創薬・臨床試験

GMP調査の指摘事項、データの完全性不備が急増‐PMDA・原氏

薬+読 編集部からのコメント

「GMP調査の指摘事項で、文書管理や記録に関する不備が増加している」……
医薬品医療機器総合機構(PMDA)の品質管理部医薬品品質管理課主任専門員の原賢太郎さんが、都内の講演会で企業側への意見を述べました。
「記録した実行者が特定できるAttributable(帰属)、発生したその時に記録するContemporaneous(同時的)、事象を再現できるComplete(完全性)の三要素の不備が指摘事項に結びついている」と説明、今後、GMP調査を強化し充実させる方針です。

医薬品医療機器総合機構(PMDA)の品質管理部医薬品品質管理課主任専門員の原賢太郎氏は、日本製薬工業協会が5日に都内で開催した「GMP事例研究会」で講演し、「GMP調査の指摘事項で、文書管理や記録に関する不備が増加している」と述べ、医薬品製造で記録や保管を行う際にデータの完全性を意味する“データインテグリティ(DI)”に関する企業側の対応が不十分との認識を示した。「DIに関する指摘事項は、GMP活動として当たり前のことが含まれているが、未だに発生している」と述べ、今後GMP調査を強化し充実させる方針だ。

 

各規制当局の査察時に、DIに関する問題が多く見つかっている。米FDAが昨年、ワーニングレターを発出した全事例のうち、約4割以上がDIの不備によるもので占め、日本でも「文書管理及び記録に関する不備」が前年の25件から41件に急増し、指摘内容としてはトップとなっている。こうした状況を受け、FDAやPIC/S、WHOもガイダンスを発出し、DIに焦点を当てた監視を強化しており、日本でも医薬品製造販売業者に対して、製造販売承認書と製造実態に関する自主点検を求めるなどの措置を行った。

 

原氏は、データの記録から訂正、確認、保管、廃棄の一連作業では、DIの原則となる“ALCOA”の遵守が重要との考えを示し、中でも「記録した実行者が特定できるAttributable(帰属)、発生したその時に記録するContemporaneous(同時的)、事象を再現できるComplete(完全性)の三要素の不備が指摘事項に結びついている」と説明する。

 

具体的な事例として、記録の記入では、作業記録で署名や日時の記入が不足しているケースが多数指摘された。「余分に発行した記録用紙が作業机に置かれていて、実際の作業に用いられなかったものであるにもかかわらず、一部の記録が既に記載されていた」といった不適切な事例も見られた。

 

そのほか、作業員が「サイン・印鑑登録簿」に複数の印鑑を登録し、複数の印鑑を用いる目的や必要性が不明確であったり、包装室で作業者の印鑑をまとめて保管し、他人の印鑑を自由に使用できる状況にあったなどの指摘内容もあった。

 

原氏は、「不正を生み出すカルチャーが製造所内に存在していないかを確認しなければならない。作業員がどんなプレッシャーを受け、どんな環境で記録されているかが重要な要素であり、その点はGMP調査の限られた時間で見つけるのは難しい」と信頼性確保に向けては、経営者のトップマネジメントによる企業風土醸成が重要との認識を示した。

 

今後、PMDAでも、実地調査の割合がGMP調査全体の約1割にとどまるという状況から、書面調査を効率化させて実地調査の割合を引き上げ、国内製造所への調査を強化させていく方向だ。

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出典:薬事日報

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