健食事業に参入相次ぐ～医療用薬メーカーの新事業【小野薬品・東和薬品・MeijiSeikaファルマ・トーアエイヨー】

医療用医薬品メーカーの健康食品事業への参入が相次いでいる。2月には小野薬品、3月に東和薬品、6月にはMeijiSeikaファルマ、7月にはトーアエイヨーと続いた。国が健康寿命の延伸を推進する中で、コロナ禍を経て、生活者の間でさらに高まった健康・予防意識に対する需要に応え、取り込むのが狙い。製薬企業の中には、現行の医療用薬のみならず、疾病前の未病・予防、健康増進、疾病後のケアも視野に入れた事業モデルへ転換するところも出ており、その一環と見ることもできる。厚生労働省は、医師や薬剤師を巻き込む形でのセルフメディケーションを推進する方針にあり、そこを起点にした早期受診・早期治療、重症化予防や治療後のケアと、保険医療の枠だけにとどまらない一気通貫モデルを志向している。その中で医療用医薬品メーカーの貢献が試される。

試される未病・予防への貢献

東和薬品は、昨年12月に発表し、3月に約477億円をかけて健康食品・医薬品の受託製造を行う三生医薬（静岡県）を買収した。目的の一つは、健康食品の展開であり、中期経営計画では「新たな健康関連事業への展開」を掲げる。12月の記者会見で吉田逸郎社長は「予防においては、特にサプリメントを含む健康食品が有効であると考えている」と述べ、自社ブランドによる展開を表明した。

同社は、健康を中心に据えて、主力の後発品事業による治療と介護支援を視野に入れた地域包括ケアへの貢献を謳っている。そこに新規事業を立ち上げ、事業化していく方針だ。

東和の買収に先立つ2月、小野薬品は機能性表示食品を主な事業とする「小野薬品ヘルスケア」を設立した。3月には第1弾として、睡眠の質向上を謳う睡眠サプリメント「レムウェル」を新発売した。小野が取り組んでいる健康の維持に役立つ機能性脂質研究の知見を、健康食品の素材開発に優れるマルハニチロと協業することで製品化した。

小野の「持続的成長に向けた成長戦略」の「事業ドメインの拡大」に基づく取り組みで、「ヘルスケア分野の拡大するニーズを捉え、新たな価値の提供を目指す」としている。事業目標は開示していないが、数年後には5ブランド程度を中心に展開したいとしている。

他社と差別化を明確に図ったのがMeijiSeikaファルマだ。「医師に相談するサプリメント」をキャッチフレーズに参入した。第1弾の健康補助食品「メイキュア」シリーズは、受診患者の日常の健康支援として医師が推奨するもので、患者が説明を受けた医療機関コードを購入サイトで入力し、購入する仕組み。

まずはシリーズ第1弾である「メイキュアEPA1000」を首都圏で本格展開を始めた。展開エリアを順次拡大する方針だ。

サプリメント市場への参入は、「明治グループ2026ビジョン」「2023中期経営計画」に基づくもの。ビジョンでは食品、医薬品の各事業で培ったノウハウ、強みを生かし、健康・予防領域の価値創出を目指すとし、中計では新領域への挑戦を掲げていた。

受診患者の主訴以外でも健康面のアドバイスが必要なことは多い。そこで同社は、患者の疾病や健康状態、生活習慣を把握するかかりつけ医が推奨するサプリメントとして、同シリーズを立ち上げた。昨年10月から東京都23区の医療機関に同製品を案内し、メンタルクリニックや内科を中心に約200施設で紹介可能という。

事業目標は開示していないが、同社は「生活習慣などを含む健康サポートをできるよう今後も取り組む」としている。

7月にはトーアエイヨーが健康食品への参入を発表した。4日から栄養補助食品「リットコントロール」ブランドの3製品を新発売している。スペインの企業から導入した製品で、通信販売のほか、一部医療機関で販売する。

同社は「循環器領域をメインにした事業に基づくリソースを生かし、疾患の抑制から予後まで、事業の範囲を広げていこうということで始めた」と説明する。どの程度の事業規模に育成するかは「手探り」だとしている。

医療用薬メーカーの健康食品市場への参入について関係者には、毎年薬価改定で医療用薬の薬価引き下げが加速する中で、薬価制度に左右されない事業の確立という側面もあるとの見方もある。

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