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富士フイルムがGE薬から撤退‐第一三共は長期収載品を譲渡

薬+読 編集部からのコメント

GE薬を扱う富士フイルムファーマは来年3月末で解散。第一三共は長期収載品の譲渡を決断…特許切れした医薬品を切り離す動きが加速しています。2社の薬品を獲得したのは、共創未来ファーマとアルフレッサファーマ。両社は医薬品卸参加の製薬企業です。

先発品メーカーが特許切れした医薬品を切り離す動きが止まらない。富士フイルム子会社でジェネリック医薬品(GE薬)やバイオシミラーの製造販売を手がける富士フイルムファーマは来年3月末で解散すると発表。第一三共はアルフレッサファーマに対し、同社と子会社「第一三共エスファ」が保有する長期収載品41製品92品目について、来年3月から国内の製造販売承認を譲渡する。第一三共と富士フイルムは先発品、GE薬をはじめ幅広く医薬品事業を展開してきた多角的な製薬企業だったが、長期収載品やGE薬を取り巻く事業環境の厳しさから、事業譲渡を決断した。

 

薬価制度改革、収益確保困難に

富士フイルムファーマは、富士フイルムと三菱商事、東邦ホールディングスの資本・業務提携により合弁会社として設立され、2010年に営業を開始。設立時は、キョーリンリメディオ、陽進堂、辰巳化学、富士製薬工業など、国内GE薬メーカーから製品を導入し、GE薬や長期収載品の販売を手がけ、独自のナノ化技術「FTD技術」を活用した高付加価値GE薬を販売し、設立5年で売上500億円を達成する目標を打ち出していた。16年には、BSとしては国内で2番目の承認取得となった糖尿病治療薬「インスリングラルギンBS注キット」を上市していた。

 

しかし、4月の薬価制度の抜本改革により市場環境が厳しくなり、安定的な収益の確保が困難と判断し、解散を決定。今後は、来年3月31日に解散承認のための臨時株主総会を開催し、清算人による財産処分の後、6月末までに清算を完了する予定。

 

販売中のGE薬56成分194品目については、東邦HD子会社の共創未来ファーマに承継・販売移管を順次行う。一方、長期収載品のバイエル薬品から販売移管していた食後過血糖改善剤「グルコバイ」など4製品は、9月末までに富士フイルムファーマの販売を終了させ、今月からバイエル薬品が販売する。情報提供活動については、年内まで富士フイルムファーマが行い、来年1月からはバイエル薬品が実施する。インスリングラルギンBS、抗肥満薬「サノレックス」などの製品については、承継・販売移管先を現在検討している。

 

従業員240人は本人の同意の上で、今後グループ会社への転籍も含めた再就職の支援を受け、退職する予定だ。

 

富士フイルムグループとしては、新薬やバイオ医薬品、再生医療など多角的な事業を展開しているが、子会社の富山化学や富士フイルムRIファーマが保有する一部製品を除いては、GE薬事業の大半を切り離すこととなった。

 

事業の選択と集中を加速

第一三共も長期収載品の譲渡を決断した。同社と子会社「第一三共エスファ」が保有する長期収載品41製品92品目について、アルフレッサファーマに譲渡する。長期収載品の販売にかかる人的・物的資源を癌領域の新薬に集中させ、第一三共エスファはオーソライズドジェネリック(AG)を中心とした事業展開を進める。

 

同社は25年ビジョン「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」の実現に向け、癌領域への選択と集中を加速させている。長期収載品の事業最適化を検討した結果、事業の一部をアルフレッサファーマに譲渡することが、安定供給の責任を継続的に果たせると判断した。

 

譲渡する長期収載品は、第一三共35製品、第一三共エスファ6製品の計41製品。医療用麻薬と希少疾患薬、厚生労働省から医療上必要性の高い未承認薬として認められた製品は譲渡対象から除外した。第一三共30製品、第一三共エスファ5製品の資産と権利義務については、来年3月1日を効力発行日として、会社分割によりアルフレッサファーマに承継し、そのほかの製品については、同月2日以降、個別の製品ごとに順次承継する。情報提供についても、第一三共からアルフレッサファーマのMRに担当が変わる。

 

国内製薬大手が相次いで長期収載品の切り離しを進める中、再生医療、新薬、長期収載品、ジェネリック医薬品、AG、ワクチン、OTC医薬品と多角的な事業を展開し、国内売上トップ企業の地位を確保してきた同社だが、事業の選択と集中に舵を切った。

 

富士フイルムファーマのGE薬、第一三共の長期収載品を獲得したのは、共創未来ファーマとアルフレッサファーマの2社。両社は医薬品卸傘下の製薬企業で、製造販売業を強化する傾向にあるようだ。

 

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先発品メーカー、AG注力‐GE薬市場でシェア占有

新薬、長期収載品、GE薬と混在する医薬品市場の中で台頭しているのがAGだ。AGが販売されている各有効成分ではGE薬市場のシェアを占有している状況にある。

 

GE薬と長期収載品を扱ってきた子会社の第一三共エスファは、当初長期収載品やGE薬を扱う事業会社だったが、第一三共や他社から製造販売の許諾を受け、AGで成長を図っている。

 

第一三共グループが癌領域へ資源を集中させる中、国内で癌領域のAGも強化する。アストラゼネカ(AZ)日本法人が販売するチロシンキナーゼ阻害剤「イレッサ錠」(一般名:ゲフェチニブ)のAGについて国内承認を取得した。

 

さらに、前立腺癌治療剤「カソデックス錠・同OD錠」、乳癌治療剤「ノルバデックス錠」、閉経後乳癌治療剤「アリミデックス錠」のAGの事業化についても、AZと合意し、第一三共エスファがAGとして現在国内申請中。これらは、他社がGE薬を販売している“後出しAG”に該当する。

 

バイオ医薬品でもAGが登場した。協和発酵キリンの子会社「協和キリンフロンティア」が持続型赤血球造血刺激因子製剤「ダルベポエチンアルファ注シリンジ『KKF』」(先発品名:ネスプ)について、腎貧血を適応とするGE薬として国内承認を取得した。

 

ネスプのAGであり、バイオ医薬品の後続品としては、国内初のAG。発売日は未定。先行品と同じ原薬や添加物、製造方法という信頼性に加え、経済性にも優れた製品として訴求する一方、19年にバイオシミラーの参入が予想され、国内トップ製品であるネスプ売上を他社に浸食されないための一手になりそうだ。

 

同社は昨年にネスプAGの事業に特化した「協和キリンフロンティア」を設立。規制当局との相談を重ねながら、バイオ医薬品のAGで国内初の承認を取得した。

 

今回のネスプAGは、バイオシミラーではなく、通常のGE薬として承認を取得した。適応症は、腎性貧血であり、先発品が有している骨髄異形成症候群に伴う貧血の適応は取得していない。先発品と同じ原薬・添加物・製造方法を用いるが、製造場所等は非公開。

 

薬価については、バイオ後続品に適用される先発品薬価の70%になるのか、通常のGE薬で適用される先発品薬価の50%になるのか、今後検討される見通し。発売日は未定で、安定供給体制の構築を進めている段階にある。上市後は、協和発酵キリンと協和キリンフロンティアが共同で情報提供活動を実施する。

 

「主力品の売上減を抑える」「GE薬市場のシェアを奪う」など、守りと攻めの両面で使える現段階では先発品メーカーにとって、AGが有効な戦略オプションとなっている。しかし、バイオシミラーやGE薬が医療機関で信頼性を獲得し、先発品を上回る付加価値製剤を提供できれば、将来的には現状と同じシェアを獲得できるかどうかは分からない。

 

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出典:薬事日報

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