創薬・臨床試験

長期収載品「役割大きい」‐GE薬と相互補完関係に

薬+読 編集部からのコメント

都内で開かれた会議で、ジェネリック医薬品(GE薬)産業の展望について議論されました。
「長期収載品とGE薬は噛み合った歯車としてお互いが役割をもって存在するべき」「長期収載品市場は縮小しているが、まだ2兆円の規模がある」など、肯定的な意見がみられました。

立命館大学創薬科学研究センターの製剤技術研究コンソーシアム研究会が8月25日、京都市内で開かれた。ジェネリック医薬品(GE薬)産業の展望をテーマに製薬会社の幹部らが講演。近年、新薬メーカーが長期収載品をGE薬メーカーなどに承継する動きが相次ぐ中、その存在意義について「長期収載品の役割は大きい。長期収載品とGE薬は噛み合った歯車としてお互いが役割をもって存在するべき」「長期収載品市場は縮小しているが、まだ2兆円の規模がある」など前向きな発言が相次いだ。

 

武田薬品から承継した長期収載品事業とGE薬事業をグループ全体で手がけている武田テバファーマの松森浩士CEO兼社長は「ビジネスを新薬と特許切れ医薬品に分けて考える動きが約10年前から欧米のグローバル製薬会社で始まり、最近日本でも活発化している」と話した。

 

これまで日本の新薬メーカーが長期収載品を保有してきたのは「その領域の新たな低分子医薬品を開発、販売することができていたから」と指摘。現在は、GE薬の拡大に伴う市場縮小に加えて、低分子医薬品の新薬の枯渇によって得意領域を守れなくなってきており、こうした要因が長期収載品の承継に踏み切る動きの背景にあるとした。

 

市場は縮小しつつあるものの「長期収載品はGE薬の母船のような存在だと思っている」と松森氏は強調した。特許が切れた後も長期収載品を取り扱う製薬会社は、発売当初から収集してきた安全性や効果に関する情報、医療従事者とのQ&A情報などを維持し、新たな情報も収集。これらの膨大な情報に基づいて医療従事者の問い合わせに回答するなど、縁の下の力持ちとして大きな役割を担っている。

「これは日本だけにある非常にいい仕組み。この仕組みは崩すべきではない」とし、「長期収載品がなくなってもいいような議論がされるが、そうなると医療従事者が困るし最終的には患者が困る」と言及。GE薬にとっても、必要な情報を補完している「長期収載品の役割は大きい」と語った。

 

薬価制度改革の方向性について松森氏は「長期収載品の薬価をGE薬に統一するという案があるが、スペインの事例ではその結果GE薬への切り替え率は激減した。必ずしもいい案ではない」と指摘。一方、長期収載品とGE薬の薬価の差額を患者が負担する案には「これをやると長期収載品が限りなく減少する。それが本当に国民にとっていいことなのか。長期収載品の情報の管理は一体誰がどう担うのか」と投げかけた。

 

一方、アステラス製薬から長期収載品16製品を承継する契約を今年3月に交わしたLTLファーマの岡三生会長は「新薬市場、GE薬市場、オーソライズドジェネリック市場という三つの市場に加えて長期収載品というプラスαの市場がある」と言及。GE薬の使用拡大を受けて長期収載品市場は縮小しているものの、依然として約2兆円もの市場規模があると語った。

 

同社は長期収載品に特化したビジネスモデルを構築している。製品のプロモーションは行わず販売管理費を削減。医薬品の製造や安全性情報の収集、顧客対応、学術支援業務などは外部に委託する。社員数は約20人にとどめて低コストで運営する体制を実現し、低薬価下でも利益を確保できるという。

 

岡氏は「今後も新薬にリソースを集中するために長期収載品を切り出す製薬会社は出てくる。これを取り込むことによってビジネスを長期間維持できる。現在も数社から打診を受けている」と説明。5年後には約500億円規模の売上高を目指す考えを示した。

 

今回、会員向けの講演会を開いた製剤技術研究コンソーシアム研究会は、立命館大学薬学部がある滋賀県内の地場製薬会社を支援する目的で約5年前に発足。講演会形式の研究会を開いたり、アドバイザーによる技術相談制度を設けたりして製薬会社が抱える課題の解決を支援してきた。現在、製薬会社など47社が参加している。

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出典:薬事日報

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