薬剤師のスキルアップ 更新日:2023.12.25公開日:2022.06.28 薬剤師のスキルアップ

服薬管理指導料とは?点数・算定要件・特例・小児特定加算について解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

2022年度調剤報酬改定より、調剤報酬の体系が大きく変わります。薬局薬剤師の業務については、これまでも対物業務から対人業務にシフトする流れが進んでいました。こうした背景も踏まえて、今回の改定で対人業務への評価を高める「服薬管理指導料」が新設されています。従来の薬剤服用歴管理指導料は調剤管理料と服薬管理指導料へ細分化されるため、より一層、対人業務の強化をする流れとなるでしょう。今回は、新設される服薬管理指導料の点数や算定要件、加算項目などについて詳しく解説します。

1.服薬管理指導料とは

新設された「服薬管理指導料」は、服薬指導などにかかわる業務に対して算定される薬学管理料です。これまでの薬剤服用歴管理指導料が細分化された内容となっています。
 
従来の服薬指導では、薬剤の用法用量などについて基本的な説明をするほか、患者さんが適切かつ安全に薬を服用できるよう、服用歴や残薬確認、アレルギー歴などを確認・指導を行うというものでした。2022年度の診療報酬改定では、これらに加えて継続的に服薬状況を把握することが求められます
 
また、これまでの薬剤服用歴管理指導料では、乳幼児やハイリスク薬、麻薬、吸入薬など、細やかなフォローが必要な場合に算定できる加算項目がありました。新設される服薬管理指導料では、さらに医療的ケア児に対する薬学的管理を行った場合に加算できる小児特定加算が追加されます。服薬管理指導料の新設により、患者さんの服薬サポートを今まで以上に細やかに行うようになるでしょう。

 
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2.服薬管理指導料の点数

服薬管理指導料の点数は、以下のように算定されます。

 

1.原則3月以内に再度処方箋を持参した患者に対して行った場合 45点
2.1の患者以外の患者に対して行った場合 59点
3.特別養護老人ホ-ムに入所している患者に訪問して行った場合 45点
4.情報通信機器を用いた服薬指導を行った場合
 イ)原則3月以内に再度処方箋を持参した患者に対して行った場合 45点
 ロ)イの患者以外の患者に対して行った場合 59点

 

(厚生労働省保険局医療課「令和4年度調剤報酬改定の概要[調剤]])」より)

 

服薬管理指導料1~3については、改定前の薬剤服用歴管理指導料よりも2点高くなっています。服薬管理指導料4は、来局頻度によって算定点数が変わります。

なお、服薬管理指導料1に該当する患者さんであっても、お薬手帳を提示されない場合は、服薬管理指導料2を算定します。服薬管理指導料4も1と同様に、3か月以内に来局した患者さんであっても手帳を提示しなかった場合は、59点を算定することとされています。

3.服薬管理指導料の算定要件

続いて、服薬管理指導料の算定要件について詳しく見ていきましょう。

 

3-1.基本的な算定要件

新たに加えられた算定要件は以下です。

 

「処方された薬剤について、保険薬剤師が必要と認める場合は、患者の薬剤の使用の状況等を継続的かつ的確に把握するとともに、必要な指導等を実施すること」

 

(厚生労働省保険局医療課「令和4年度調剤報酬改定の概要[調剤]」より)」より)

 

服薬管理指導料の算定において、用法・用量・薬効・副作用など薬剤についての詳しい説明や、薬剤情報文書の提供、薬剤交付時の服用状況の確認・指導といった業務は今までどおりに行います。

また、お薬手帳への処方薬情報の記載や残薬確認、後発医薬品についての情報提供も引き続き行うこととされています。それらに加えて、患者さんの服薬状況を継続的かつ的確に把握することが求められているため、今後、薬剤師はその点を意識して服薬指導を行う必要があるでしょう。
 
「薬学的知見に基づき」服薬指導を行うことも明記されている(日本薬剤師会「令和4年度調剤報酬等改定項目①」)ため、今後は、服薬状況や服用歴などの確認だけでなく、それらの情報から患者さんのアドヒアランスが向上するような薬学的指導を行うよう求められていると考えられます。

 
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3-2.服薬管理指導料4の算定要件

改定前は来局頻度に関わらず算定点数は43点でしたが、改定後は3か月以内に再度処方せんを提出した場合は45点、それ以外は59点と、算定点数が変わります。また、施設基準や届出など細かな項目が算定要件に含まれています。
 
ただし、情報通信機器を用いた服薬指導については、2022年度の診療報酬改定では、「情報通信機器を用いた服薬指導を行った場合に、処方箋受付1回につき所定点数を算定する」と、シンプルなものになっています。また、施設基準についても削除されます。

オンライン服薬指導については、「0410事務連絡」の実績や規制改革実施計画などをふまえて、薬機法に基づくルール改正が検討されているようです。年度内の公布・施行を目指しているため、オンライン服薬指導を実施する薬局では、今後も厚生労働省などからの開示に注目しておく必要があるでしょう。

 
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4.服薬管理指導料に加算できる薬学管理料

今回の改定では、服薬管理指導料に加算できる薬学管理料についても変更や新設があります。なお、以下の加算項目については変更がありません。

 

・麻薬管理指導加算 22点
・特定薬剤管理指導加算1 10点
・特定薬剤管理指導加算2 100点
・乳幼児服薬指導加算 12点
・吸入薬指導加算 30点

 

(厚生労働省保険局医療課「令和4年度調剤報酬改定の概要[調剤]」より)」より)

 

ここからは新設された調剤後薬剤管理指導加算と小児特定加算について見ていきましょう。

 

4-1.調剤後薬剤管理指導加算

調剤後薬剤管理指導加算は、インスリンなどの糖尿病治療薬を使用する患者さんに対して丁寧なフォローを行い、結果を文書によって保険医療機関へ情報提供した場合に加算できる薬学管理料です。「調剤後薬剤管理指導加算」は、30点から60点へ評価が見直されます
糖尿病の治療は、患者さんのアドヒアランスが治療効果や安全性に大きく反映されるものです。

用法・用量・薬効だけでなく、副作用や薬剤の保管方法、食事療法や運動療法、継続服用の重要性など患者さんの理解度を医師と情報共有することで、治療効果の向上が期待できます。こうした指導を強化する点で、薬剤師の職能を十分に発揮できる対人業務として点数が見直されました。

 

4-2.小児特定加算

小児特定加算は、医療的ケア児である患者さんに対して、個々の状態に合わせた薬学的管理や指導を行った場合に算定できます。医療的ケア児とは、人工呼吸器や胃ろうなどを使用しており、自宅でのたんの吸引や経管栄養などの医学的ケアが必要な児童を指します。自宅で療養できる医療的ケア児は、全国に推計約2万人いるとされており、薬剤師による服薬サポートが求められています。
 
対象となるのは、児童福祉法第56条の6第2項に規定される障害児である18歳未満の患者とされています。
 
患者さんや家族などに必要な指導を行い、手帳に指導内容を記載した場合に小児特定加算を算定できます。

 

・【小児特定加算350点を算定できる場合】
・服薬管理指導料
・かかりつけ薬剤師指導料
・在宅患者オンライン薬剤管理指導料
・在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料

 

上記の薬剤管理指導料を算定した場合、小児特定加算は350点を加算します。

 

【小児特定加算450点を加算できる場合】
・在宅患者訪問薬剤管理指導料
・在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
・在宅患者緊急時等共同指導料

 

上記の薬剤管理指導料を算定した場合、小児特定加算は450点が加算できます。

オンライン指導の算定要件の緩和により、在宅医療を受ける患者さんに対してオンライン指導を行うことも増えると考えられます。小児特定加算は訪問の有無によって加算点数を変えています。患者さんの自宅に訪問した時は450点、訪問しなかった時は350点とざっくりと覚えておくとよいかもしれません。なお、小児特定加算を算定した場合、乳幼児服薬指導加算は算定できないことになっています。

5.服薬管理指導料の特例~かかりつけ薬剤師と連携する他の薬剤師が対応した場合~

かかりつけ薬剤師が対応できないタイミングで患者さんが来局するケースもあるでしょう。こうしたケースを想定し、できる限り継続的で丁寧な服薬サポートができるよう新設されたのが、服薬管理指導料の特例(かかりつけ薬剤師と連携する他の薬剤師が対応した場合)です。
 
算定対象となるのは、かかりつけ薬局での直近の調剤で、かかりつけ薬剤師指導料、または、かかりつけ薬剤師包括管理料を算定した患者さんです。やむを得ない事情でかかりつけ薬剤師が対応できない場合、患者さんの同意を得たうえで、かかりつけ薬剤師と連携をとっている薬剤師が指導などを行った場合に、59点を算定できます。かかりつけ薬剤師に代わって服薬指導を行う薬剤師は、十分な経験等をもつ薬剤師1名に限定されています。

2022年度の改定では、患者さんは「メインのかかりつけ薬剤師」と「サブとなるかかりつけ薬剤師」を持つことになるでしょう。「サブとなるかかりつけ薬剤師」も、事前に患者さんの同意を得る必要があるため、同意を得た当日に服薬管理指導料の特例は算定できません。なお、同意に関して同意書に追記する場合は、追記したことが確認できるよう日付を記載し、患者さんの署名を得ることが必要です(厚生労働省保険局医療課「疑義解釈資料の送付について[その1]」より)。

 
🔽同意書をもらうときの接遇マナーについて詳しく解説した記事はこちら

 

また、かかりつけ薬剤師と連携する薬剤師に対しても要件が定められています。1つは、保険薬剤師として3年以上の薬局勤務経験があること。なお、保険医療機関の薬剤師としての勤務経験が1年以上ある場合は、1年を上限として保険薬剤師としての勤務経験の期間に含めることができます。加えて、当該保険薬局に継続して1年以上在籍していることも算定要件に該当します。
 
ただし、服薬管理指導料の特例は2種類あり、「適切な手帳の活用実績が相当程度あると認められない保険薬局」については13点を算定することとされるため、該当する薬局はかかりつけ薬剤師と連携する他の薬剤師が対応した場合に「服薬管理指導料の特例 59点」を算定することができません。

6.2022年度診療報酬改定の変更点と薬剤師が気を付けること

2022年度の診療報酬改定では、服薬管理指導料以外にも、リフィル処方箋の導入や活用促進による再診の効率化、リフィル処方箋の効果について検証、コストパフォーマンスを踏まえたジェネリック医薬品の調剤体制に対する評価の見直しが行われています。

 
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また、店舗数の多い大手調剤薬局の評価や、湿布などの薬剤について保険給付範囲にも変更が見られます。地域医療や医療費など医療や健康にかかわるさまざまな課題について、薬剤師が介入し、地域に貢献していくよう期待されています。

そうしたなかで、算定項目や算定点数の見直しにより、患者さんによっては医療費が大幅に高くなってしまうケースが考えられます。例えば、新設された小児特別加算を算定する場合あらかじめ、患者さんに伝えておく必要があるでしょう。
 
また、お薬手帳についても「持参」から「提示」と要件が変更されました。お薬手帳の内容を、確実に確認する必要があります。

7.対人業務を強化して薬剤師の役割を発揮しよう

2022年度の診療報酬改定は、今まで以上に薬剤師の職能を十分に発揮し、医療に貢献することが求められる内容です。対物業務を効率化し、対人業務に集中できる環境を整えることで、今以上にやりがいを感じられる場面が増えるでしょう。より細やかに、効率的に、患者さんの健康サポートを行える薬剤師が求められています。算定要件をあらためて理解し、スムーズに業務を進められるようスキルアップを図りましょう。

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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