医療

【近森病院調査】卒直後研修を9割強が肯定~適切な期間に「1カ月」「2週間」

薬+読 編集部からのコメント

近森病院薬剤部が高知県内の137薬局に実施した調査によると、薬局薬剤師の9割強は病院での卒直後研修の実施を肯定的に捉えていることが明らかになりました。一方で、厚生労働省から適切な卒直後研修の期間について「3カ月」や「1年」との見解が示される中、人的余裕がない薬局を中心に「1カ月」や「2週間」との回答も多く、中央の動きと現場の薬局薬剤師との認識の差が浮き彫りになっています。

1人薬剤師薬局は難色

薬局薬剤師の9割強は病院での卒直後研修の実施を肯定的に捉えていることが、近森病院薬剤部が高知県内の薬局を対象に実施した調査で明らかになった。ただ、薬剤師数が少なく人的余裕がない薬局では、卒直後研修を受けさせたいと思わないと回答する割合が全体平均に比べて高かった。適切な卒直後研修期間についても「1カ月」や「2週間」との回答が多かった。厚生労働省の研究や事業で、適切な卒直後研修の期間について「3カ月」や「1年」との見解が示される中、中央の動きと現場の薬局薬剤師との認識の差が浮き彫りになった。


調査は今年2月、高知県薬剤師会の会員薬局を対象に実施。調査依頼をFAXで送信し、137薬局から回答があった。

 

薬局で採用した新卒薬剤師に病院での卒直後研修を受けさせることへの捉え方を聞いたところ、「肯定的」と回答した割合は91.2%、「否定的」は6.6%で、肯定する見解が大多数を占めた。肯定的と回答した理由を聞くと「薬局で学べないことを学習する機会への期待」「薬薬連携が進む」などの声があった。

 

一方、実際に卒直後研修を受けさせたいと思うかと聞いたところ、「思う」は73.0%、「思わない」は19.7%で、前向きに捉える割合は低下した。受けさせたいと思わない理由として「人的余裕がない」を挙げる意見が多かった。

 

回答した薬局のうち、常勤薬剤師数が1人の薬局は約36%を占めている。その薬局では「思わない」と回答する割合が全体平均に比べて高く、27.7%に達していた。卒直後研修の意義は認める一方、薬剤師数が少ない薬局ほど現実的には実施が難しいと答える割合が高かった。

 

新人教育プログラムは「ない」と回答した薬局は63.5%、「ある」は28.5%だった。

 

卒直後研修で学んでもらいたい内容は、チーム医療、薬薬連携、服薬指導が上位を占めた。薬剤師が今後注力すべき業務を研修で身に付けてほしいとの期待が強かった。

 

適切な卒直後研修の開始時期は、4月と10月の意見が多かった。4月から開始し病院で基礎業務を学んでほしいという考えと、薬局で基礎業務を修得した上で病院で応用業務を身に付けてほしいとの考えが反映される結果になった。

 

適切な卒直後研修期間については「1カ月」や「2週間」の意見が多く、「半年間」「1年間」は少数にとどまった。

 

現在、厚労省が中心になって卒直後研修の制度化の可能性を検討しているが、具体的な研修期間として「3カ月」や「1年」の案が出ている。今回の調査では、「1カ月」や「2週間」との意見が主流で、卒直後研修のあり方について認識の差があることが明らかになった。

 

厚労省の「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」は2021年6月に公表した提言で、薬剤師の臨床実践能力を担保するために「免許取得直後の医療機関や薬局での臨床での研修により、薬剤師として様々な施設を経験し、医療の実態を知ることが重要」と指摘。「研修制度の実現に向けて、研修プログラムや実施体制等の具体的な方法を今後検討すべき」としている。

 

21年度まで実施された厚労省の「薬剤師の卒直後研修カリキュラムの調査研究」の研究班は、12週以上の研修を行うよう提案。厚労省事業として、日本病院薬剤師会が21年度に実施した「卒後臨床研修の効果的な実施のための調査検討事業」では、病院をベースに薬局を含めた1年間の研修の実施が望ましいと提案している。

 

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出典:薬事日報

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