2019年薬機法改正で薬剤師の役割はどう変わる?
2019年改正薬機法により、薬剤師や薬局の役割は従来から大きく変化します。今回は、薬剤師であり、現在は弁護士として活躍中の赤羽根秀宜先生が薬剤師と薬局にまつわる改正点を詳しく解説。これからの業務でおさえておきたいポイントが満載です。
INDEX
1. 「薬剤師・薬局のあり方」について
前回は、薬機法の改正の概要を解説しましたが、大きなテーマの一つであった「薬剤師・薬局のあり方」(以下)については、今回に持ち越していました。前回も言及しましたが、改正に向けての議論では薬剤師・薬局について厳しい意見もあり、薬剤師は、今回の改正を踏まえて国民の期待に応える必要があります。特に、この「薬剤師・薬局のあり方」の部分については、より意識をしておく必要があります。以下、解説します。
<薬剤師・薬局にまつわる主な改正点>
①服薬期間を通じた継続的な薬学的管理と患者支援
②医師等への服薬状況等に関する情報の提供
③地域連携薬局及び専門医療機関連携薬局の導入
④遠隔服薬指導
<2019年薬機法改正の概要をチェックする>
・2019年薬機法改正のポイントは?【よくわかる2019年薬機法改正・前編】
2. 薬剤師・薬局にまつわる改正点①「服用期間を通じた継続的な薬学的管理と患者支援」
「服用期間を通じた継続的な薬学的管理と患者支援」については、薬剤師・薬局にとって、最も大きい影響のある改正と言っていいと思います。現行法においても、薬局開設者には、薬剤師に調剤時に指導等を行わせる義務があり(薬機法第9条の3第1項)、薬剤師には、調剤した際の情報提供と必要な薬学的知見に基づく指導が義務付けられています。(薬剤師法第25条の2)。今回の改正では、薬機法及び薬剤師法が改正となり、これらの調剤時の義務に加えて、服用期間を通じた継続的な薬学的管理等が義務付けられます。
改正薬剤師法
第25条の2第2項
薬剤師は、前項に定める場合のほか、調剤した薬剤の適正な使用のため必要があると認める場合には、患者の当該薬剤の使用の状況を継続的かつ的確に把握するとともに、患者又は現にその看護に当たつている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない
この継続的な薬学的管理の義務は、すべての患者について対応が求められるわけではなく、必要があると認める場合とされており、患者の様々な状況に応じて必要性が判断されることになります。まだ省令等が具体的には定められていませんので、詳細は今後の議論になるとは思いますが、最終的には、薬剤師の専門性に基づいて判断が求められると考えられます。どのような場合に継続的な管理が必要になるかは、今後の議論も踏まえて検討しておく必要があるでしょう。
また、万が一、このような患者情報の把握や指導等が適切にできていなかったために、患者に健康被害が起こった場合などには、薬局や薬剤師が損害賠償等の責任が問われる可能性もあります。薬局・薬剤師は、この義務を適切に行っていくための体制の整備等を含めた準備をしておく必要があります。また、このような指導等を行った場合には記録が義務付けられます。
また、この義務を果たすためには、「対人業務を充実させるための業務の効率化」も重要であり、薬機法改正に向けた議論の中でも言及がされており、厚生労働省からは、「調剤業務のあり方について」(薬生総発0402第1号平成31年4月2日厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長)が示されています。
3. 薬剤師・薬局にまつわる改正点②「医師等への服薬状況等に関する情報の提供」
また、このような服用期間を通じた継続的な薬学的管理を行うこと等も踏まえて、薬剤師は、患者の情報を医師等へ情報提供し医療提供施設間の連携の推進に努めるべきとされます。努力義務ではありますが、疑義照会とは違った形で医師との連携が法律上明記されることは大きな意味があると考えられます。
4. 薬剤師・薬局にまつわる改正点③「地域連携薬局及び専門医療機関連携薬局の導入」
「患者が自身に適した薬局を主体的に選択するための方策」として、特定の機能を有する薬局を法令上明確にし、以下の名称の表示が可能となります。
①地域連携薬局
「医師若しくは歯科医師又は薬剤師が診療又は調剤に従事する他の医療提供施設と連携し、地域における薬剤及び医薬品の適正な使用の推進及び効率的な提供に必要な情報の提供及び薬学的知見に基づく指導を実施するために必要な機能に関する要件に該当する薬局」
②専門医療機関連携薬局
「医師若しくは歯科医師又は薬剤師が診療又は調剤に従事する他の医療提供施設と連携し、薬剤の適正な使用の確保のために専門的な薬学的知見に基づく指導を実施するために必要な機能に要件に該当する薬局(厚生労働省令で定めるがんその他の傷病の区分ごととなる)」
これらの薬局は都道府県知事の認定となり、1年ごとの更新制となります。なお、現行の「健康サポート薬局」も引き続き存続していくことになります(「健康サポート薬局」は届出制)。
5. 薬剤師・薬局にまつわる改正点④「遠隔服薬指導」
薬局では、調剤した際、薬剤師が対面で指導等を行う必要がありますが(薬機法9条の3第1項)、この対面の例外として遠隔服薬指導が限定的に認められます。その例外として、「映像及び音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることが可能な方法その他の方法により薬剤の適正な使用を確保することが可能であると認められる方法として厚生労働省令で定めるものを含む」と定められます。
現在の省令案で例外とされる場合として、以下のような要件が予定されているようです。
① オンライン診療又は訪問診療において交付された処方箋
※訪問診療は、薬剤を使用しようとする者の居宅等において、医師又は歯科医師が当該薬剤師との継続的な連携の下に行うものに限る。
② 同一内容又はこれに準じる内容の処方箋により調剤された薬剤について、あらかじめ、対面により、服薬指導が行われること。
③ 以下の服薬指導計画※に従って行われること。
オンライン服薬指導で取り扱う薬剤の種類及びその授受の方法に関する事項
オンライン服薬指導並びに対面による服薬指導の組合せに関する事項
オンライン服薬指導を行うことができない場合に関する事項
緊急時における処方箋を交付した医師等その他の関係医療機関との連絡体制及び対応の手順に関する事項
※ オンライン服薬指導に関する計画 薬剤師が薬剤を使用しようとする者ごとに、当該者の同意を得て策定
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則等の一部を改正する省令案(仮称)の概要」から要約
6. 薬局の「定義」が変わる
今回の改正では、薬局の定義も変わります。
現行法
薬剤師が販売又は授与の目的で調剤の業務を行う場所(その開設者が医薬品の販売業を併せ行う場合には、その販売業に必要な場所を含む)をいう。ただし、病院若しくは診療所又は飼育動物診療施設の調剤所を除く。
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改正法
薬剤師が販売又は授与の目的で調剤の業務並びに薬剤及び医薬品の適正な使用に必要な情報の提供及び薬学的知見に基づく指導の業務を行う場所(その開設者が併せ行う医薬品の販売業に必要な場所を含む)をいう。ただし、病院若しくは診療所又は飼育動物診療施設の調剤所を除く。
この定義の変更により、薬局が薬剤の提供だけでなく、服用期間を通じた継続的な薬学的管理を前提とした情報提供、指導を行うということで対人業務を行う施設であることが明確になります。また、OTC医薬品については、薬局において原則販売をする場所であることも明確になります。
今回の改正にあたり、衆参両院の厚生労働委員会付帯決議では、「患者の多くが医薬分業のメリットを実感できるような取組を進めること」とされています。これは厳しい意見も踏まえた決議と考えられますので、今回の改正を受けてこれに薬剤師・薬局はこれらに応えていく必要があるでしょう。
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