医療

第3世代セフェムを大幅減~歯科外来で薬剤師が介入

薬+読 編集部からのコメント

2017年度より歯科外来において薬剤師主導で経口抗菌薬の適正使用プログラムを導入している東京医科歯科大学病院では、経口第3世代セフェム系抗菌薬の処方割合を全体の約5割から1%台まで減らすことに成功しました。薬剤師による歯科医師へのフィードバックを継続的に行い、薬剤師の介入が抗菌薬選択の改善に寄与したことが示された形となりました。

東京医科歯科大学病院は、2017年度から歯科外来において薬剤師主導で経口抗菌薬の適正使用プログラムを導入し、経口第3世代セフェム系抗菌薬の処方割合を全体の約5割から1%台まで減らすことに成功した。薬剤師による歯科医師へのフィードバックを継続的に行った結果であり、薬剤師の介入が抗菌薬選択の改善に寄与したことが示された形となった。

研究結果は、同大学・統合臨床感染症学分野の田頭保彰氏(写真㊧)らの研究グループが明らかにしたもの。歯科外来診療では、感染症治療や抜歯後の感染予防等を目的として抗菌薬が処方されており、抗菌薬適正使用ガイドラインではペニシリン系が第一選択薬として推奨されている。

 

一方、同院では本来推奨されていない経口第3世代セフェム系が非常に多く処方されており、介入開始前の15年4月には「100抗菌薬処方当たりの処方割合」で約半数を占めていた。

 

16年に厚生労働省からAMR対策アクションプランが発出され、経口第3世代セフェム系の削減目標が設定されたことなどをきっかけに、研究グループは薬剤師主導で抗菌薬適正使用プログラムを計画。17年度から歯科全診療科に対して多面的に介入を行った。

 

具体的には、外来で院内処方の入力があった時点で直接処方医に電話をして情報提供、院外処方箋については電子カルテを利用した文書による情報提供を行った。また、大学の歯学部学生に対して、病院での実務実習を通じて抗菌薬の適正使用や薬剤耐性に関するミニレクチャーを行った。

 

15年度から21年度の外来処方件数データを収集し、解析を行ったところ、100抗菌薬処方に占める経口第3世代セフェム系の処方割合は、15年4月の約半数から最終年度の1年間は平均1%台と大幅に減少した。

 

一方、使用が推奨されているペニシリン系は約35%から最終年度の平均は93%となった。その他の広域抗菌薬も低下傾向を認め、ペニシリンアレルギーの代替薬として用いるクリンダマイシンも適切に処方されるようになった。

 

田頭氏は、「歯科医師に対する直接的かつ迅速なフィードバックは、抗菌薬処方に関する知識や問題意識を改善し、行動変容につながった可能性がある」と薬剤師の介入を評価する。

 

高齢者人口の増加と共にポリファーマシーの患者も増えており、「相互作用や投与量の調節などが複雑化している」とし、臨床現場での薬剤師の役割について「薬剤師には医薬品のスペシャリストとして、医師や歯科医師に適切なフィードバックを行うなど、積極的に臨床現場に関わってもらいたい」と期待感を示した。

 

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出典:薬事日報

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