薬学部の新入生募集停止~入学者確保見込み立たず 医療創生大学
福島県いわき市の医療創生大学は、2026年度から6年制薬学部薬学科の新入生募集を停止すると発表した。この10年間で入学定員数を満たしたのは15年度のみで、24年度新入生の入学定員充足率は50%を割り込むなど今後も改善する見通しが立たないことから決断した。薬学部の入学者募集停止は、25年度に実施予定の姫路獨協大に続き2校目。私立薬系大学の定員割れが問題視される中、大学関係者からは「今後も入学定員の減員、淘汰が進むのは必至」との観測も出ている。
同大は急速に進む人口減少を踏まえ、いわきキャンパスの学部学科を再構成して新体制で運営するため、26年度以降に薬学部薬学科の新入生募集を停止することを昨年12月の理事会で決定した。1987年に前身のいわき明星大学を開学して以降、複数の学部学科で新入生の募集を停止しており、直近では2019年に教養学部地域教養学科が募集停止に追い込まれている。
現行の看護学部看護学科、健康医療科学部作業療法学科・理学療法学科、心理学部臨床心理学科の3学部4学科に関しては、26年度から「総合医療学部(仮称)」に統一し、いわきキャンパスは同学部に一本化する。
薬学部薬学科では07年の開設から現在まで513人が薬剤師免許を取得し、地域の病院、薬局、県庁職員等に卒業生を送り出してきた。一方、18歳人口の急激な減少を背景に入学生の確保では苦戦が続いた。入学定員を満たしたのは15年度だけで、24年度新入生の入学定員充足率も46.7%にとどまる。
近年の入学者数は22年度41人、23年度38人、24年度28人と減少が進み、同大は「苦渋の決断だが、入学定員の充足が見込めない」として、26年度以降の募集停止に踏み切った。
同大は、本紙の取材に対し「定員の充足見込みが立たない中で、募集停止を考えていた」と説明。在学生と25年度入学生への対応については、「卒業まで面倒を見ることを既に学生と保護者には説明している。26年度以降の新体制でも、地域のニーズに応えられるよう地域医療に貢献できる医療人材を輩出していきたい」とコメントした。
松本司薬学部長は、教員の去就について「募集停止まで可能な限り教育に携わりたいとの意思を示してくれる人が多い」と話した。
また、26年度以降、県内で薬学部を設置する大学は奥羽大(郡山市)のみとなり、地域の薬剤師不足に拍車をかけることが懸念される。松本氏は「薬剤師免許を持つ教員では、近隣の病院や薬局で地域医療に貢献したいとの意欲を示す人もいる」と語る。
私立薬系大学をめぐっては入学者確保に苦戦する大学が増加している。昨年には姫路獨協大が25年度から入学者の募集停止を発表し、千葉科学大は公立化の条件として薬学部廃止が有識者委員会から提示されるなど、苦境に陥る大学が相次いでいる。
ある薬科大学の学長は「薬剤師という職業自体は、高校訪問や求人件数の動向を踏まえて社会的ニーズは低下していない」としながらも、「6年制薬学部を設置した大学が増えすぎたことなどを理由に志願倍率や卒業率が低下した結果、他学部と比較して費用対効果の悪い学部系統となっている。人手不足により一般企業の給与水準が向上していることも資格系学部にとってマイナスに働いている」と薬学部人気が低下した背景を説明する。
その上で、「今後も入学定員の減員や淘汰が進むのは必至。周辺学部に比重を置いたり、上位校でも総合大学と合併を模索する動きが見られるかもしれない」と見通し、「入学定員の減員も文部科学省への設置申請が必要になったため、前にも後ろにも動けない大学も出ている」と予測する。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
福島県いわき市の医療創生大学が、2026年度から6年制薬学部薬学科の新入生募集を停止することを発表。2024年度新入生の入学定員充足率は50%を割り込み、今後も改善する見通しが立たないことから募集停止に踏み切りました。