薬剤師のスキルアップ 更新日:2024.04.05公開日:2023.12.22 薬剤師のスキルアップ

薬剤師の平均時給はいくら?パート・アルバイトや正社員の相場を紹介

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

薬剤師の平均時給は、企業の規模や地域、年齢などによって異なり、フルタイム勤務、短時間勤務によっても違いがあります。今回は、フルタイムで働く薬剤師の平均時給について、企業規模別、地域別、年齢別に紹介するとともに、短時間勤務の薬剤師の企業規模別平均時給の目安をお伝えします。加えて、パート・アルバイトの薬剤師が時給を上げる方法や「103万円」「106万円」「130万円」「150万円」の壁について解説し、時給で働く薬剤師、派遣薬剤師、正社員薬剤師のメリットとデメリットもお伝えします。

1.薬剤師の平均時給

まずは、薬剤師の平均時給の目安を見てみましょう。厚生労働省が公開している「令和5年(2023年)度賃金構造基本統計調査」の結果をもとに、正社員などのフルタイムで働く薬剤師と、パートやアルバイトなどの短時間労働をする薬剤師、それぞれの平均時給を算出しました。

 

1-1.フルタイムで働く薬剤師の平均時給

「賃金構造基本統計調査」によると、フルタイムで働く薬剤師の平均時給は2,355.8円です。この金額は同調査における「1時間当たり所定内給与額」と同様、「所定内給与額」を「所定内実労働時間数」で割ったもので、賞与や残業手当などは含めずに計算しています。
 
参照:賃金構造基本統計調査 調査の概要|厚生労働省
 
なお、企業規模、都道府県、年齢などによっても金額が異なります。企業規模別の平均時給は以下のとおりです。

 

【企業規模別】フルタイムで働く薬剤師の平均時給
企業規模
※10人以上
平均時給 所定内
給与額
所定内
実労働時間
全体 2,355.8円 38万8,700円 165時間
10~99人 2,837.8円 46万5,400円 164時間
100~999人 2,253.6円 37万4,100円 166時間
1,000人以上 2,181.8円 36万円 165時間

※平均時給=「所定内給与額」÷「所定内実労働時間数」、小数点第二位以下四捨五入
(厚生労働省「令和5年(2023年)度賃金構造基本統計調査」をもとに作成)

 

企業規模別では、10人以上99人以下の中小企業が、平均時給・所定内給与額ともに最も高い結果になっています。企業規模1,000人以上の企業は、平均時給が他の企業規模と比べて低いものの、「年間賞与その他特別給与額」は85万8,800円と最も高く、ボーナスによる年収アップが期待できそうです。
 
続いて、都道府県別の平均時給は以下のとおりです。

 

【都道府県別】フルタイムで働く薬剤師の平均時給
都道府県 平均時給 所定内
給与額
所定内
実労働時間
北海道 2,184.0円 35万3,800円 162時間
青森 2,143.5円 36万100円 168時間
岩手 2,219.7円 34万8,500円 157時間
宮城 2,531.6円 43万2,900円 171時間
秋田 2,763.9円 46万7,100円 169時間
山形 2,216.4円 36万5,700円 165時間
福島 2,151.2円 35万7,100円 166時間
茨城 2,211.6円 36万2,700円 164時間
栃木 2,236.1円 37万7,900円 169時間
群馬 2,394.1円 40万4,600円 169時間
埼玉 2,148.2円 35万6,600円 166時間
千葉 2,423.3円 38万5,300円 159時間
東京 2,404.9円 38万9,600円 162時間
神奈川 2,320.2円 38万9,800円 168時間
新潟 1,987.3円 32万9,900円 166時間
富山 2,338.2円 39万7,500円 170時間
石川 2,551.5円 41万5,900円 163時間
福井 2,250.0円 36万4,500円 162時間
山梨 2,171.9円 36万2,700円 167時間
長野 2,239.4円 35万8,300円 160時間
岐阜 2,257.4円 36万5,700円 162時間
静岡 2,374.2円 38万7,000円 163時間
愛知 2,621.0円 43万7,700円 167時間
三重 2,703.8円 42万9,900円 159時間
滋賀 2,304.4円 36万8,700円 160時間
京都 1,982.8円 32万3,200円 163時間
大阪 2,441.6円 39万3,100円 161時間
兵庫 2,352.6円 40万7,000円 173時間
奈良 2,033.1円 33万7,500円 166時間
和歌山 2,074.5円 34万2,300円 165時間
鳥取 2,140.3円 38万7,400円 181時間
島根 2,563.7円 40万2,500円 157時間
岡山 2,688.3円 43万8,200円 163時間
広島 2,676.2円 43万8,900円 164時間
山口 2,234.7円 37万9,900円 170時間
徳島 1,914.1円 31万2,000円 163時間
香川 2,574.4円 40万1,600円 156時間
愛媛 2,344.4円 40万900円 171時間
高知 1,830.0円 29万2,800円 160時間
福岡 2,609.3円 42万2,700円 162時間
佐賀 2,278.9円 41万200円 180時間
長崎 2,370.9円 39万1,200円 165時間
熊本 2,223.0円 36万6,800円 165時間
大分 2,118.2円 36万100円 170時間
宮崎 2,589.9円 43万7,700円 169時間
鹿児島 2,476.7円 42万6,000円 172時間
沖縄 2,223.1円 37万5,700円 169時間

※企業規模10人以上
※平均時給=「所定内給与額」÷「所定内実労働時間数」、小数点第二位以下四捨五入
(厚生労働省「令和5年(2023年)度賃金構造基本統計調査」をもとに作成)

 

平均時給の上位3位は、以下の都道府県でした。

 

【都道府県別】フルタイムで働く薬剤師の平均時給ランキング
順位 都道府県 平均時給
1位 秋田 2,763.9円
2位 三重 2,703.8円
3位 岡山 2,688.3円

 

続いて、年齢別の平均時給は以下のとおりです。

 

【年齢別】フルタイムで働く薬剤師の平均時給
年齢 平均時給 所定内
給与額
所定内
実労働時間
20~24歳 1,609.2円 27万8,400円 173時間
25~29歳 1,910.2円 31万7,100円 166時間
30~34歳 2,146.7円 35万8,500円 167時間
35~39歳 2,522.2円 42万1,200円 167時間
40~44歳 2,506.7円 41万3,600円 165時間
45~49歳 2,534.0円 41万500円 162時間
50~54歳 2,928.0円 48万200円 164時間
55~59歳 2,922.6円 47万9,300円 164時間
60~64歳 2,532.9円 41万5,400円 164時間
65~69歳 2,867.7円 46万1,700円 161時間
70歳~ 2,309.1円 38万1,000円 165時間

※企業規模10人以上
※平均時給=「所定内給与額」÷「所定内実労働時間数」、小数点第二位以下四捨五入
(厚生労働省「令和5年(2023年)度賃金構造基本統計調査」をもとに作成)

 

平均時給のピークは50~54歳という結果になりました。フルタイムで働く薬剤師の平均時給は、多少の上下はあるものの、おおむね20代・30代・40代・50代と定年に向けて徐々に高くなり、定年後はピーク時より下がっていく傾向にあるといえます。

1-2.パート・アルバイトで働く薬剤師の平均時給

「賃金構造基本統計調査」によると、パート・アルバイトといった「短時間労働者」に該当する薬剤師の平均時給は2,845円です。この金額は同調査における「1時間当たり所定内給与額」で、賞与や残業手当などは含めずに計算しています。
 
短時間労働者にあたる薬剤師の企業規模別の平均時給、平均労働日数、1日平均労働時間は以下のとおりです。

 

【企業規模別】パートタイムで働く薬剤師の平均時給
企業規模
※10人以上
平均時給 平均労働日数 1日平均
労働時間
全体 2,845円 13.5日 6.0時間
10~99人 2,197円 12.4日 6.0時間
100~999人 2,930円 13.1日 5.8時間
1,000人以上 3,687円 16.2日 6.3時間

※平均時給=「1時間当たり所定内給与額」
※平均労働日数=「実労働日数」
※1日平均労働時間=「1日当たり所定内実労働時間数」
(厚生労働省「令和5年(2023年)度賃金構造基本統計調査」をもとに作成)

 

短時間労働者では、企業規模1,000人以上の平均時給が最も高く、3,687円でした。「年間賞与その他特別給与額」は、企業規模10~99人が9万2900円と最も高い結果になっています。

 
🔽 薬剤師の年収について詳しく解説した記事はこちら

2.パート・アルバイトの薬剤師が時給を上げる方法

正社員は勤続年数の長さに応じて昇給が見込めることも多いといえます。一方、パートやアルバイトをする薬剤師はどうすれば昇給できるのでしょうか。ここでは、パートやアルバイトの薬剤師が時給を上げるための方法を考えてみます。

2-1.資格を取得して条件交渉する

薬剤師が時給を上げる方法のひとつが条件交渉です。ただし、単に「時給を上げてほしい」と伝えるだけでは、希望は簡単に通りません。条件交渉をするなら、相応の理由を伝える必要があります。
 
例えば、医療系の資格取得はアピールポイントとなります。認定薬剤師の資格を取得すると、勤務時間によってかかりつけ薬剤師になることが可能です。
 
また、ケアマネジャーの資格を取得して在宅医療に貢献するなど、職場で役立つ資格を取得することで、交渉を有利に進められる可能性があります。

2-2.人手不足の時間帯に出勤する

条件交渉をするなら、人手不足の時間帯に出勤できることをアピールするのもひとつの方法です。土日祝日や夕方以降は、薬剤師不足になりがちな時間帯です。そうした時間帯でも働くことができるなら、時給の値上げ交渉の材料にもなります。
 
また、来局者が少ない時間帯に一人薬剤師として対応可能なことを伝えるのもよいでしょう。人件費の削減につながる提案であり、交渉を有利に進められる可能性があります。

 
🔽 一人薬剤師について詳しく解説した記事はこちら

 

2-3.高い時給の業種に転職

薬剤師の時給相場は業種によっても異なるため、時給水準の高い業種に転職する方法もあります。記事執筆時点で「マイナビ薬剤師」に掲載されている求人情報では、以下のような傾向が見られました。

 

職場 時給
調剤薬局 約2,000~3,000円
ドラックストア 約1,800~3,000円
病院 約1,600~3,000円

 

調剤薬局やドラッグストアに比べると、病院薬剤師の時給はやや低くなる傾向がありますが、地域によっては時給3,000円を提示する病院もありました。人材不足が深刻な職場では、高時給となることもあるようです。
 
あくまで目安であり、職場によって異なりますが、業種による時給の差を理解しておくと、働く場所を選びやすいかもしれません。
 
なお、転職を機に時給交渉するのであれば、調剤経験のある診療科の幅広さなど、スキルをアピールしてみましょう。

 

2-4.働くエリアを見直す

転職を視野に時給アップを目指すのであれば、働く時間帯や業種の見直しに加え、働く場所について考慮するのもひとつの方法です。薬剤師は都市部より、人手不足になりやすい地域のほうが高時給になる場合があります。時給相場の高いエリアまで通勤範囲を広げられるかどうか検討してみましょう。
 
働く地域にこだわりがないのであれば、宮崎県や熊本県のように、薬剤師の給料相場が高いエリアを候補にするのもよいかもしれません。ただし、先ほど紹介したのはあくまで平均金額のため、求人ごとに時給などの条件を確認する必要があります。
 
また、都市部においても時給には差があります。駅近や複数の路線が乗り入れるターミナル駅周辺の職場は、人が集まりやすいため時給も上がりにくいケースがあります。時給を重視するのであれば、あえて通勤に不便な場所の求人を探してみるのも一案です。

3.時給で働く薬剤師が知っておきたい所得税と健康保険

パート・アルバイトなど時給で働く際、高時給の職場が良いと思いがちですが、一定以上の収入を得ると社会保険の支払いが生じます。
 
近年では、健康保険の加入条件の拡大によって、「106万円の壁」が注目されています。以前からある「103万円の壁」「130万円の壁」「150万円の壁」と合わせて、それぞれのポイントを理解しておくことが大切です。
 
また、合わせて把握しておきたいのが、所得税と健康保険の仕組みです。2024年10月から健康保険と厚生年金保険のルールが変わるため、条件を確認しておきましょう。

 

3-1.所得税における「103万円の壁」

一般的に企業で働いて得た収入は「給与所得」に分類され、給与所得控除と基礎控除の所得控除が受けられます。
 
所得控除として最低55万円、基礎控除として48万円がそれぞれ給与所得から差し引かれるため、収入が103万円以下の場合、所得税と復興特別所得税はかかりません。これが「103万円の壁」です。
 
参照:No.1410 給与所得控除|国税庁
参照:家族と税|国税庁

 

3-2.配偶者控除における「103万円の壁」と「150万円の壁」

配偶者が正社員で、自身がパートやアルバイトで働いている場合、夫婦の生計や収入などの要件を満たすと、配偶者は「配偶者控除」または「配偶者特別控除」のどちらかを受けられます

 

<配偶者控除と配偶者特別控除>
● 配偶者控除:自身の収入が103万円以下
● 配偶者特別控除:自身の収入が103万円超~201.6万円未満

 

控除の種類や控除額は、配偶者の合計所得金額や自身の収入によって異なります。収入が103万円超~150万円以下であれば控除額は同額です。
 
収入が150万円を超えると、5~7万円程度自身の収入が増えるごとに控除額が減少します。これが「150万円の壁」と呼ばれる理由です。
 
なお、自身の年収が201.6万円以上、または配偶者の合計所得金額が1,000万円を超えると、配偶者特別控除は受けられません
 
参照:No.1191 配偶者控除|国税庁
参照:No.1195 配偶者特別控除|国税庁

 

3-3.社会保険における「130万円の壁」

「130万円の壁」とは、家族の扶養から外れて自身の収入から社会保険料を支払うことになる収入金額のことです
 
年間の収入が130万円以上となった場合は、国民健康保険と国民年金、もしくは勤め先の社会保険に加入し、保険料を支払わなければなりません。
 
130万円の壁を超えると、保険料や年金などの支払いが発生するため、扶養内で働いているよりも手取り収入が減る可能性があります。
 
そのため、配偶者の扶養内で働きたい人は年間の収入が130万円を超えないよう、働く時間を調整する必要があります

 

3-4.2022年10月の健康保険加入条件拡大で注目された「106万円の壁」

2022年の10月から、健康保険の加入条件が以下のとおりに変更されました。

 

① 週の所定労働時間が20時間以上であること
② 雇用期間が2カ月を超えて見込まれること
③ 賃金の月額が88,000円以上であること
④ 学生でないこと
⑤ 厚生年金保険の被保険者数が常時101人以上である企業等

 
※参照:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内|日本年金機構

 

この改定により、被保険者数が101人以上の企業で、週20時間以上働く人が、年間収入105.6万円を超えた場合、扶養から外れ、社会保険料の支払い義務が生じることになりました
 
そこで、「106万円の壁」が注目されるようになりました。ここで指す「106万円」とは、③の要件から「月8.8万円×12か月=105.6万円」と計算された値です。
 
また、2022年10月の改定で大きく変わったのが、②、⑤です。雇用期間見込みが1年以上だったのが「2か月」となり、被保険者数が501人以上から101人以上に拡大されています。この被保険者数は、2024年10月からさらに拡大されることが決まっています.

 

3-5.2024年10月から健康保険加入条件がさらに拡大

2024年10月からは、前述した⑤の条件が「厚生年金保険の被保険者数が常時51人以上である企業等」に変更されます。被保険者数が51人以上となる企業で働く人は、扶養を外れる可能性が高まるでしょう。
 
この改正によって、働き控えによるさらなる企業の人材不足といった懸念があることから、政府は企業に対してキャリアアップ助成金や社会保険適用促進手当といった取り組みに加え、社会保険制度の理解を深めるための周知活動を行っています
 
参照:年収の壁・支援強化パッケージ|厚生労働省

4.時給で働く薬剤師のメリット・デメリット

時給で働くメリットとデメリットには、以下のようなものがあります。

 

4-1.時給で働くメリット

パートやアルバイトなど時給で働く薬剤師は、正社員に比べて勤務時間の融通がきくのが大きなメリットです。ダブルワークをしている人や子育て・介護などワークライフバランスを重視したい人は働きやすいでしょう。
 
また、転勤や異動などがほとんどない点もメリットといえます。薬剤師の仕事は、店舗によって扱う薬や業務内容、処方パターンが異なるため、転勤や異動があるとその都度、店舗のルールを覚えなければなりません。
 
環境が変われば、人間関係を新たに構築する必要があり精神的な負担もあります。パートやアルバイトは、職場の変更を命じられることが少ないため、ずっと同じ環境で働きたい人にはぴったりの働き方といえます。

 

4-2.時給で働くデメリット

時給で働く薬剤師は、職場によっては昇給やボーナスがない場合があり、正社員と比較すると待遇面で不利な点があります。退職金も出ないことが多いため、薬剤師として働くことで得られる生涯収入も正社員と比べて低くなりがちです。
 
また、正社員の薬剤師に比べると、業務内容が限定される傾向があります。さまざまな勤務地や部門で働きたい人や後輩育成に貢献したい人、経営に携わりたい人は、時給ではなく正社員として働くほうが満足のいく働き方ができるのではないでしょうか。

 
🔽 パート薬剤師が正社員になるメリット・デメリットを解説した記事はこちら

5.薬剤師が派遣で働くメリット・デメリット

薬剤師が派遣で働くうえでのメリットとデメリットについて見ていきましょう。

 

5-1.派遣で働くメリット

薬剤師が派遣で働くメリットとして、次のようなものが挙げられます。

 

● ライフスタイルやライフステージに合わせて働き方を選べる
● さまざまな経験を積める
● 時給が高い傾向にある

 

派遣で働くと、働く時間や曜日などを自身で自由に決めやすいのが利点です。例えば、長期旅行をするために、一定期間しっかりと働き、旅行資金が十分にたまったら、数カ月休みを取るといった働き方も可能になるかもしれません。
 
また、結婚や出産、子育てや介護などのライフステージによって働く時間帯や出勤日数を調節することもできるでしょう。残業が必要になることも比較的少ないため、仕事とプライベートを両立させたい人に向いている働き方です
 
また、派遣社員は、さまざまな職場を経験しやすい点もメリットです。病院薬剤師や薬局薬剤師の経験を積んだり、多くの診療科に携わったりすることで、スキルアップを目指せるでしょう。
 
さらに、パート・アルバイトに比べると高い時給が設定されている傾向にあることも派遣薬剤師の特徴です。高額なケースでは時給3,000円以上であることも少なくありません。
 
ただし、高額な時給の場合、即戦力を求めていたり、期間限定だったりする可能性があります。時給の高い派遣先は、何か理由があることを心得ておきましょう。

 

5-2.派遣で働くデメリット

薬剤師が派遣で働くデメリットには、次のようなものが挙げられます。

 

● 同じ職場で働ける期間が限定されている
● 希望に合った派遣先が見つからない場合がある
● 即戦力が期待される
● 派遣切りのリスクがある

 

派遣で働く場合、派遣期間が設定されている点は、場合によってはデメリットとなります。多くの職場で経験を積みたい場合には一定期間で職場を変えられるためメリットと捉えられるでしょう。
 
しかし、派遣の場合、同じ職場に継続して派遣される期間は、原則3年とされています。労働組合への事情聴取などによって、3年以上働けるケースもありますが、基本的には3年を超えて働くことができません。自身が同じ職場で長期間働くことを希望しても、叶わないケースがあることはデメリットといえます
 
参照:派遣社員を受け入れるときの主なポイント|厚生労働省
 
そのほか、派遣先が正社員やパートへの雇用に切り替えることになれば、派遣切りに合う可能性もある点は念頭に置いておく必要があります。
 
また、希望条件を細かく設定しすぎたことで派遣先が見つからないこともあります。あるいは、派遣先の求める知識やスキルが高度なものであるため、過度にプレッシャーを感じることもあるでしょう。希望条件の調整や派遣社員に対する過度な期待などによって、想定より働きづらさを感じることもあります。

 
🔽 派遣薬剤師について解説した記事はこちら

6.薬剤師が正社員で働くメリット・デメリット

薬剤師が正社員で働くうえでのメリットとデメリットを見ていきましょう。

 

6-1.正社員で働くメリット

薬剤師が正社員で働くメリットとして、次のようなものが挙げられます。

 

● 責任のある仕事を任される
● 研修や勉強会などを受けられる
● 福利厚生が充実している

 

正社員は、パートタイムなどの働き方では対応が難しい、責任のある役職などに就くことができます。例えば、薬局長やエリアマネジャーといった経営に関わる役職や、新人の教育担当といった人材育成に関わる業務に就けるのは、正社員で働くメリットといえます。
 
また、薬剤師は自己研鑽が求められる職業ですが、仕事の後に外部の研修会や勉強会に参加するのは、情報収集や申し込み、シフト調整といったことが必要なため、意外と大変なものです。
 
研修会や勉強会を定期的に行う職場に勤めれば、そういった雑務を省いて知識やスキルを身につける機会が得やすくなります。薬剤師が正社員で働くと、経営や人材育成に関わる経験ができたり、自己研鑽の機会が得られたりするので、自身のスキルアップにつながるでしょう
 
また、正社員は雇用期間が限定されていないため、長期間働くことで年収や賞与が上がっていきやすくなります。パート・アルバイトや派遣といった働き方に比べると、社会保険や厚生年金、住宅手当といった福利厚生も充実していることが多いでしょう。失業するリスクが少ないため社会的な信用が得られやすい点は、正社員のメリットといえます

 

6-2.正社員で働くデメリット

薬剤師が正社員で働くデメリットについては、次のようなものが挙げられます。

 

● 休日出勤や残業が発生することがある
● 出勤時間や出勤日数の調整が難しい
● 転勤する場合がある

 

正社員で働くと、休日出勤や残業をしなければならないこともあります。正社員は派遣やパートなどと比較して責任のある業務を任される傾向にあるため、状況によってシフト外の勤務が必要なこともあるでしょう
 
また、出勤時間や出勤日数を調整することも正社員には難しい傾向にあります。正社員は基本的に1日8時間、週40時間労働のフルタイム勤務が多いため、育児や介護、レジャーなどを理由に出勤日数や出勤時間が調整しづらい点はデメリットでしょう。
 
全国展開をしている調剤薬局チェーンなどでは、転居を伴う異動が命じられることがあります。正社員として就職する際は、企業規模によって転居や単身赴任をする可能性がある点も心得ておきましょう

7.時給と職場環境のバランスを見て求人を探そう

薬剤師の働き方には、正社員や派遣、パートやアルバイトなどがありますが、それぞれメリットとデメリットがあります。また、扶養内で働いたり、節税を意識したりするといった自身の状況や考え方によって、働き方の選択肢も変わることでしょう。自身のライフスタイルに合った働きやすい環境と、時給や職場環境のバランスを見極めながら、働き方と働く場所を選ぶことが大切です。


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。