医療

薬局薬剤師の研修受入拡充~資格者増で地域医療底上げ

薬+読 編集部からのコメント

佐賀大学病院薬剤部では、今年度より佐賀県と連携し、薬局薬剤師の研修受け入れ体制を拡充していきます。薬系大学がない佐賀県において、充実した卒後研修体制を構築することで、薬剤師の確保や定着につなげる狙いもあります。研修生指導を担当する薬剤師を新規に採用し、6月1日付で薬局で勤務していた日本臨床腫瘍薬学会「外来がん治療専門薬剤師」の資格を持つ30代男性薬剤師が着任しました。

佐賀大学病院薬剤部は、今年度から佐賀県と連携し、薬局薬剤師の研修受け入れ体制を拡充する。研修生の指導を担当する薬剤師を新規に採用し、1日付で薬局で勤務していた日本臨床腫瘍薬学会「外来がん治療専門薬剤師」の資格を持つ30代男性薬剤師が着任した。昨年度に独自に立ち上げた1年間の薬局薬剤師向け研修や、各学会の認定資格取得に必要な研修の受け入れを通じて薬局薬剤師の質を高め、地域医療の底上げを図る。薬系大学がない佐賀県で充実した卒後研修体制を構築することで、薬剤師の確保や定着につなげる狙いもある。

 

佐賀県は、今年度の予算に新規事業「地域薬剤師リカレント教育環境整備事業」として、佐賀大病院での薬局薬剤師の研修等を支援する目的で補助金約510万円を計上。2025年度まで3年間のプロジェクト期間中、必要な費用の半分を県が負担することを決めた。県の財源には地域医療介護総合確保基金を活用する。

 

同院薬剤部は、これまで薬局薬剤師を含む地域全体の薬剤師の研修受け入れを積極的に推進してきたが、602床の同院で薬剤師42人が日常業務と並行して受け入れている状況で、研修の範囲には限度があった。

 

課題解決に向けて、同院の島ノ江千里教授・薬剤部長が中心になって県に相談。臨床研究の推進など薬剤部の機能を高めつつ、スタッフの疲弊を招くことなく研修受け入れ体制も拡充したいと働きかけ、支援を取り付けた。

 

島ノ江氏は、専門薬剤師の資格を持ち、研修生の指導を担当する薬剤師の着任によって「研修の体系化や質の向上、効率的な運用が実現する」と期待を語る。薬局薬剤師目線での研修内容の充実も進める。

 

併行して、同院薬剤部の薬剤師を指導者として育成する。薬剤部全体の指導力を強化し、研修生の受け入れ能力を高める考え。今回着任した薬剤師は、3年間のプロジェクト終了後は前勤務先の薬局へ戻る見込みで、それまでに体制を整備する。

 

同院薬剤部は、主に薬局薬剤師向け研修として、日本医療薬学会地域薬学ケア専門薬剤師、日本臨床腫瘍薬学会外来がん治療専門薬剤師などの資格取得に必要な研修を積極的に受け入れている。5年以上の研修が必要な地域薬学ケア専門薬剤師の研修では1年間に2人ずつ受け入れ、現在計6人が研修中。外来がん治療専門薬剤師の研修受け入れも今年度から開始し、現在1人が研修を受けている。

昨年度は独自の「薬局薬剤師臨床研修制度」を立ち上げた。県内の薬局に勤務する薬剤師を受け入れ、基礎と応用で半年ずつ計1年間の研修を行うもの。高い能力を持つ薬局薬剤師のジェネラリストを育成するのが狙いだ。実務経験の条件は3年以上とし、若年層でも受けられる制度にした。昨年10月から2人の薬局薬剤師が研修を受けており(写真㊧)、今年9月に修了する見通しだ。

 

このほか、研修事業の一環としてキャリア支援セミナーを年1回以上開催する。地域の薬局や病院に勤務する薬剤師を対象に、同院で研修を受けた薬剤師が動機や意義を発表。参加者に自身のキャリアを改めて考えてもらい、研修受講や資格取得を促す。

 

島ノ江氏は、「取り組みによって患者に届ける医療を変えたい」と語る。研修を受けた薬局薬剤師自身の資質が向上するだけでなく、「周囲への波及効果も期待できる」と強調。退院後の患者の生活に薬局薬剤師が寄り添って支援するなど、「地域全体のシームレスで質の高い医療体制の構築につなげたい」と話している。

 

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出典:薬事日報

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