





ただし、患者さんとのおしゃべりでは注意しなければならない点もあります。たとえば、薬剤師個人のプライベートについての話題。周囲で誰に聞かれているかわかりませんから、個人情報保護の観点からも控えるのが無難です。患者さんに対して、家族と接するように親身になって話を聞いたり行動したりするのは悪いことではありません。しかし、薬物治療の知識や技術を提供するプロフェッショナルであるという立場を忘れてはならないと思います。
薬剤師の立場から考えてみても、一緒に働く薬剤師の中には「私も同じことをしなければならないのか」と嫌な気分になる人がいるかもしれません。最悪の場合、人間関係がぎくしゃくする可能性もあります。
良かれと思って対応したことが、周囲に迷惑をかける結果となった私の失敗談を紹介します。派遣先で応対した患者さんが副作用で困っていて、投薬中に涙を流されたことがありました。偶然にも同じ症状を経験していたため、「きっと治りますから」と親身になって相談にのり励ましました。その後、シフトに入るたびに、「その患者さんから私宛に電話があった」「私に会いに窓口に来られた」などという話を聞くようになり、派遣先の常勤スタッフに迷惑をかけていることに気づきました。このときはスタッフが好意的に対応してくれて問題には至りませんでしたが、患者さんに「自分だけ特別扱いされている」と勘違いさせてしまうような言動をしてしまったことを反省し、考え直した出来事でした。
気持ちよく働く職場環境づくりをするためには、他のスタッフに負担をかけない配慮も欠かせません。

「親しき中にも礼儀あり」と言いますが、患者さんと親しくしても、仕事と私事=プライベートの線引きは絶対に必要だということを忘れないで欲しいと思います。言葉づかいや態度がくだけすぎないように、患者さんとは一定の節度を持って接しましょう。



株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日 同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: https://smilegrdn.exblog.jp/


※投稿者の特定を避けるため、一部内容を変更して掲載しております。