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3200億円で英社と戦略的提携~「ラツーダ」対策へ過去最大投資

薬+読 編集部からのコメント

2023(令和5)年2月をもって、収益の柱である非定型抗精神病薬「ラツーダ」の北米における独占販売期間が終了する大日本住友製薬が「次なる一手」として、英ロイバントサイエンスの創薬技術や子会社5社の株式取得に向けた戦略的提携の基本合意を締結。大日本住友製薬にとって、過去最大級の投資規模となる約3200億円を支払う見込みです。傘下に収める子会社が開発中の婦人科、泌尿器科、小児希少疾患、呼吸器系希少疾患などの医薬品獲得も狙いとなります。

大日本住友製薬は6日、英ロイバントサイエンスの創薬技術や子会社5社の株式を取得する戦略的提携の基本合意を、同社と締結したと発表した。10月末をメドに正式契約を締結する予定で、取得金額は約3200億円程度になる見込み。子会社が開発中の婦人科、泌尿器科、小児希少疾患、呼吸器系希少疾患などの医薬品を獲得するのが狙いの一つ。全売上の約4割を占め、収益の柱である非定型抗精神病薬「ラツーダ」の北米での独占販売期間が2023年2月に終了するため、ポスト・ラツーダ対策が大きな経営課題となっていたが、今回の提携で課題を解決できると判断。過去最大となる巨額資金を投じて戦略的提携に踏み切った格好だ。

 

■開発品と創薬技術を獲得

大日本住友は、ロイバントから子会社5社の株式を取得するほか、独創的な創薬技術やヘルスケアIT技術に長けた人材を獲得する。戦略的な提携関係を強固にするため、ロイバントの株式の10%以上を取得する見通し。対価として、同社にとって過去最大の投資規模となる約3200億円を支払う見込みだ。

 

株式を取得するのは、婦人科、泌尿器科、小児希少疾患、呼吸器系希少疾患などの領域で医薬品を開発する5社の子会社。保有する開発品の一つ、経口ゴナドトロピン放出ホルモン受容体拮抗薬剤のレルゴリクス(一般名)は、子宮筋腫を適応症として19年度内に米国で承認申請する予定。β3アドレナリン受容体作動剤のビベグロン(一般名)は、過活動膀胱を適応症として19年度に米国で申請予定だ。各社は他にも臨床開発段階の医薬品を複数保有している。

 

野村博社長(写真)は同日、都内で開いた記者会見で、「ポスト・ラツーダ品目の創出や獲得が課題だったが、今回の提携でこの課題は解決できる」と強調。「獲得するパイプラインにはピーク時に1000億円以上の売上に達する見込みのある医薬品も含まれている」と期待感を示した。今年4月に発表した5カ年の中期経営計画は今後、見直す予定である。

 

提携には、ロイバントが保有する子会社のうち、さらに6社の株式取得を交渉できる権利も含まれている。今後の交渉によっては合計11社の子会社を取得し、25品目以上の開発品を獲得できる可能性があるという。

 

ロイバントからは、独創的な創薬技術も獲得する。ロイバントは、様々な構造化・非構造化データを関連づけた大規模なデータベースをもとに、▽医薬品の標的の探索▽市場における価値の推定▽効率的な臨床試験デザインの構築――などを支援するプラットフォームを保有している。これらの技術を大日本住友に移転する。

 

さらに、ヘルスケアIT技術を駆使し、製薬企業の各部門の様々な課題を解決できる人材も合わせて獲得する。

 

ロイバントのヘルスケアIT子会社が持つ各種データベースを関連づける技術やビッグデータ解析によって医薬品営業活動を効率化する技術とも連携して、新薬開発の効率化やデジタルトランスフォーメーションの加速につなげる考えだ。

 

野村氏は「基礎的な研究段階で見出した有望な候補品を、今後どのように開発していくべきなのか、どんな薬に仕上げていくべきなのかなども予測できるだろう。伝統的な研究や開発の方法が、がらりと変わると期待している」と話した。

 

 

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出典:薬事日報

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