医療

薬学科に地域枠入試創設~県内の薬剤師不足解消へ【富山大学薬学部】

薬+読 編集部からのコメント

医薬品産業が基幹産業でありつつ薬剤師不足に直面している富山県では、2024年度入学者選抜から薬学部薬学科で富山県内高校出身者を対象とした「総合型選抜I(地域枠)」を実施します。定員は10人で、富山県内で地域医療や製薬企業で活躍する人材を輩出するのが狙いとなっています。選抜方法は、学力という統一的な基準ではなく人物重視で行われます。

富山大学は、2024年度入学者選抜から薬学部薬学科で富山県内高校出身者を対象とした「総合型選抜I(地域枠)」を実施する。定員は10人で、薬剤師不足に直面する県内で地域医療や製薬企業で活躍する人材を輩出するのが狙いだ。低学年次には県厚生部や製薬企業から講師を招聘し、県内の薬事行政や製薬企業の事業を学ぶ機会を提供。3年次以降には、富山ゆかりの薬・製剤の調査、製薬企業へのインターンシップ、病院・行政・薬局の見学ローテションなどを通じて地域に密着した教育を展開していく。

 

富山県は、医薬品産業が基幹産業だが、薬剤師不足に直面している。10~20年における人口10万人当たりの薬剤師数増加率は全国平均が18.2%増であるのに対し、富山県は1.3%減と全都道府県唯一のマイナスとなっている。人口1000人当たりの6年制薬学部在籍者数も全都道府県中最下位だ。

 

20年度における県内の薬剤師採用確保状況を見ると、公的病院の求人に対する採用の充足率が44.9%、行政(富山県庁)が40.0%、製薬企業の管理薬剤師が40.7%にとどまるなど深刻な状況にある。

 

富山大は、09年頃から薬学部薬学科に県出身者を対象とした地域枠の入試制度を県に要望してきたが、今回薬剤師の地域偏在が問題化する中でようやく県からの承認が得られた。

 

選抜方法は、学力という統一的な基準ではなく人物重視で行う。薬剤師資格取得後に、薬剤師として県内の地域医療や製薬産業に貢献するという強い意志を持つ人、合格した場合に入学が確約できる人が出願要件となる。第1次選抜で書類審査と小論文・適性検査、最終選抜では第1次選抜合格者に対し、面接とプレゼンテーションを課す。県内の医療・医薬品産業を牽引する意欲のある学生かを見極める。

 

合格者を選抜し、12月から翌年3月の入学前には、「薬の富山」を理解できるよう県の厚生部くすり政策課と連携した体験学習を行う。

 

入学後は、県や県薬剤師会、富山県薬業連合会などと連携した薬学教育を展開していく計画だ。「地域創生コース(仮称)」に所属し、県や関係団体等の協力のもと、県内製薬企業へのインターンシップ、県内病院・行政・薬局の見学ローテーションなど、地域が必要としている医療人として活躍する薬剤師を志す学生をフォローアップする。4年次には県と連携し、将来的に目指す職種に応じてインターンシップのマッチングを行う。

 

卒業後に富山県に定着する体制の構築に向け、地域枠で入学した学生を対象に、一定の要件で返済を減免する奨学金制度の創設を県に改めて要望するとしている。

 

富山大は、昨年4月に創薬研究者などを養成する創薬科学科(4年制)の定員を50人から35人に減らした一方、薬学科は55人から70人に増員するなど改革を進めてきた。今回、創設する地域枠の入学定員数は10人とし、一般選抜の定員を45人から40人、学校推薦型選抜を15人から10人に減らした。

 

薬剤師免許取得後も大学に残って大学院博士課程(4年制)へと進む学生を入学選抜時点で受け入れていくため、昨年4月に新設した「総合型選抜」(定員10人)については「総合型選抜I(研究者養成枠)」に名称変更する。

 

酒井秀紀薬学部長は、「薬学科の入学定員数増員、研究者養成枠の総合型選抜、地域枠と三つの取り組みで枠組みを作ることができた。今後は人材を育成していくことに注力していきたい」と話す。

 

地域枠で選抜する10人については「卒業後に病院薬剤師や製薬企業で働くというだけではなく、地域医療や県内の医薬品産業を盛り上げる核となるメンバーに育てたい」と意欲を示している。

 

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出典:薬事日報

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