創薬・臨床試験

大腸癌幹細胞の抑制作用示す‐新規化合物を創出

薬+読 編集部からのコメント

現状での5年生存率は15%にとどまる大腸癌。国立がん研究センター、理化学研究所、カルナバイオサイエンスが、大腸癌の発生に必須なシグナル伝達経路を阻害することができる新規化合物を創出したと発表しました。新たな治療選択肢とすることを目指し、現在は非臨床試験中ということです。

国立がん研究センター、理化学研究所、カルナバイオサイエンスは、大腸癌の発生に必須なシグナル伝達経路を阻害することができる新規化合物「NCB-0846」を創出した。癌再発の原因となる癌の根元の細胞の「癌幹細胞」に対し、癌を再度つくる働きを抑えることが動物実験で明らかになった。大腸癌幹細胞を抑制する薬剤は実用化されておらず、従来の抗癌剤が効かない患者に対して新たな治療選択肢になる可能性がある。現在、非臨床試験を実施中で、がん研究センターが大腸癌治療薬として実用化を目指す。

 

今回の研究成果は、アカデミア発シーズの導出を支援する日本医療研究開発機構(AMED)の創薬ブースター事業の一つ。遠隔転移のある大腸癌をめぐっては、2年を超える生存が可能になってきたが、治療を続けると次第に化学療法に抵抗性となり、5年生存率は15%にとどまっている。癌の治療抵抗性の原因として、癌幹細胞の関与が考えられているが、従来の抗癌剤では根絶が難しかった。

 

大腸癌の90%以上の症例では、Wntシグナル遺伝子に変異が認められ、これらの変異はWntシグナル伝達経路を恒常的に活性化し、癌幹細胞を発生させると考えられている。そこで研究グループでは、TNIKというリン酸化酵素がWntシグナル経路の活性化に必要なことを発見。がん研究センターとカルナバイオの産学共同でスクリーニングを行い、誘導体合成から最終的にTNIKの酵素活性を低濃度で阻害する新規化合物を同定した。

 

理化学研究所が「NCB-0846」とTNIK複合体のX線結晶構造解析を行い、TNIKの酵素メカニズムを明らかにし、「NCB-0846」をヒト大腸癌細胞を移植したマウスに投与すると、癌の増殖と癌幹細胞マーカーCD44の発現を顕著に抑制した。がん研究センターとカルナバイオは別のTNIK阻害剤として「NCB-0594」の共同開発も進めている。

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出典:薬事日報

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