医療

薬剤師と獣医療の接点拡大 ~ 教育体制整備がカギに

薬+読 編集部からのコメント

動物病院から処方箋を応需し、飼い主に薬を届ける「ペット調剤」を手がける薬局が登場する中、大賀薬局(福岡市)が動物病院をグループ化するなど、薬局や薬学領域で獣医療をめぐる動きが活発化しています。

薬局や薬学領域で、獣医療をめぐる動きが活発化している。動物病院から処方箋を応需し、飼い主に薬を届けるペット調剤を手がける薬局が登場する中、新たな動きとして大賀薬局(福岡市)が動物病院をグループ化した。薬学領域では、獣医療の多職種連携を目指し、東京薬科大学薬学部の櫻井浩子教授を代表理事とする日本獣医療薬学協議会が立ち上がった。ペット調剤の標準化に向け、アカデミア主導で薬局や動物病院勤務の薬剤師が参画する研究会も近く始動する見通しだ。都道府県薬剤師会も今年度、薬剤師向け研修会の開催を計画しており、獣医療と薬局・薬剤師の接点は広がりつつある。

 

 ペット調剤薬局登場も

 

ヒト医療では病院から薬局への処方箋受取率(医薬分業率)が8割を超えるのに対し、獣医療は約50年遅れて同様の流れを辿るとされる。ペット調剤に参入する薬局も出始めており、大賀薬局もその一つだ。2024年に開始したペット調剤事業は苦戦し、打開策として小郡市内の藤野動物病院の買収に踏み切った。同院は昨年6月にグループ入りし、今年1月に「大賀ペットクリニック」に名称変更した。

 

動物病院をめぐるM&Aは、動物病院グループや投資ファンドが主な買い手で、薬局による買収は異例とされる。薬局傘下入りを決めた伊藤太一院長は「薬局や薬剤師を中心とする企業による参入は少なく、連携の可能性に魅力を感じた」と話す。

 

その上で、「獣医師に集中している業務をいかに他職種へタスクシフト・シェアするか」と課題を指摘。動物病院での薬剤師の可能性については「薬剤師と愛玩動物看護師の給与水準を考えると雇用は難しい」としつつ、「獣医師側も薬剤師が何をできるか十分に理解しているとは言えない。薬剤師業務を見える化し、愛玩動物看護師が担う業務の一部も含めて対応し、コストに見合う価値を創出できるかがカギになる。薬剤師が動物業界で有用であると示したい」と語る。

 

薬局・薬剤師も獣医療に熱視線を送る。日本薬剤師会の岩月進会長は、昨年のインタビューで「薬の専門家であれば、農薬や動物用医薬品も含めて関与すべきで、市場を限定する必要はない。『薬』と付くものは薬剤師が担うべきだ」と発言した。神奈川県など複数の薬剤師会でも、獣医療を研修プログラムに組み入れる動きが広がっている。

 

薬学領域でも獣医師、愛玩動物看護師、薬剤師による多職種連携の実現へ日本獣医療薬学協議会が立ち上がった。昨秋から提供している「薬剤師のための獣医療薬学研修プログラム」は2次募集から有料化したが、すぐ定員に達した。

 

同プログラムは、新規業務の付加ではなく、既に求められている役割を安全に担うための基盤整備と位置付ける。獣医である櫻井氏は「薬局が獣医療に関わる意義は、動物を直接診ることではなく、飼い主を通じて健康と安全を守る点にある」とし、薬剤師の薬物療法への本格参入には慎重な姿勢を示す。

 

一方、アカデミア主導で、薬局や動物病院に勤務する薬剤師や薬科大学教員らが参画する研究会も近く始動する。メンバーには、東北医科薬科大学薬学部臨床薬剤学教室の金野太亮助教や、昭和薬科大学臨床薬学教育研究センター実践薬学部門の神林弾講師らが名を連ね、ペット調剤の標準化などを検討する方針だ。

 

獣医師の一部には薬剤師参入を歓迎する向きもあるが、職能を奪われることへの警戒感は強い。農林水産省が推進するチーム獣医療でカギを握るのは23年に国家資格として誕生した愛玩動物看護師で、その数は3万人に上る。

 

飼養者への服薬指導などでは愛玩動物看護師との協働も視野に入る。ただ、日本愛玩動物看護師会の横田淳子会長は「薬剤師はヒト医療の知識を有しているものの、動物は種ごとに生態が異なる。まず獣医療を学ぶ仕組みの整備が必要ではないか」と述べ、薬剤師を組み入れたタスクシフト・シェアには時間がかかるとの認識を示した。

 

獣医療と薬学の接点は広がりつつある一方、教育体制の整備が薬剤師参入のカギを握りそうだ。

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出典:薬事日報

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