薬剤師の働き方 公開日:2025.11.12 薬剤師の働き方

研修認定薬剤師とは?申請・更新方法や資格取得の条件について解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

研修認定薬剤師とは、新人薬剤師からベテラン薬剤師まで幅広い層を対象とした認定資格です。資格を取るためには、一定の研修単位を取得し、認定申請を行う必要があります。本記事では、研修認定薬剤師の概要や認定薬剤師との違いについて解説するとともに、資格を取得するための条件や研修・eラーニングの受講により取得できる単位、申請・更新方法についてもお伝えします。

1.研修認定薬剤師とは?

研修認定薬剤師とは、日本薬剤師研修センターが運営する研修認定薬剤師制度のもと、一定期間内に所定の単位を取得して認定を受けた薬剤師を指します。
 
参考:研修認定薬剤師制度とは|日本薬剤師研修センター
 
倫理や基礎薬学、医療薬学、衛生薬学、薬事関連法規・制度など、質の高い薬剤師業務を遂行するために自己研鑽した証となる資格です。各都道府県の認定者一覧は、日本薬剤師研修センターのホームページから確認できます。
 
参考:研修認定薬剤師の認定者名簿|日本薬剤師研修センター

 

1-1.「研修認定薬剤師」と「認定薬剤師」の違い

日本薬剤師研修センターが認定する漢方薬・生薬認定薬剤師小児薬物療法認定薬剤師、日本病院薬剤師会が認定する日病薬病院薬学認定薬剤師、日本臨床腫瘍薬学会が認定する外来がん治療認定薬剤師など、「認定薬剤師」という名称の資格にはさまざまな種類があります。
 
🔽 認定薬剤師の資格について解説した記事はこちら


 
厚生労働科学研究成果データベースに掲載されている「国民のニーズに応える薬剤師の専門性のあり方に関する調査研究」総合研究報告書によると、認定薬剤師、専門薬剤師、指導薬剤師といった名称の使い方は「各認定団体内では整備される方向にあるものの、認定団体の枠を超えての統一性に欠ける」とされていますが、上記のような「認定薬剤師」の資格では、研修単位の取得はもちろん、症例報告や学会発表・論文投稿の実績、認定試験への合格などが求められる場合があります。
 
一方、研修認定薬剤師は、一定期間内に所定の単位数を取得することが要件となっているため、比較的取得難易度が低く、多くの薬剤師が目指しやすい資格です。

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2.研修認定薬剤師になるための条件

研修認定薬剤師になるための条件は、対象の研修を受講し、4年以内に40単位以上を取得することです。1年以内に40単位以上取得した場合にも申請が可能です。認定対象となる研修には、「集合研修・実習研修」「グループ研修」「e-ラーニング研修」「自己研修」などがあります。
 
研修認定薬剤師は、PECS(薬剤師研修・認定電子システム)を通じて研修単位の管理や申請手続きを行うため、最初にPECSに登録することが必要です。そのため、登録前に研修を受講しても、単位として反映されません。研修認定薬剤師の取得を目指すのであれば、まずはPECSの登録方法や制度の仕組みを確認しましょう。
 
参考:研修認定薬剤師になるには|日本薬剤師研修センター
参考:研修認定薬剤師制度に関するQ&A|日本薬剤師研修センター

3.研修認定薬剤師になるには

研修認定薬剤師になるには、PECS(薬剤師研修・認定電子システム)へ登録し、研修やe-ラーニングの受講により単位を取得して認定申請を行う必要があります。ここでは、研修認定薬剤師になるための手順についてお伝えします。

 

3-1.PECS(薬剤師研修・認定電子システム)への登録

PECSの登録は、日本薬剤師研修センターのホームページから行います。登録できるのは薬剤師資格を持つ人のみとなっています。登録が済んでいない薬剤師は、専用サイトから新規登録を行いましょう。登録時に入力が必要な内容は以下のとおりです。

 

● パスワード
● 確認用パスワード
● 氏名(漢字とカタカナ)
● 自宅電話番号または携帯電話番号
● 自宅住所(郵便番号、都道府県名、住所)
● 生年月日
● 薬剤師名簿登録番号
● 薬剤師名簿登録年月日

 

登録前に研修を受講したり、登録内容を誤って入力したりすると、研修を受講しても単位としてカウントされません。
 
また、上記の「生年月日」「薬剤師名簿登録番号」「薬剤師名簿登録年月日」は、一度登録すると修正が困難とされているため、登録内容に間違いがないようしっかりと確認しましょう。
 
参考:研修認定薬剤師になるには|日本薬剤師研修センター
参考:薬剤師のPECS登録|日本薬剤師研修センター

 

3-2.研修・eラーニング受講などによる単位取得

単位として認められる研修と単位は、以下のとおりです。

 

研修 単位 単位取得の上限
集合研修 90分/単位 1日4単位まで
学術集会 最大4単位/日
(午前/午後の場合2単位まで)
1学術集会につき9単位まで
e-ラーニング研修 1単位/1講座
※単位付与は1講座(講義とテストの組み合わせで合計90分)ごと
1日4単位まで
ウエブ利用研修
(集合研修即時配信)
90分/単位 1日4単位まで
ウエブ利用研修
(集合研修アーカイブ配信)
90分/単位 1日4単位まで
ウエブ利用研修
(学術集会即時配信)
最大4単位/日
(午前/午後の場合2単位まで)
1学術集会につき9単位まで
ウエブ利用研修
(学術集会アーカイブ配信)
最大4単位/日
(午前/午後の場合2単位まで)
※分割は不可
1日4単位まで
自己研修 1報告書/単位 年間5単位まで
学術集会等発表 1報告書/単位 年間3単位まで
学術雑誌論文掲載 1報告書/単位 年間3単位まで

参考:研修認定薬剤師制度実施要領|日本薬剤師研修センター

 

e-ラーニング研修は、自宅のパソコン環境を確認した上で、お試し版を視聴できるかどうかを確認してから利用するようにしましょう。スマートフォンなどパソコン以外の端末を使用するのは推奨されていません。
 
参考:e-ラーニング研修(センター主催研修会)|日本薬剤師研修センター
 
なお、薬剤師認定制度認証機構で認証されている生涯研修プロバイダーから交付された単位は、上記40単位のうち20単位まで算入することができます。
 
参考:生涯研修プロバイダー|薬剤師認定制度認証機構

 

3-3.認定申請

研修認定薬剤師の認定申請は、PECSで行います。審査料は11,000円(税込)です。認定申請日から遡って、4年以内に40単位以上を取得することで申請できます。1年ごとに必要な取得単位数は定められていないため、1年目に40単位取得して申請することも可能です。
 
注意点としては、PECSに研修会の単位が反映されてから申請することです。PECSに反映されていない研修単位を「手帳の単位」として入力しても、単位としてカウントされません。
 
また、「単位払出」は日本薬剤師研修センター以外の生涯研修プロバイダーへ認定申請する時に使用するものです。一度単位を払い出すと、日本薬剤師研修センターでの認定申請には使用できないため、誤って払い出さないよう注意しましょう。
 
参考:研修認定薬剤師の新規申請|日本薬剤師研修センター

 

3-3-1.PECSに反映されない単位

以下の研修については、PECSに受講履歴が反映されません。

 

1. 薬剤師認定制度認証機構で認証されている生涯研修プロバイダーの研修
2. 2022年3月31日までに日本薬剤師研修センターが行った研修

 

上記の研修は、PECSに反映されないため、自動的に単位として算入することができません。そのため、「1」については受講シールと団体が発行する受講証明書、「2」については受講シールの提出が必要です。
 
受講証明書については、シール1枚につき1通提出しなければなりません。そのため、同じプロバイダーで複数のシールを使用する場合は、シールごとに受講証明書を取り寄せ、紛失・破棄しないようしっかり管理しましょう。
 
また、薬剤師研修手帳や研修受講シール整理表に、受講年月日や主催者、テーマなどを間違いないように記載し、対応する受講シールを貼付することが求められます。

 

3-3-2.送付が必要な書類

PECSに反映されない研修を単位に算入する場合や、認定期間を延長している場合には、以下の書類を日本薬剤師研修センターに送付します。

 

1. 「研修認定薬剤師制度 認定申請の受付完了について」メールを印刷したもの
2. シールの貼付と必要事項が記入された研修手帳や研修受講シール整理表
3. 日本薬剤師研修センター以外の生涯研修プロバイダーの単位を申請に使用する場合は、その単位を交付した団体の公印が押印された受講証明書
4. 特別な事由により認定期間の延長をしている場合や「やむをえない事情により研修が困難になった場合の措置」によって各年単位取得条件の免除を許可されている場合は、その受理書もしくは許可証(正本)(送付されない場合は適用不可)

参考:研修認定薬剤師の新規申請|日本薬剤師研修センター

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4.研修認定薬剤師の資格を更新するには?

研修認定薬剤師の資格の更新審査料は11,000円(税込)です。更新するには、認定開始日から3年間で30単位以上取得しなければなりません。また、1年ごとに各年5単位以上、取得する必要があります。
 
30単位のうち、日本薬剤師研修センター以外の生涯研修プロバイダーから交付された単位は、15単位まで算入できます。ただし、PECSには反映されないため、新規申請と同様、受講シールと受講証明証を更新申請後に日本薬剤師研修センターに送付しなければなりません。
 

参考:研修認定薬剤師の更新申請手続きについて|日本薬剤師研修センター

5.研修認定薬剤師の資格を取得するメリット

研修認定薬剤師の資格を取得するメリットとして、薬剤師として一定以上のレベルにあることを証明できる点が挙げられます。職場によっては、資格取得によって昇給や昇格が実現できるケースもあるでしょう。
 
転職市場での評価も高まる可能性があり、より良い条件での転職も期待できます。そのため、研修認定薬剤師の資格取得は、キャリアアップや年収アップ、転職時のスキル証明などに役立つといえるでしょう。
 
また、認定薬剤師の取得は、かかりつけ薬剤師になるための条件のひとつです。かかりつけ薬剤師になると、担当の患者さんを持てるようになります。患者さん一人ひとりにより丁寧に服薬指導や服薬管理ができるようになることで、仕事に対して従来以上の達成感や充実感を得られるようになるかもしれません。
 
かかりつけ薬剤師指導料の算定にもつながるため、薬局の経営にも貢献できます。そのため、研修認定薬剤師を取得するメリットは大きいでしょう。
 
参考:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省

 
🔽 かかりつけ薬剤師指導料について解説した記事はこちら

6.研修認定薬剤師の資格を取得しよう

研修認定薬剤師の資格を取得すると、薬剤師として幅広い知識を身に付けられたり、キャリアアップにつながったりするメリットがあります。また、規定の単位を取得すれば申請できるため、実務経験の少ない新卒薬剤師でも取得を目指すことが可能です。ベテラン薬剤師の自己研鑽にも活用できるため、日本薬剤師研修センターの研修認定薬剤師の資格取得を通じて、薬剤師としてのスキルアップを目指しましょう。

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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。