医療

広島で地域フォーミュラリ~備北地区、来月6領域に

薬+読 編集部からのコメント

地域フォーミュラリの取り組みが、広島県の備北地区(三次市、庄原市)でスタートしました。8月末からスタチンなど3領域で運用を始め、12月上旬には新たに3領域を追加する見通しです。医師主導型の取り組みとして策定や運用は順調に進展しており、今後は実際の処方の変化が焦点になりそうです。

 医師が主導し運用進展

広島県の備北地区(三次市、庄原市)において地域フォーミュラリの取り組みがスタートした。同地区の4病院で構成される地域医療連携推進法人「備北メディカルネットワーク」が今年度、広島県からモデル事業の委託を受けて取り組みを開始し、8月末からスタチンなど3領域で運用を始め、12月上旬には新たに3領域を追加する見通しだ。医療資源の乏しい同地区では、病院や診療所間で連携しようとする医師の意識が強い。医師主導型の取り組みとして策定や運用は順調に進展しており、今後は実際の処方の変化が焦点になりそうだ。

 

7月に、備北メディカルネットワークが事務局となって「備北地区地域フォーミュラリ委員会」が発足。同地区の病院長や医師会、歯科医師会、薬剤師会の会長ら8人が委員に就き、討議を重ねてきた。同委員会のもと設置したワーキンググループで、各病院の診療科長や薬剤部長ら15人が原案を作成。オブザーバーとして参加した日本フォーミュラリ学会、広島県の薬剤師会や病院薬剤師会関係者の意見も得て、内容や運用方法をまとめた。

 

まずは取り組みやすく合意が得られやすい領域に対象を絞り、8月末に第1弾となる地域フォーミュラリとして、▽スタチン▽アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)▽経口酸分泌抑制薬(PPI、P-CAB)――の3領域を策定した。複数の推奨薬やオプションでの使用薬を一般名で提示し、後発品が推奨対象になると明記。推奨薬の順位づけも行った。

 

現在、新たに▽α-グルコシダーゼ阻害薬▽消炎・鎮痛薬▽第2世代抗ヒスタミン薬――の3領域を対象にフォーミュラリの策定を進めており、関係者間でほぼ合意に達した。12月上旬に運用を始める計画だ。

 

日本フォーミュラリ学会が公表するモデルをたたき台に検討を進めたことで、短期間で効率的に策定できた。同学会のモデルでは採用されていても地域での使用量が低い薬剤は外すなど、地域性も考慮している。

 

備北は医師数や医療機関の数が少ない地区だ。こうした背景から、2017年に複数の病院が協力して医師らの確保や育成、地域医療体制構築などに取り組む備北メディカルネットワークが発足した。地域フォーミュラリ策定も視野に入れていた中で広島県のモデル事業地域に選ばれ、具体的な取り組みが始まった。

 

市立三次中央病院院長で医師の永澤昌氏は、「診療所と病院で処方が一致しなければ、入院時に病院では採用していない薬を患者が使用していたり、退院時にその逆のことが起こったりする。地域の中でなるべく同じ薬を使うことで、標準的な治療を行えるようにするのが趣旨」と語る。

 

一般的には、医師の理解不足が地域フォーミュラリ策定のハードルになる。同地区では施設の壁を越えて連携しようとする医師の意識が強く、策定から運用開始までの作業は円滑に進んだという。

 

今後は、地区全体にいかに浸透させるかが課題だ。9月に地区の医療従事者らを対象に説明会が開かれたほか、基幹病院のウェブサイトで地域フォーミュラリを公表した。A4サイズ用紙で複数ページに及ぶ各フォーミュラリの要点を1枚にまとめた簡易版も作成した。病院や診療所の診察室等に貼付し、活用してもらう想定だ。

 

今月~12月の処方動向について、前年同期と比べた変化を追跡して効果を評価する。医療従事者の理解度の運用開始前後での変化も調査する。

 

備北メディカルネットワーク代表理事で医師の中西敏夫氏は、「フォーミュラリは強制ではなく、お願いする格好になる。強制力を持ったやり方はしていない」と話す。

 

永澤氏は「長い目で変わっていくものだと思う。地区の大きな4病院が一致した動きをすることが第一。それによって自然に統一されるのではないか。処方動向の集計で各病院の処方の癖が分かる。それを踏まえた情報発信もしていきたい」と語る。

 

広島県は、モデル事業を踏まえ全県下での展開を見据えるが、早急に推進するのではなく、モデル事業の成果や課題の検証を経て、今後の方向性を検討する考えだ。

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出典:薬事日報

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