医療

認知症有病率60年に18%~現在より200万人超増加 厚生労働科学研究班

薬+読 編集部からのコメント

2060年の認知症患者数が現在より200万人超増えて約645万人となる将来推計を、厚生労働科学研究班が公表しました。有病率も17.7%と5ポイント増加する一方、従来の将来推計に比べると患者数・有病率共に低値になっています。

九州大学大学院医学研究院の二宮利治教授を班長とする厚生労働科学研究班は8日、2060年の認知症患者数が現在より200万人超増えて約645万人となる将来推計を公表した。高齢化の進行を背景としたもので、有病率は17.7%と5ポイント増加する一方、健康意識の変化や生活習慣病に対する治療法の改善により、従来の将来推計に比べて患者数・有病率共に低値となったと分析している。

 

将来推計は、研究班が実施した「認知症および軽度認知機能障害(MCI)の有病率調査」の結果を踏まえたもの。調査では22~23年に福岡県久山町、石川県中島町、愛媛県中山町、島根県海士町の4地域に居住する65歳以上の住民を対象に、会場調査と訪問調査により認知症と認知機能低下が見られるものの日常生活における支障はないMCIの診断を行った。

 

認知症・MCIの有病率が25年以降も一定と仮定した場合における国全体の患者数と有病率の将来推計は、22年時点における認知症患者数は約443万人(有病率12.3%)だが、30年は約523万人(14.2%)、40年は約584万人(14.9%)、60年は約645万人(17.7%)に上るとした。MCIも22年の約559万人(15.5%)から増加し続け、60年には約632万人(17.4%)に達するとした。

認知症に関する従来の将来推計では、30年の患者数が約744万人(20.2%)と今回の推計よりも高値だったが、二宮氏は「健康意識の変化や00年代からの生活習慣病に対する治療方法の改善が影響を与えているのではないか」と分析。「症状の進行を防ぐためには非薬物療法が非常に大事。健康を意識した生活を送ることが健康長寿の社会実現には重要と示している」とした。

 

調査結果を見ると、性年齢調整後の認知症の有病率は、久山町12.6%、中島町11.6%、中山町12.7%、海士町13.3%で、4地域全体では12.3%だった。

 

09~12年に筑波大学医学医療系の朝田隆教授による厚労科学研究班が実施した全国調査における認知症の推定有病率15%と比べて低値となったが、二宮氏は「MCIから認知症に進展した人の割合が低下したのではないか」と分析。背景として、喫煙率の低下、中年期から高齢早期の高血圧や糖尿病、脂質異常等の生活習慣病管理の改善、健康意識の変化により認知機能低下の進行が抑制され、有病率の低下につながった可能性があるとした。

 

有病率を性別で見ると、80代半ばまで差はなかったが、85~89歳では男性が25.2%だったのに対して、女性は37.2%、90歳以上では男性36.6%、女性55.1%に上った。二宮氏は「明確な理由は不明」としつつ、「女性の方が長寿の傾向があること、自宅で生活する人が多く社会とのつながりが希薄になることなどがあるのではないか」との見方を示した。

 

MCIの有病率を見ると、久山町14.6%、中島町11.7%、中山町10.5%、海士町25.7%で、4地域全体では15.5%だった。

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出典:薬事日報

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