薬剤師会

数量シェア80%は通過点‐日本ジェネリック製薬協会会長 澤井光郎氏に聞く

薬+読 編集部からのコメント

2018年5月に新しく日本ジェネリック製薬協会会長に就任した澤井光郎氏(沢井製薬社長)。
再来年には後発薬のシェア80%が達成されそうだと期待されていますが、4月のルール変更により、カテゴリーがG1に分類された長期収載品は6年でジェネリックと同じ値段になるため、その影響の大きさを指摘しています。

 
5月に日本ジェネリック製薬協会の新会長に澤井光郎氏(沢井製薬社長)が就任した。2020年9月にジェネリック医薬品(GE薬)の数量シェア80%の目標達成が期待される中、吉田逸郎前会長(東和薬品社長)から業界の舵取りで重要なバトンが渡された。4月には長期収載品の新たな薬価算定ルールも導入され、GE薬の普及には不透明感も漂うが、「80%達成はゴールではなく通過点」との姿勢を強調し、国内で安定的にGE薬が使われ続ける環境の構築に力を注ぐ方針だ。澤井氏にGE薬を取り巻く環境に対する認識や、今後のGE薬協での活動方針を聞いた。
1価格帯への集約を懸念‐激変緩和への措置を要望

 

――就任に当たっての抱負。

 

会長に就任する1年前にGE薬数量シェア80%という目標が打ち出された。まずはGE薬協として、シェア80%の目標を達成すべく取り組んでいかないといけない。

 

吉田前会長は、13年4月の「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」策定直後から業界の舵取りをされた。ロードマップでは、長期収載品と後発医薬品を含めた置き換え率の新指標により18年3月末までの5年間で数量シェア目標60%以上が目標として示されたが、11年にほぼ40%だった同シェアは、会長職の退任時には70%近くまで浸透してきた。私に与えられた責務は80%の目標を達成することだと認識しているが、GE薬業界を考えると80%はゴールではなく通過点だ。ゴール設定は、GE薬が安定的に患者さんに届く環境を築くことにある。

 

4月に実施された薬価制度の抜本的改革や国際的な競争環境の熾烈化、原薬の調達コストの高騰など、品質を確保したGE薬を適切な価格で製造していくのが難しい環境変化もある。しかし、環境が変化したとしても、80%に到達した後も日本で製造されたGE薬を安定的に供給していけるよう、業界を挙げてしっかり取り組んでいきたい。

 

昨年策定した「ジェネリック医薬品産業ビジョン」も環境変化を踏まえ、その中身を見直していきたい。

 

GE薬収載後10年が経過した長期収載品の薬価をGE薬の薬価を基準に引き下げる新たなG1、G2ルールが導入され、G1と位置づけられた薬剤は6年が経過すると、GE薬と同じ薬価に引き下げられるため、長期収載品とGE薬の境界がなくなってしまうのではないかと思っている。長期収載品の撤退を可能にする薬価算定ルールだが、長期収載品が撤退しなければ、GE薬に切り替わった薬剤が長期収載品に戻ってしまうこともあり得る。

 

――数量目標80%の達成は可能か。

 

長期収載品とGE薬の境界がなくなっていけば、長期収載品を使い続けたいと考える患者さんも存在するはずで、80%の目標達成は簡単ではないと思っている。生産能力としては可能であるが、楽観視はしていない。

 

貼り薬や点眼薬の剤形は、GE薬への切り替えが進んでいない。医薬品の使用感といった感覚的なものも、患者さんが求める安心感の一つであり、薬剤を選択する上での重要な要素だ。患者さんが使い慣れた長期収載品を選ぶ気持ちは理解できる。製造原価が高い外用剤の改良にはコストがかかるが、GE薬メーカーも患者さんから選ばれる製剤を提供するため、製剤工夫を続けていきたい。

 

――薬価制度に対する要望は。

 

今回の薬価制度改革では、同一組成・剤形区分・規格のGE薬に関して、薬価収載から12年経過したものを原則1価格帯に集約することとされた。企業の安定供給や品質に対する考え方の違いもあり3価格帯になっているにもかかわらず、1価格帯にまとめることの影響は甚大である。1価格帯が導入されると、低価格で販売しているメーカーの医薬品薬価が上がり、適正価格で販売する企業の薬価が下がるといった市場の実勢価格を反映しない現在の価格制度の問題点がより大きくなってしまう。

 

将来のGE薬の安定供給を考えると、1価格帯制度は様々な切り口で影響を与えるため、3価格帯からいったん2価格帯へ集約する激変緩和の措置など柔軟な対応を求めたい。

 

原薬調達は企業連携が可能‐海外施設の調査結果を共有

 

――GE薬協が果たすべき役割は。

 

GE薬80%に向けた使用促進と、80%達成後も安定供給可能な仕組みには、薬価制度が密にかかわる。その中で各社が目指すべきビジョンがある。GE薬協が業界のあるべき姿を明示し、各社が将来に向け走り出していく環境づくりをしていきたい。

 

例えば原薬の調達については、協会加盟企業で連携できるところではないか。日本のGE薬メーカーに対し医療現場からは世界のどの国よりも高い品質が求められているが、原薬の調達コストは高くなっている。品質確保に必要な投資と回収には大きなギャップが生まれている。そのような中、より高品質な原薬調達のため、例えば、医薬品医療機器総合機構(PMDA)による海外原薬製造施設のGMP定期調査の結果について、会員会社間で開示可能なものを共有するような取り組みも始まっている。

 

――80%達成に向けた各地域の医療従事者に対する取り組みは。

 

地域によってGE薬の普及度合いに差があるのが課題であり、厚生労働省、日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会、GE薬協の共催、全国及び開催地の医療関係団体、保険者団体の後援を得て、GE薬の普及が比較的進んでいない大都市を対象に、医療従事者や保険者のパネリストによるパネルディスカッションを行っている。

 

6月には東京、7月には神奈川で開催したが、その場においては医療現場の医師、薬局及び病院の薬剤師の先生方による問題提起や事例紹介に加え、全国健康保険協会からは財政データや同協会データに基づいて、GE薬を使用するメリットや地域の課題などを説明していただき、活発な討論が行われている。こうした地道な取り組みを続けることが、GE薬の普及・啓発につながると思っている。

 

バイオシミラー委員会を設立‐

――GE80%達成後はどういう業界になっているか。

 

基本的には医療現場でGE薬が使われている時代になっていることは間違いない。その後も安定的に使われ続けるためには、既存薬よりも飲みやすくした製剤工夫や、医療従事者や患者さんが安心して使えるための識別性を高めた製剤改良を行い、患者さんに選ばれなければならない。そうすることで、さらに高みを目指すことができる。

 

今後、長期収載品が撤退した場合には、医薬品情報の収集や提供についてGE薬メーカーはこれまで以上に重要な役割を担うことになると認識している。円滑な情報提供、情報収集ができるよう業界団体として検討していきたい。

 

さらに、バイオシミラーの普及に向けても、協会内で4月に「バイオシミラー委員会」を設立した。10社程度のGE薬協会員社が中心となり、内外の他団体とも提携しながら活動を進めていく。ガイドラインやQ&Aについて、必要に応じて業界側の意見を出していく方向だ。

 

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出典:薬事日報

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