処方せん

武田テバの販売中止‐後発薬の安定供給体制 問われる企業姿勢

薬+読 編集部からのコメント

ジェネリック大手の武田テバが、製造販売している後発品53成分103品目について、来年3月で販売を中止すると発表しています。国内で100品目を超える後発薬の販売中止は初めての事態です。
医師や医療現場からは反発の声が上がっていますが、薬局などからは膨大な量の後発品が淘汰されると歓迎の声もあります。

後発薬大手の武田テバが、製造販売している後発品53成分103品目について、来年3月で販売を中止すると発表した。20年以降に特許切れ製品で国内トップを目指す同社は、1製品ごとに品質や供給の問題点を検討し、12年以前に発売した製品で、将来的な安定供給が困難と判断した製品で販売中止を決定したが、国内で100品目を超える後発薬の販売中止は初めての事態。数量シェア80%の目標に向け、後発薬の使用促進が今後正念場を迎える中、国内製薬大手とグローバル後発薬最大手の合弁会社が取った決断が波紋を呼んでいる。

 

過去にはない企業判断‐経済性理由は否定

 

武田テバは、武田薬品の長期収載品を引き継ぐ形で昨年、テバ製薬と武田の合弁会社として設立された。後発薬の低コスト化に必須なテバのグローバル製造・流通基盤と、国内は武田の流通網に一本化し、武田から転籍したMR60人を含む300人のMRが医療機関に情報提供する体制で、新たなGE薬事業モデルとして注目されていた。

 

事業を開始するに当たってまず着手したのが、過去に不祥事を起こした旧大洋薬品の負の遺産からの立て直しだった。合弁会社として発足した昨年4月から武田テバファーマと武田テバ薬品の2社で販売する後発品282成分775品目に関して、安定供給リスクを洗い出し、製剤設計や製造工程の見直し、原薬供給元の変更などの一部変更申請、第三者への製造委託、それらが難しい品目は販売中止と三つの選択肢から検討してきた。

 

その結果、旧大洋薬品を買収した12年以前に開発した製品のうち、現行基準に安定的な適合が難しく、製剤工程や処方を改善しても根本的な改善が難しい製品103品目を選定。国の疑義解釈委員会に諮ったところ、販売中止が認められた。

 

販売中止103品目のうち、同一成分で武田テバグループ内で製造が重複している49品目も含まれる。今回の決断について同社は、「安定供給基準への適合を判断したもので、不採算品などの経済性を理由にした販売中止ではない」と経済的理由を否定。さらなる販売中止は「現時点で計画していない」としているが、品質管理基準から逸脱した品目の可能性に含みを持たせた。

 

医療機関は強く反発‐一部で歓迎する声も

 

将来のGE薬事業を見据え、他の後発薬メーカーにはできない大ナタを振るったともいえる今回の販売中止だが、使用促進に取り組む医療現場からは反発も出ている。大学病院の薬剤部長は、「英断かもしれないが、場当たり的な後発品開発を行ってきたツケ。市場は曲がり角に来ており、長期的な戦略に基づく開発が強く求められる」と指摘する。

 

別の大学病院の薬剤部長からは「改めてテバは“売り手良し”の姿勢で企業活動されていると感じざるを得ない。今後採用することはないだろうし、アポイントなしの訪問禁止措置なども必要ではないか」。また、薬局薬剤師からも「販売中止の理由に安定供給に影響を及ぼすリスクを挙げているが、武田テバも加盟する日本製薬団体連合会のガイドラインからすると、今回の判断はコンプライアンス違反と言えるのではないか。医薬品の安定供給という社会的責任を果たしてもらいたい」との声が出た。

 

これに対して、別の面薬局の薬剤師は「よく決断した。良いことだと思う。異常な数の後発品に困っていたので、これを機に多くの新発売に少しでもブレーキがかかってほしいし、厚労省やメーカーにも対応を考えてもらいたい」と歓迎の意向を示す意見もあった。

 

産業ビジョンとは逆行‐医療機関の認識と乖離

 

後発薬メーカー各社は増産体制に向けて設備投資を続けてきた。安定供給体制は企業存続にかかわる最も大事な要素だからだ。日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)が5月に策定し、業界のあるべき方向性を示した「ジェネリック医薬品産業ビジョン」でも、「GE薬メーカーは、安定供給の継続を約束する。原薬のダブルソースを進めることによりコストアップの問題を抱えるが、品質確保とコストの低減という事項を両立できるよう努力を行う」と言及している。

 

ただ、日本の医療機関が求める水準はそれよりもずっと高い場所にある。GE薬協の吉田逸郎会長は、本紙のインタビューに対し、「ロードマップの検証検討事業の結果を見ると、安定供給に対する考え方はメーカーと医療機関の間では『ずれ』がある。安定供給に対する責任感を持ち、品切れを起こさないよう、即日の配送も相当改善してきた。しかし、医療機関側がGE薬を選択する際に一番求めているのは、『服用しやすい』『識別性が高い』といった付加価値の高いGE薬の継続的な供給であり、安定供給に対する期待が一番のようである。しかし、現状の安定供給の体制には、100%満足していただけていないことも承知している」と述べ、医薬品卸との連携を通じて、安定供給に対する認識の乖離を埋める努力が必要と訴える。

 

実際、国内専業大手は1000品目以上を扱っており、その中には不採算品目も多く抱える。少量多品種の後発薬が増加していることがその一因だが、それでも販売中止に踏み切れないのは、医療機関からの信頼を失うリスクの大きさだ。

 

日医工の田村友一社長も、「製薬企業にとって安定供給は重要な使命。低薬価なジェネリック薬でも絶えず安定供給していくためには、医薬品卸さんにも協力をお願いし、われわれの立場を説明していくことが大切だ。こちらの考え方を理解してもらい、交渉していくためには、医療機関への販売量、数量シェアが必要になる。販売をやめるのは簡単だが、1品目1品目を丁寧に販売していくことが、企業の信頼につながる」と話す。

 

低薬価品扱う企業も‐多様化する後発薬メーカー

 

先発系でもMeiji Seika ファルマが、インドの製造子会社「メドライク」で製造した後発薬の国内販売を担う新会社「Me(エムイー)ファルマ」を設立。インドでの製造で安価な生産コストを実現し、生活習慣病や消化器系疾患治療薬など最低薬価となる可能性が高い後発薬の安定供給を図る。

 

社長に就任した吉田優氏は、都内で開催した会見で、「今後は、毎年薬価改定は避けられない」とし、品目によっては採算性が合わずに市場から撤退する企業が出てくることも見越し、「薬価が下がっても安定供給できる体制をつくる」と述べた。Meijiや他社から採算性が合わないなどの理由で承継した製品を順次提供し、差別化するとしている。

 

武田テバは、グローバルで展開している後発薬事業を導入し、国内でトップの地位を目指している。松森浩士社長は、昨年10月に都内で開催した設立会見で、日本では国内後発薬メーカーが上位を席巻している現状を挙げ、20年以降に日本市場でコスト対応の面で後発薬メーカー間の統廃合が起こり、そこで商機が生まれると予測した。

 

その上で「再編が起こるときには、いったん医療機関への販売、口座が解放されて再分配され、信用できる会社に処方が移っていき、自然と市場シェアを拡大できるのではないか」と指摘した。後発薬のビジネスが多様化し、安定供給に対しても、様々な考え方が出てきているが、医療機関から選ばれるには、“信用できる会社”という数字で見えづらい企業価値が、より一層大きなポイントになりそうだ。

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出典:薬事日報

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