薬剤師の働き方 更新日:2023.11.10公開日:2022.03.23 薬剤師の働き方

薬剤師の就職先ごとの仕事内容や年収、割合を紹介!一番人気なのは?

文:テラヨウコ(薬剤師ライター)

薬剤師の資格や知識を活かせる就職先は、臨床・非臨床を問わずさまざまです。病院や薬局などの医療機関だけでなく、企業や公的施設などもあります。本記事では、薬剤師の就職先や仕事内容、年収について紹介するとともに、自分に合った就職先の選び方や、就職活動を成功させるためのポイントをお伝えします。

1.薬剤師に人気の就職先とは?

薬剤師が働く場所は病院や薬局などのみならず、企業や研究機関など多岐にわたります。まずは、薬剤師の代表的な勤務先を、在籍する薬剤師の割合の多い順に見ていきましょう。

 

■薬剤師の代表的な勤務先と人数

勤務先 人数 割合
薬局 18万415人 58.0%
病院 5万4,150人 17.4%
医薬品関係企業 4万1,303人 13.3%
衛生行政機関 6,661人 2.1%
診療所 5,806人 1.9%
大学勤務者・大学院生 5,623人 1.7%
介護保険施設 832人 0.3%
その他 1万6,856人 5.4%
合計 31万1,289人 100.0%

 

■薬剤師の勤務先の割合

※(厚生労働省「平成30年(2018年)薬剤師統計の概況」をもとに作成)

 

厚生労働省の「薬剤師統計の概況」(2018年)によると、薬剤師の過半数が勤務しているのが「薬局」です。薬局や病院、診療所などの臨床現場で働く薬剤師は全体の75%以上で、多くの人が調剤や服薬指導を行う職場に勤めていることがわかります。

2.薬剤師全体の平均年収

薬剤師全体の平均年収の推移を見てみましょう。厚生労働省が発表した「賃金構造基本統計調査」によると、2020年度の薬剤師の平均年収(企業規模計10人以上)は565.1万円(平均年齢、41.2歳)でした。2018年から直近3年間をみると、おおよそ550万円前後で安定していることがわかります。

 

■薬剤師の平均年収

2018年 2019年 2020年
平均年齢 38.6歳 39.4歳 41.2歳
平均年収 543.6万円 561.7万円 565.1万円

※厚生労働省「賃金構造基本統計調査」平成30年、令和元年、令和2年分をもとに作成。
※年収は、「きまって支給する現金給与額」×12ヵ月分+「年間賞与その他特別給与額」で算出。
小数点第二以下を四捨五入。

 

薬剤師の平均年収が増加傾向にあるのは、調査対象となった薬剤師の平均年齢の上昇が関係していると考えられます。上記の状況をふまえても、薬剤師の年収は安定した状態が続いているといえるでしょう。

 
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3.就職先別の薬剤師の年収とそれぞれの仕事内容

同じ薬剤師免許を持っていても、就職先によって得られる年収は異なります。ここではマイナビ薬剤師に掲載されている求人例を参考に、薬剤師の職場の特徴や給与の傾向について見てみましょう。

 

3-1.病院薬剤師

東京都内にある急性期総合病院の求人例を見ると、病院経験がある3年目の月収がおよそ23.4万円となっています(2022年3月時点)。
 
病院薬剤師の特徴として挙げられるのが、当直や夜勤を行う可能性があることです。当直や夜勤の回数が増えれば、手当によって収入が増えることもあります。
 
病院薬剤師の仕事は、病棟業務のほか入院・外来処方箋の調剤、抗がん剤の混注、治験サポートなど広範囲にわたります。チーム医療のなかでは、薬のプロとして高度な薬学知識が求められるでしょう。

急性期治療なのか、緩和ケアなのかなど病院ごとに違いがあり、病床数や専門分野も異なります。就職の際には、将来、自分が身につけたいスキルやかかわりたい専門分野を考えながら応募先を選ぶとよいでしょう。

 
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3-2.調剤薬局薬剤師

都内にあるチェーン調剤薬局では、26歳調剤未経験で年収440万円程度の募集が見られます(2022年3月時点)。
 
調剤薬局での仕事は、処方せんの調剤・服薬指導のほか、患者さんの自宅や施設へ赴く在宅訪問などがあります。地域の患者さんの健康に貢献するだけでなく、患者さん一人ひとりに寄り添った対応が求められます。調剤薬局では夜勤がなく、日曜が休日となるケースが多いため、ワークライフバランスを重視したい薬剤師におすすめです。
 
調剤薬局への就職を考える際、大手のチェーン薬局か個人薬局かで悩む場合があるでしょう。大手のチェーン薬局では、新人研修やE-ラーニングなど研修制度が充実している傾向があります。一方で、中小規模の薬局は、地域に密着した関わり方ができる特徴が見られます。
 
在宅専門薬局や漢方相談に強い薬局など、独自性を打ち出している企業もあります。自分がどのような薬剤師として貢献していきたいかを考えながら、働きたい職場を考えてみましょう。

 
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3-3.ドラッグストア薬剤師

東京都内にあるチェーンドラッグストアの募集要項では、年収モデルとして26歳~40歳で年収450万円~600万円と記載されていました(2022年3月時点)。
 
ドラッグストアでは、OTC医薬品の販売・指導を主な業務とするほか、調剤併設店では処方箋調剤も行います。また、企業によっては在宅訪問や無菌調剤を行っているところもあります。平日に加えて土日も営業しており、シフト制の勤務が主流です。

経済産業省の「2020年商業動態統計年報」を見るとドラッグストア業界は全国的に店舗数・売上がともに伸びており(2018年~2020年の商品販売額・店舗数の前年比増減率参照)、さらなる成長が見込まれます。OTC薬や健康食品の購入を考えるお客様の相談に乗り、自分の知識を活かして健康をサポートしたいと考える人はドラッグストアへの就職を検討してはいかがでしょうか。

 
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3-4.企業薬剤師、MR

大手製薬会社のMR(医薬品情報担当)の募集要項を見ると、新卒(学部卒)の月給は約24万円でした(2022年3月時点)。MRの初任給は調剤薬局と大きく変わりませんが、その後の昇給が大きく、営業成績が良ければ30代で年収が1,000万円を超えるケースがあります。
 
病院や薬局終業後のアポイントを取るケースが多いという性質上、実際の労働時間にかかわらず、定められた時間分を働いたとみなす「みなし労働」となるパターンが多いようです。土日祝日のほかGWや年末年始休暇など、臨床薬剤師よりも休みを取りやすい傾向があります。
 
企業薬剤師が所属しているのは、製薬会社、卸会社や物流会社など。管理薬剤師として薬の管理を行うほか、MRやMS(医薬品卸販売担当者)、治験に携わるCRC(治験コーディネーター)やCRA(臨床開発モニター)として勤めている人もいます。

企業薬剤師は、調剤や服薬指導といった業務ではありませんが、薬の流通や開発という点から多くの人々の健康にかかわるものです。自分の実力を試したい方は挑戦してみるのはいかがでしょうか。

 
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3-5.公務員薬剤師

マイナビ薬剤師によると、国家公務員薬剤師の初任給は、21万円前後で年収はおよそ300万円が目安となります。公務員薬剤師には、国家公務員と地方公務員の2種類があり、薬剤師免許の取得だけでなく、公務員薬剤師として勤務するには公務員試験に合格しなければいけません。
 
国家公務員は厚生労働省などに、地方公務員は保健所や公立病院の薬剤師として配属されます。行政機関や保健所に勤務する場合は、新薬の承認や薬事衛生が主な仕事内容です。公務員薬剤師は求人数が少ないため、就職は狭き門となっています。

 
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4.就職先を選ぶ際の3つのポイント

薬剤師としてのやりがいを持ちながら働き続けるためには、自分らしく仕事ができる勤務先選びが大切です。肉体的・精神的に負担となる職場を選ぶと、いつか無理が生じて、仕事が続けられなくなってしまうかもしれません。本格的な就職活動を始める前に、まずは自分が理想とする薬剤師像や、どのような働き方をしたいかをしっかりと考えてみましょう。就職先を選ぶ際に考えたい、3つのポイントをお伝えします。

 

ポイント① 業種で選ぶ

まずは、臨床か非臨床のどちらで働きたいのかを考えてみましょう。患者さん個々の治療に直接かかわりたいなら、病院・薬局・ドラッグストアの勤務がおすすめです。臨床から一歩離れたところから幅広く医療貢献したいと思うなら、企業・CRA・CRC・公務員薬剤師を検討するとよいでしょう。どのような形で人々の健康に貢献していきたいかじっくり考えることが大切です。

 

ポイント② 働き方で選ぶ

次に、どのような職場で働きたいのかを考えます。例えば、がん領域や生活習慣病、緩和ケアなど自分が習得したいスキルから勤務先を選ぶ方法があります。また、英語や中国語など得意な語学力を生かしたいなら、外国人対応の需要が大きい職場を選ぶのもよいでしょう。スキルアップだけでなく、無理なく仕事を続けるための労働条件も大切です。夜勤の有無や休日の取りやすさなど、叶えたい希望をピックアップしておきましょう。

 
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ポイント③ 待遇で選ぶ

実際に働くうえで、待遇の確認は重要です。月々に必要な収入は生活費となるだけでなく、奨学金を借りていた場合は返済にも充てられます。給与が自分の希望に合っているか必ず把握したうえで、検討しましょう。また、企業によっては引っ越しをともなう異動を求められる場合もあります。もし生活圏を変えたくないなら、勤務地や転勤の有無について確認が必要です。なかには、産休・育休が取りやすい環境を優先する人もいるでしょう。就職後にどのような生活を送りたいかをイメージし、優先順位を決めておきましょう。

 
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5.薬剤師が希望どおりの就職先で働くための3ステップ

どのような職場で働きたいのか、考えが固まってきたら、いよいよ就職に向けて本格的に動き出しましょう。自分にぴったりの勤務先に就職するためには、十分な情報収集と冷静な自己分析が大切です。

 

ステップ① 幅広く情報を集める

まずは大学で公開されている募集や就職サイトなどを利用して、自分の希望に合った就職先の情報を集めましょう。知り合いや先輩に、勤めている会社や業界について話を聞くとより現場のリアルな情報を得られます

 
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ステップ② 可能ならば見学に行く

会社によっては、事前に社内や店舗の見学ができる場合があります。雰囲気を見たり、実際に勤務している人たちの声を聞いたりすることで、就職後のイメージをつかみやすくなります。文字情報だけでは得らえないリアルな職場環境を知る良い機会です。

 

ステップ③ 自分の希望と会社の経営方針が本当にマッチしているのかを考える

事前リサーチをしっかり行い、一員となって働きたいと思う会社に応募します。一方で、自分の理想や条件をすべて満たせる就職先を探すのは難しいものです。希望の条件に優先順位をつけ、譲れないポイントを重視して選択しましょう。また、会社が求める人物像に沿っているかという自己分析も大切です。もし足りない部分があると感じるならば、就職活動までにスキルアップしましょう。

 
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6.さまざまな薬剤師の働き方からぴったりの就職先を選ぼう

同じ薬剤師資格を持っていても、働き方は十人十色です。持っている力を存分に発揮して、いきいきと働き続けるためには、自分に合った職場選びが大切です。目指している薬剤師像や、どのように仕事をしたいのかをじっくり考え、自分らしく働ける就職先を見つけましょう。

 
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執筆/テラヨウコ

薬剤師。3人兄弟のママ。大学院卒業後、地域密着型の調剤薬局に勤務。大学病院門前をはじめ、内科・婦人科・皮膚科・心療内科・皮膚科門前などで多くの経験を積む。15年の薬剤師歴ののち独立して薬剤師ライターへ。健康や医療、美容に関する記事を執筆。休日は温泉ドライブや着物でのおでかけが楽しみ。

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