の薬剤師は今後を見据えて、納得できる働き方と年収を目指すとよいでしょう。
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🔽20代の薬剤師の転職について解説した記事はこちら
執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)
薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
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