薬の流通経路と在庫可視化~プラットフォーム運用を検証【日本IBM】
日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は、製薬企業の工場出荷から医療機関・薬局における処方・調剤、患者の使用まで、医薬品の流通・在庫状況を可視化するプラットフォームの検討を本格化する。ブロックチェーン技術の活用により、GDPに基づく適正流通、地域の安定供給、災害時のBCP対応の確保を図る。まずは今月から、国内大手の製薬企業、医薬品卸、物流企業、医療機関・薬局の参加を得て、メーカー出荷製品の納品を受けた卸を起点とし、医療機関までの流通・在庫・使用情報を可視化する運用検証を来年3月まで9地域で行う。地域フォーミュラリの策定支援機能の開発も進める。
地域フォーミュラリ支援も
流通過程を可視化するトレーサビリティは各社レベルで行われているが、全てのメーカー、物流、卸、医療施設を対象に一気通貫で可視化するシステムはないのが現状だ。同社担当者は「日本全国をカバーする公共の単独プラットフォームにしたい」と話している。実用化のメドは未定で、実用時には同社以外の運営を想定する。
同社以外の検証参加企業には、製薬企業が塩野義製薬、武田薬品、田辺三菱製薬、ファイザー、沢井製薬、武田テバファーマ、日医工、他2社(非開示)、医薬品卸がアルフレッサ、スズケングループ(スズケン、エス・ディ・コラボ)、東邦ホールディングス(HD)、メディパルHD、バイタルケーエスケーHD、フォレストHD、ほくやく・竹山HD、物流企業が日本通運、日立物流、三井倉庫HD、三菱倉庫と、日本の代表的企業が並ぶ。
医療施設は、山形県の地域医療連携推進法人「日本海ヘルスケアネット」など地域単位で参加する。
プラットフォームでは、毎日出荷された医薬品について、処方・調剤、在庫などの状況を可視化する。流通情報は競合社の情報が見られないよう、メーカーは自社製品だけ、卸は取引のある製品のみ、医療機関・薬局は自施設(在庫数量含む)と地域内の他施設(在庫の有無のみ)に限るデータアクセス権限を付し、これらが実用的かを検証する。在庫の偏在を減らせるかも見ていく。
現時点でプラットフォームに載せる情報は、卸への納品情報として商品名、商品コード、ロット番号、有効期限、受入日、払い出し日、数量、地域(市町村レベル)などを想定する。
医療機関の使用情報は、商品名、商品コード、ロット番号、有効期限、処方箋ID、処方箋発行医療機関コード、処方箋発行日と受取日、処方量、調剤施設コード、調剤日、調剤量などを想定。出荷調整中の有無も確認できるようにする。
情報入力は各社システムと自動連携する仕組みを作る予定。
プラットフォームの医療施設における使用情報の応用も検討する。その一つとして、地域フォーミュラリの策定支援機能の開発も進める。メーカーからの製品情報の提供協力も得ながら、製品の評価、同効薬比較などができるようにし、フォーミュラリ作成の作業負担の軽減を図る。
この取り組みは、2018年に製薬企業や医療機関など約20の企業や団体と設立したコンソーシアム「ヘルスケア・ブロックチェーン・コラボレーション」(HBC)で検討してきた「医薬品データプラットフォーム」に基づく。20年には、日本海ヘルスケアネットの協力により、データプラットフォーム、地域フォーミュラリの推進機能に関する検証も行った。
同社は、検証結果をもとに厚労省や関連業界団体、アカデミアにプラットフォームの活用などを働きかけていくとしている。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
日本IBMでは、製薬企業の工場出荷から医療機関・薬局における処方・調剤、患者の使用まで、医薬品の流通・在庫状況を可視化するプラットフォームの検討を本格化します。これはブロックチェーン技術の活用により、GDPに基づく適正流通、地域の安定供給、災害時のBCP対応の確保を図るものとなっています。まずは4月から2024年3月まで9地域で運用検証が行われます。