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知れば知るほど奥が深い漢方の世界。患者さんへのアドバイスに、将来の転職に、漢方の知識やスキルは役立つはず。薬剤師として今後生き残っていくためにも、漢方の学びは強みに。中医学の基本から身近な漢方の話まで、薬剤師・国際中医師の中垣亜希子先生が解説。

第46回 緑豆のチカラ・熱を冷まして潤いを与える夏食材

中医学の本場・中国では、夏に緑豆を使ったお茶やスープがよく飲まれます。日本では「緑豆はるさめ」や「緑豆もやし」がポピュラーで、緑豆そのものを見る機会は意外と少ないですよね。こちらが、その緑豆。名前のままの、緑色の豆です!

今回は、緑豆がなぜ夏の養生に役立つのか、いったいどういう効能があるのか、お話ししたいと思います。

目次

緑豆の効能:ムシムシ&カラカラの夏にぴったり!

緑豆は、「生薬」と「食べ物」の両方に属する狭間的な存在です。生薬・食材の両方で使われるものには、他にもくこの実・なつめ・山芋・黒豆・黒胡麻などがあります。

緑豆の性質・効能

【基原】マメ科 LeguminosaeのブンドウVigna radiata R.WILCZAKの成熟種子。
【性味】寒性・甘味
【帰経】心・胃・肝
【効能】
・消暑利水(しょうしょりすい)
・清熱解毒(せいねつげどく)
・止渇(しかつ)
【使用上の注意】 脾胃虚寒は注意する。
【処方例】緑豆飲:緑豆、黄連、葛根、甘草 《出典:証治準縄》

【性・味(せい・み)】に、“寒性(かんせい)”とあるように、緑豆は体を冷やして熱を取り除く作用があります。それゆえ、消化器系が冷えて弱い人は食べ過ぎに気をつけましょう。また、豆ですから、酸っぱくも辛くも無く、甘味です。甘味は味を単純に示しているのではなく、その薬食の効能を表している重要な性質のひとつです。

中医学では、寒性と甘味が合わさると、『甘寒生津(かんかんしょうしん)』といって、潤いを生む作用があると考えます。中薬学を学ぶと、性と味だけで、その薬食(生薬や食材のこと)の効能の一部を予測できるようになります。このように、漢方薬や薬膳の世界では、味と効能が関係しています。

【効能】は日本も漢字文化なので、なんとなくイメージできるかと思いますが、ざっくり説明すると下記のようになります。

消暑…熱感・口渇・汗出など暑熱症状を緩和する
利水…体内の余分な水液を尿として排出し、湿邪(しつじゃ)を取り除く
清熱…身体にこもった余分な熱を冷ます
解毒…体内の老廃物や毒素を取り除く
止渇…のどを潤して渇きをいやす

暑くて湿気が多く、むくみやすく、のどが渇き、熱中症や熱射病が心配な“夏”にもってこいの生薬・食材だということが分かりますよね。なお、「余分な水液を除く」と「潤いを補う」、真逆に見える効能が同時に存在していますが、生薬や食材など、自然界のものにはよくあることです。

「清熱は外皮」「解毒は中身」にアリ

緑豆の皮は寒性、肉(果の部分)は平性。つまり、緑豆の清熱の力は皮の部分にあり、解毒の効能は中身にあると言われています。清熱を期待するなら緑豆は皮がついたまま使用すべきで、古人は経験的に“その涼は衣にあり” (『漢薬の臨床応用』より)としているそうです。

夏の間、緑豆を煮たものをお茶代わりに飲むと、日射病の予防になります。その他、皮膚病、糖尿病・薬物やお酒などの解毒にも用いるため、熱や湿がこもりやすい体質・疾病の人は、養生法として一年を通して食べてもよいでしょう。

また、緑豆が発芽したあとの外殻は緑豆衣(りょくずい)と呼び、これも生薬に用います。清暑・解毒の力は緑豆とくらべてやや劣りますが、目のかすみやはっきり見えないなどの症状を和らげる退目翳(たいもくえい)の効能があります。

緑豆のおいしい食べ方・飲み方

緑豆は小豆に似た素朴な甘さがあって、食べやすい食材です。煮る時間によって味や色が違うため、途中で一部取り出して両方を味わってみるのがおすすめ。短く煮ると、煮汁も澄んだ色で味もサッパリして甘く感じますが、気持ち長めに煮ると豆の味がしっかりでて、これはこれでおいしいです。

煮た豆は、蜂蜜をかけたり他のお料理に使ったりして食べられ、煮汁はお茶として飲めます。煮汁は氷砂糖などの甘みと塩少々で味付けしてもよいでしょう。常温かホットがおすすめです。私は、味付けなしが好きです。

そのほか、緑豆をお粥やカレーに入れたり、潰して砂糖を加え緑豆餡(緑豆でつくったあんこ)にしたりと、アレンジはいろいろ。私は緑豆・薏苡仁(ヨクイニン:はとむぎ)・赤小豆(セキショウズ:あずき)・茯苓(ブクリョウ)・粟・大麦・キヌアなどを入れてお粥にしています。利水・清熱解毒・脾胃によいお粥です。

参考文献:
・神戸中医学研究会(編著)『中医臨床のための中薬学』医歯薬出版株式会社2004年
・中山医学院(編)、神戸中医学研究会(訳・編)『漢薬の臨床応用』医歯薬出版株式会社1994年
・凌一揆(主編)『中薬学』上海科学技術出版社 2008年
・日本中医食養学会(編著)、日本中医学院(監修)『薬膳食典 食物性味表』燎原書店2019年
・翁維健(主編)『中医飲食営養学』上海科学技術出版社2007年

「薬読」編集部より

「生薬」と「食べ物」の狭間的な存在というだけあって、お茶にしたり、お粥やカレーに混ぜたりと気軽に取り入れやすいのが魅力の「緑豆」。暑さが本格化し始めるこの季節、料理にうまく取り入れて、熱中症や日射病の予防に役立てましょう。緑豆以外にも、生薬と食材の両面で使用されているものがあるので、詳しく知りたい薬剤師の方は「漢方アドバイザー」の資格取得を目指してみては?

 
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中垣 亜希子(なかがき あきこ)

すがも薬膳薬局代表。国際中医師、国際中医薬膳師、日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー、管理薬剤師。

薬局の漢方相談のほか、中医学・薬膳料理の執筆・講演を務める。 東京薬科大学薬学部卒業。長春中医薬大学、国立北京中医薬大学、国立北京中医薬大学日本校にて中医学を学ぶ。「顔をみて病気をチェックする本」(PHPビジュアル実用BOOKS 猪越恭也著)の薬膳を担当執筆。

すがも薬膳薬局:http://www.yakuzen-sugamo.com/

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