薬剤師の働き方 公開日:2025.12.23 薬剤師の働き方

フリーランス薬剤師とは?仕事内容・年収・個人事業主として案件を探す方法を解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

フリーランス薬剤師は、働き方の自由度が高く、専門性を生かしてさまざまなキャリアを築ける可能性があります。本記事では、フリーランス薬剤師の仕事内容や年収、メリット・デメリットについて解説するとともに、フリーランス薬剤師になる方法や、個人事業主としての案件の探し方についてもお伝えします。

1.フリーランス薬剤師とは?

フリーランス薬剤師とは、一般的に実店舗を持たず、従業員もいない自営業主や一人社長として、薬剤師である自身の知識・経験・スキルを生かして収入を得る働き方をする人を指します。
 
フリーランスとは、2024年11月に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」において、以下のように定義されています。
 

業務委託の相手方である事業者であって、次の①、②のいずれかに該当するもの
① 個人であって、従業員を使用しないもの
② 法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの

 
参考:フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ|厚生労働省

参考:フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン|内閣官房 他

 

1-1.フリーランス薬剤師と派遣薬剤師の違いとは?

フリーランス薬剤師と派遣薬剤師の違いは、契約形態や働き方の自由度にあります。派遣薬剤師は派遣会社と雇用契約を結び、派遣先で業務を行います。一方、フリーランス薬剤師はクライアントと業務委託契約を結び、自らの裁量で働くのが特徴です。
 
フリーランス薬剤師は、勤務時間や仕事内容の選択に柔軟性があり、より主体的な働き方ができるといえます。

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2.フリーランス薬剤師の仕事内容

フリーランス薬剤師の仕事には、さまざまなものがあります。ここでは、調剤薬局やドラッグストア、セミナーや研修の講師、ライターや医療翻訳の仕事について紹介します。

 

2-1.調剤薬局・ドラッグストア

フリーランス薬剤師は、調剤薬局やドラッグストアで短期・スポットの業務を行うことがあります。
 
繁忙期や急な人員不足時に即戦力として求められ、調剤業務や服薬指導、OTC医薬品の販売など幅広い業務に対応するため、現場経験が生かせます。

 

2-2.セミナー・研修講師

薬剤師向けの専門研修や、一般向けの健康セミナーなどで講師を務めるのも、フリーランス薬剤師が行える仕事内容のひとつです。現場経験をもとに、実践的かつ分かりやすい内容を伝える力が求められます。
 
昨今はオンライン開催も増えており、時間さえ確保できれば、自宅や出張先など場所を選ばず実施しやすいのが魅力です。

 

2-3.ライター・医療翻訳などの在宅ワーク

医療系ライターや医療翻訳者として、在宅で記事執筆や翻訳業務を行うフリーランス薬剤師もいます。自宅で働きながら薬剤師資格を生かせる仕事です。
 
専門性と読者目線の両立が求められ、医療メディアや製薬企業と連携して、読者のニーズに対応した記事を作成します。

 
🔽 薬剤師の在宅ワークについて解説した記事はこちら

3.フリーランス薬剤師の年収

フリーランス薬剤師の年収は、働き方や案件の内容によって大きく異なります。調剤薬局やドラッグストアでのスポットの業務を中心に活動する場合、時給に換算すると一般的なアルバイト・パートの水準よりも高い単価を得られることもあるでしょう。ただし、働く日数や案件の安定性によって年収は上下する可能性があります。
 
また、セミナー講師や医療ライターなど複数の収入源を組み合わせることで、数百万円以上の年収を目指すことも可能です。一方で、基本的には自ら営業・交渉を行う必要があるため、収入は営業力や交渉力、自己管理能力に大きく影響されます。
 
内閣官房新しい資本主義実現会議事務局などの調査によると、2022年8月時点におけるフリーランス全体の年収割合は以下とされています。

 

年収 回答数 割合
100万円未満 299 14.1%
100~200万円未満 268 12.6%
200~300万円未満 269 12.7%
300~400万円未満 268 12.6%
400~500万円未満 201 9.5%
500~600万円未満 147 6.9%
600~700万円未満 90 4.2%
700~800万円未満 70 3.3%
800~900万円未満 43 2.0%
900~1000万円未満 45 2.1%
1000万円以上 72 3.4%
分からない・答えたくない 347 16.4%
合計 2119 100.0%

参考:令和4年度フリーランス実態調査結果|内閣官房新しい資本主義実現会議事務局 他

 

上記の調査結果によると、無回答が16.4%であるものの、フリーランスの約70%が年収600万円未満であることが分かります。
 
あくまで全体の数値であり、参考としての比較にはなりますが、「令和6年賃金構造基本統計調査」の結果をもとに算出した薬剤師の平均年収は約600万円であることから、フリーランス薬剤師が企業に雇用されて働く薬剤師よりも高い収入を得るのは、相当の努力が必要であることがうかがえます。

 
🔽 薬剤師の平均年収について解説した記事はこちら

4.フリーランス薬剤師のメリット

フリーランス薬剤師にはさまざまなメリットがあります。詳しく見ていきましょう。

 

4-1.自由な働き方ができる

フリーランス薬剤師の大きな魅力は、働き方の自由度が高いことです。勤務時間や曜日、働く場所を自分で選べるため、育児や介護、趣味との両立がしやすくなります。
 
スポットでの業務や在宅ワークなど、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能で、ワークライフバランスを重視する薬剤師にとってはメリットが大きいでしょう。

 

4-2.自分で仕事を選択できる

フリーランス薬剤師は、案件ごとに仕事内容や契約条件を自分で選べるため、得意分野や興味のある領域に集中できます
 
調剤業務、セミナー講師、医療ライターなど、働き方の選択肢が豊富で、キャリアの幅を広げることが可能です。自分の価値観や目標に合わせて仕事を選べるため、納得感のある働き方を実現しやすいでしょう。

 

4-3.スキルや努力次第で高収入を得られる可能性がある

フリーランス薬剤師は、スキルや努力次第にはなるものの、高単価で専門性の高い業務に携わることで、企業に雇用されて働く薬剤師より高水準の収入を得られるケースもあります。
 
営業力や交渉力、継続的なスキルアップが収入に直結するため、自分次第で年収を伸ばせる働き方なのがメリットです。専門性を磨きながら、収入面でも満足度の高いキャリアを築ける可能性がある点が魅力でしょう。

 

4-4.人脈や知見を広げられる

フリーランス薬剤師として複数の現場や業種と関わることで、自然と人脈が広がり、最新の医療情報や業界動向に触れる機会も増えます。
 
セミナー登壇や執筆活動を通じて自身の専門性を発信することで、新たな案件獲得につながることもあるでしょう。人とのつながりが新しいチャンスを生み、キャリアの可能性を広げてくれるのも大きなメリットです。

5.フリーランス薬剤師のデメリット

続いて、フリーランス薬剤師のデメリットについてお伝えします。

 

5-1.収入が安定しにくい

フリーランス薬剤師は、案件ごとの契約や働く日数によって収入が大きく変動するため、安定した収入を得るのが難しい場合があります。
 
繁忙期には高単価の仕事が集中することもありますが、閑散期には案件が減少することもあるでしょう。月ごとの収入差が大きくなりやすいため、生活費や税金の支払いに備えて、計画的な資金管理が必要です。

 

5-2.確定申告や保険の手続きが必要になる

フリーランス薬剤師として働く場合、基本的に所得税の確定申告や国民健康保険・年金の加入手続きなどはすべて自分で行う必要があります。
 
企業に雇用されて働く薬剤師のように、会社側が手続きを代行してくれるわけではないため、税務や社会保険の知識、経費の管理や帳簿の記録も求められます。慣れないうちは手間に感じることもあるでしょう。

 

5-3.社会的信用が低くなる傾向にある

フリーランス薬剤師は、雇用契約がなく収入が不安定とみなされることから、住宅ローンやクレジットカードの審査で不利になる場合があります
 
企業に雇用されて働く薬剤師と比べて社会的信用が低く評価されやすいため、資金調達や重要な取引・契約時に不利にならないよう、日頃から収入管理と書類整備を心がけることが大切です。

6.フリーランス薬剤師になるには?

フリーランス薬剤師になるには、独立する前にまず薬剤師としてのスキルや実績を身に付けることが大切です。その後、独立に向けて手続きを行います。ここでは、フリーランス薬剤師になるための方法をお伝えします。

 

6-1.スキルや実績を身に付ける

フリーランス薬剤師として安定的に案件を得るには、まず現場での経験や専門スキルを積み重ねることが重要です。調剤業務や服薬指導、在宅医療など幅広い分野での実績があると、さまざまな案件獲得において有利になりやすいでしょう。
 
また、信頼性のあるプロフィールやポートフォリオを整え、情報発信すると、企業や薬局からの依頼につながりやすくなります。

 

6-2.保険や年金の切り替え手続きを行う

企業に雇用されて働く薬剤師からフリーランス薬剤師へ転身する際は、健康保険や年金の切り替え手続きが必要です。
 
家族の扶養に入る場合を除き、退職後は国民健康保険と国民年金への加入が基本となるため、自治体への届け出を速やかに行う必要があります。収入に応じた保険料の負担が発生するため、事前にシミュレーションしておくと安心でしょう。

 

6-3.開業届や青色申告承認申請書を提出する

フリーランス薬剤師として事業を始める際は、事業の開始などの事実があった日から1カ月以内に、開業届を税務署に提出しましょう。また、毎年行われる確定申告では、白色・青色のいずれかを選択できますが、青色申告をする場合は定められた期日までに「青色申告承認申請書」を提出しなければなりません。
 
青色申告は税金の控除や赤字の繰り越しといった特典がありますが、収入が少ない時期には恩恵を実感しにくいでしょう。帳簿管理もしっかり付けなければならないため、事業の規模や収支に応じて申告方法を選ぶことが重要です。
 
参考:No.2070 青色申告制度|国税庁

7.フリーランス薬剤師が案件を探す方法

フリーランス薬剤師が案件を得るには、マッチングサービスやクラウドソーシング、SNSやオンラインコミュニティを活用するほか、知人からの紹介などの方法が挙げられます。詳しく見ていきましょう。

 

7-1.マッチングサービスやクラウドソーシングを利用する

フリーランス薬剤師向けのマッチングサービスやクラウドソーシングを活用すれば、希望条件に合った業務委託案件を効率よく探すことができます。
 
報酬や業務内容を比較しながら選べるため、仕事を見つけやすいでしょう。

 

7-2.SNSやオンラインコミュニティを活用する

SNSや薬剤師向けのオンラインコミュニティは、フリーランス薬剤師にとって貴重な情報源です。フリーランス仲間やクライアントと信頼関係を築くことで、仕事につながる可能性が高まります。
 
また、自分の専門性や実績を発信することで、企業や薬局から直接声がかかることもあるでしょう。そのため、SNSやオンラインコミュニティは積極的に活用するのがおすすめです。

 

7-3.知人に紹介してもらう

フリーランス薬剤師として案件を獲得するには、過去の職場や同業者とのつながりを生かすことも重要です。
 
信頼関係のある知人から紹介される案件は、条件交渉がしやすかったり、継続的な依頼につながったりすることもあります。日頃から人脈を大切にし、丁寧な対応を心がけることが案件獲得の近道です。

8.フリーランス薬剤師として自分らしく働くために

フリーランス薬剤師として自分らしく働くには、専門性を生かしながら働き方を選べる環境を整えることが大切です。収入や時間の自由だけでなく、自分の価値観に合った案件を選び、無理なく継続できる働き方を実現しましょう。フリーランス薬剤師が向いていないと感じたら、企業に雇用されて働く薬剤師に戻る選択もできます。フリーランスに興味がある薬剤師は、やりがいと生活のバランスを取りながらチャレンジするとよいでしょう。

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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。