医療

向精神薬減量ガイドライン策定へ‐薬剤師の処方提案を支援

薬+読 編集部からのコメント

増やすよりも困難といわれる向精神薬の減薬・減量。2016年9月に発足した一般社団法人日本精神薬学会が「向精神薬減量ガイドライン」(仮称)の策定に着手すると発表しました。病院や薬局の薬剤師が主体的に処方の適正化を医師に提案できるよう、具体的な手順を盛り込む方針ということです。

昨年9月に発足した一般社団法人日本精神薬学会は3月から「向精神薬減量ガイドライン」(仮称)の策定に着手する。日本特有の向精神薬の多剤大量処方を改善すべく、病院や薬局の薬剤師が主体的に処方の適正化を医師に提案できるように、減薬や減量の具体的な手順を盛り込んでいく方針。策定にあたって、不足するエビデンスを新たに構築することも想定しており、作業は数年がかりになる見通しだ。

吉尾氏
吉尾氏

 

向精神薬の多剤大量処方は死亡リスクを高めたり、生活習慣病の発症や悪化を促進したりするほか、医療費の増加にもつながるとして問題視されてきた。その適正化を図るべく国は2014年以降、抗精神病薬や抗うつ薬、睡眠薬、抗不安薬の多剤併用がなされた場合に診療報酬を減算する仕組みを導入。こうした使用制限も影響し、改善に向けた医療者の意識は次第に高まっている。

 

とはいえ、減薬や減量は新たに薬を追加するより困難だ。不適切に処方に手を加えれば、今までコントロールできていた精神疾患の症状が悪化する可能性がある。同学会理事長の吉尾隆氏(東邦大学薬学部臨床薬学教授)は「例えば抗精神病薬だけを2種類服用している場合、それを1種類に減らすのは比較的取り組みやすい。しかし、そこにベンゾジアゼピン系薬剤や抗パーキンソン薬などが併用された場合、どの薬からどのような順序で、どう減らしていけばいいのかを考えるのは容易ではない」と語る。

 

GLでは、併用された向精神薬のうち、どの薬からどれくらいの期間をかけて減量するのか、その時に他の併用薬をどう調整するのかなどの減薬、減量の手順を具体的に示したい考え。学会発表や論文を根拠に策定するほか、各病院の症例を集積してGLに反映させる構想もある。同学会に今年3月「向精神薬減量GL作成委員会」(仮称)を設置し、具体的な内容や策定方法について議論を開始する計画だ。

 

GLの活用によって、薬剤師は医師に減薬や減量を提案しやすくなったり、医師も提案を受け入れやすくなったりするとの期待がある。多剤大量処方の適正化に薬剤師が積極的に関与できるようにしたいという。

 

薬剤師主体の活動の場を

 

昨年9月に同学会を立ち上げたのは、薬剤師が主体となって活動できる場を作るためだ。吉尾氏が代表理事を務める精神科臨床薬学研究会では以前から、全国の病院を対象に多剤大量処方の実態調査を行い、その結果を発表してきた。しかし、処方適正化への関与は十分ではなく、薬剤師が主体となった学会を設立してGLを策定し、発信する必要性を実感していた。「薬剤師だけではなく、各学会の主要なポストに就いている精神科医からも、その動きを促す声を聞くようになった」(吉尾氏)ことから設立に踏み切った。

 

学会設立には、日本病院薬剤師会の精神科専門薬剤師の数を増やしたいとの狙いもある。その数は現在約50人。少ない数ではないものの、「認定要件である学会発表や論文発表がハードルになって取得者が伸び悩んでいると感じていた」(吉尾氏)。必要な環境を整備するため、病院薬剤師、薬局薬剤師、基礎研究者が連携して研究に取り組み、精神科医療に貢献する成果を発表できる場として学会を立ち上げた。今後、同専門薬剤師制度との連携も深める計画だ。

 

薬局薬剤師向けの教育・研修にも力を入れる。精神科患者の外来シフトが進む中、薬局薬剤師の役割は大きくなっている。必要な知識やスキルを高める機会を同学会で提供し、幅広い薬局の薬剤師が精神科患者の薬物療法に十分関われるようにしたいという。

 

会員数は現在300人強。3月末までに500人を目指し、中期的には1000人規模に発展させたい考え。3月11日には東京で創立記念講演会・祝賀会を開き、活動を本格化させる。6月には学会誌「日本精神薬学雑誌」の第1号を発刊する予定だ。9月23、24日には第1回学術集会を昭和大学旗の台キャンパスで開催する。

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出典:薬事日報

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