薬剤師の働き方 公開日:2015.05.18更新日:2015.05.15 薬剤師の働き方

第24回 中村守男 先生

小児医療の場合、患者である子どもの症状や副作用を保護者に聞くなど、大人と違って細やかに気を配る必要があります。そのため、なんとなく苦手意識を持つ薬剤師さんも多いのではないでしょうか。
今回は「NPO法人 こどもとくすり」の理事長で、自らも2児の父親である薬剤師の中村守男先生に、小児患者への対応のコツをうかがいました。全4回のシリーズです。

Q
 
「NPO法人 こどもとくすり」の設立の経緯や活動を通して薬剤師の実務に役立ったことを教えてください。
「NPO法人 こどもとくすり」の設立の経緯や活動を通して薬剤師の実務に役立ったことを教えてください。
お薬手帳の活用――薬剤師の理想と利用者の考えには大きな溝が!

 

小児医療と患者さんの生活とのギャップがNPO法人設立のきっかけに

 
「小児医療は、保護者が日常の子育ての中で感じる不安や疑問に対して、きちんと向き合っていないのではないだろうか」――保険薬局の薬剤師として小児科の24時間対応を経験したときに、小児医療と保護者の間にあるギャップを強く感じました。
 
私たち薬剤師は処方せんに対し、「素早く正確に調剤をして、正しくお薬を飲んでいただけるよう服薬指導をすること」、つまり、薬を正しく服用してもらうための指導に注力していると思いますが、小児の場合、薬局にいらっしゃる保護者の多くは、病気や服用のこと以外に、お子さんの生活全般についてのアドバイスを求めていることがわかったのです。たとえば歯みがきの仕方、噛み合わせ、食事の内容、心と身体の発達など、子どもの健康を守るためにはどうしたらいいのかといったことですね。“健康を取り戻すために”薬を正しく服用してもらうための指導をする薬剤師と、子どもの身体や健康を考える患者さん家族の間にちょっとしたギャップがあることを感じました。
 
この溝を埋めることが私たち薬剤師の役割なのではないかと考えるようになり、それがきっかけで、薬剤師仲間と「子どもの薬を考える会」を立ち上げ、現在の「NPO法人こどもとくすり」に至っています。
 

患者さんの立場にたったお薬手帳の活用推進

 
実は「NPO法人 こどもとくすり」のメンバーは、薬剤師ばかりではないんですよ。子育て中のママやパパ、保育関係者や教育関係者、医療従事者以外の職業の方など、多様なバックボーンをもつ方が多くいます。さまざまな立場で子どもの健康を考え、ディスカッションするなかで、医療人とは違う視点をもつこと、もっと幅広い視点を持つことが大切だなと気づかされました。
 
たとえばお薬手帳ですが、お薬手帳の利用を勧めるとき、皆さんはどのように患者さんにお話ししていますか?
「ほかの医療機関で飲んでいるお薬との飲み合わせがわかるように」とか、「災害時に、お薬手帳があったおかげで普段飲んでいる薬の情報がわかったみたいですよ。いざというときのために作りませんか」などと話してはいないでしょうか。私も患者さんにはそのようにお話ししていました。しかし、お薬手帳を活用してくれる患者さんはなかなか増えません。
 
そこで、医療従事者以外の人たちのお薬手帳に対する意見を聞きたいと思い、NPOのメンバーに尋ねてみると、「薬剤師がお薬の飲み合わせを調べるのは、薬剤師として当然の仕事でしょう? それをお薬手帳で管理しようとするのは、薬剤師側の仕事を簡便化するための理屈じゃないの」「災害時とか非常時のことを言われても、一般の利用者にはピンとこない。いざというときなんて、そんなに起こることじゃないし……」「病気で受診して、つらくて早く帰りたいのに、手帳の説明をされても耳に入らない」など、思いもよらないような、はっとさせられる意見が出てきました。
 
私たち薬剤師は患者さんが安全に薬を服用するために、お薬手帳の使用を推進しているつもりでしたが、利用者である患者さんや小さな子を持つ保護者は必ずしもそうとは感じていませんでした。お薬手帳に対する理解にもギャップがあることがわかり、お薬手帳の利用方法を根本的に変えていくことが必要かもしれないと考えました。
次回は、NPOで推進しているお薬手帳の新しい活用法についてお伝えします。

お薬手帳の活用――薬剤師の理想と利用者の考えには大きな溝が!

 

小児医療と患者さんの生活とのギャップがNPO法人設立のきっかけに

 
「小児医療は、保護者が日常の子育ての中で感じる不安や疑問に対して、きちんと向き合っていないのではないだろうか」――保険薬局の薬剤師として小児科の24時間対応を経験したときに、小児医療と保護者の間にあるギャップを強く感じました。
 
私たち薬剤師は処方せんに対し、「素早く正確に調剤をして、正しくお薬を飲んでいただけるよう服薬指導をすること」、つまり、薬を正しく服用してもらうための指導に注力していると思いますが、小児の場合、薬局にいらっしゃる保護者の多くは、病気や服用のこと以外に、お子さんの生活全般についてのアドバイスを求めていることがわかったのです。たとえば歯みがきの仕方、噛み合わせ、食事の内容、心と身体の発達など、子どもの健康を守るためにはどうしたらいいのかといったことですね。“健康を取り戻すために”薬を正しく服用してもらうための指導をする薬剤師と、子どもの身体や健康を考える患者さん家族の間にちょっとしたギャップがあることを感じました。
 
この溝を埋めることが私たち薬剤師の役割なのではないかと考えるようになり、それがきっかけで、薬剤師仲間と「子どもの薬を考える会」を立ち上げ、現在の「NPO法人こどもとくすり」に至っています。
 

患者さんの立場にたったお薬手帳の活用推進

 
実は「NPO法人 こどもとくすり」のメンバーは、薬剤師ばかりではないんですよ。子育て中のママやパパ、保育関係者や教育関係者、医療従事者以外の職業の方など、多様なバックボーンをもつ方が多くいます。さまざまな立場で子どもの健康を考え、ディスカッションするなかで、医療人とは違う視点をもつこと、もっと幅広い視点を持つことが大切だなと気づかされました。
 
たとえばお薬手帳ですが、お薬手帳の利用を勧めるとき、皆さんはどのように患者さんにお話ししていますか?
「ほかの医療機関で飲んでいるお薬との飲み合わせがわかるように」とか、「災害時に、お薬手帳があったおかげで普段飲んでいる薬の情報がわかったみたいですよ。いざというときのために作りませんか」などと話してはいないでしょうか。私も患者さんにはそのようにお話ししていました。しかし、お薬手帳を活用してくれる患者さんはなかなか増えません。
 
そこで、医療従事者以外の人たちのお薬手帳に対する意見を聞きたいと思い、NPOのメンバーに尋ねてみると、「薬剤師がお薬の飲み合わせを調べるのは、薬剤師として当然の仕事でしょう? それをお薬手帳で管理しようとするのは、薬剤師側の仕事を簡便化するための理屈じゃないの」「災害時とか非常時のことを言われても、一般の利用者にはピンとこない。いざというときなんて、そんなに起こることじゃないし……」「病気で受診して、つらくて早く帰りたいのに、手帳の説明をされても耳に入らない」など、思いもよらないような、はっとさせられる意見が出てきました。
 
私たち薬剤師は患者さんが安全に薬を服用するために、お薬手帳の使用を推進しているつもりでしたが、利用者である患者さんや小さな子を持つ保護者は必ずしもそうとは感じていませんでした。お薬手帳に対する理解にもギャップがあることがわかり、お薬手帳の利用方法を根本的に変えていくことが必要かもしれないと考えました。
次回は、NPOで推進しているお薬手帳の新しい活用法についてお伝えします。

中村守男先生プロフィール
中村守男先生プロフィール
「NPO法人 こどもとくすり」理事長。薬剤師。生活者目線を大事に、「こそだて医療(=医療と健康の面から子育てを支援)」を推進するとともに、医療の立場から“健康子育て”支援を目的に、健康づくり講座やワークショップ、講演活動を行う。
有限会社八幡西調剤薬局採用担当マネージャー。2児の父親。
NPO法人 こどもとくすり: http://kodomo-kusuri.org/

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