医療

OTCの安全性情報整備へ、京大など研究開始~社会問題化する乱用防ぐ

薬+読 編集部からのコメント

京都大学大学院医学研究科の中山健夫教授、プラメドプラス社長で総合内科専門医平憲二氏らの研究グループは、10月よりOTC医薬品の安全性情報の普及や啓発に関する研究を始めました。医療従事者向け添付文書などで情報を入手できる医療用医薬品に比べ、OTC医薬品の詳細情報は入手しづらい背景を踏まえ、主にOTC医薬品でのみ使用される有効成分の安全性情報を調べ、OTC医薬品の乱用抑制や適正使用に役立つ情報に関係者がアクセスできる環境づくりを目指して研究を進めるとしています。

京都大学大学院医学研究科健康情報学分野の中山健夫教授、OTC医薬品の情報を集めた「クスリ早見帖」を無償配布するプラメドプラス社長で総合内科専門医の平憲二氏らの研究グループは今月から、OTC医薬品の安全性情報の普及や啓発に関する研究をスタートさせた。主にOTC医薬品でのみ使用される有効成分の安全性情報が不足しているとして、製薬企業や国から入手できるかどうかを調べる。OTC医薬品の乱用抑制や適正使用に役立つ情報に関係者がアクセスできる環境づくりを目指して研究を進める計画だ。

 

医療用がない成分選択
医療従事者向け添付文書やインタビューフォームで基本的な情報を入手できる医療用医薬品に比べて、OTC医薬品の詳細な情報は入手しづらい。同じ有効成分が医療用医薬品で使われていればその情報を参考にできるが、主にOTC医薬品のみで使用される有効成分の場合、開示されている情報は少ない。

 

比較的安全性の高い有効成分がOTC医薬品に使用されているとはいえ、乱用や無意識の漫然使用によって副作用や依存を発現するケースもある。最近は、新型コロナウイルス感染症治療薬と他剤の相互作用が関心を集めるなど、医療用医薬品とOTC医薬品の相互作用にも注意が必要となっている。

 

また、医師や薬剤師ら医療従事者が病院や薬局でOTC医薬品の乱用抑制や適正使用に関わるためには、基盤となる情報の整備が欠かせない。情報があれば過量服薬による副作用や中毒症状に適切に対処できる。今回の研究は、こうした背景から立ち上がった。

 

研究全体を統括する中山氏は「OTC医薬品の乱用が相次いでおり、社会問題になっている。一方、医療従事者はこれまでOTC医薬品の安全性に十分な関心を持っていなかった。今回、平先生と意見が一致し、研究に取り組むことになった」と語る。

 

当面の研究期間は1年間。まずはOTC医薬品の添付文書から成分一覧を作成し、単剤の医療用医薬品が存在しない有効成分を選び文献の一覧を作成する。併行して、医療従事者の立場から必要なOTC医薬品の安全性情報を検討する。

 

その上で、製薬企業や厚生労働省、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に対し、有効成分に関する安全性情報の有無を確認して収集する。情報は存在するものの、医療従事者向けに広く公開していないようであれば公開を打診する。

 

こうした調査結果を学会等で発表し、医療従事者が必要なOTC医薬品の情報を入手できる社会環境の構築に向けて一石を投じる考えだ。

 

平氏は、「今は情報があるのかないのかすら分からない。情報がないならないで、それを分かるようにするのが最初の一歩。調査候補の有効成分は二桁ある。最低一つは取り上げたい」と語る。

 

その一つがアリルイソプロピルアセチル尿素である。解熱鎮痛の効果を謳う多くのOTC医薬品に含まれる有効成分で、催眠鎮静作用を持ち、鎮痛の効果を高める目的で併用される。単剤の医療用医薬品はなく、詳細な安全性情報を入手しづらい。

 

鼻炎用の薬や総合感冒薬に含まれるプソイドエフェドリンも候補となっている。単剤の医療用医薬品はなく、乱用が問題視されている。

 

医療用医薬品としての販売が中止された有効成分として、非ステロイド抗炎症薬のアルミノプロフェンや第1世代抗ヒスタミン薬のカルビノキサミンも候補となっている。

 

研究グループの薬剤師である岡田浩氏(京都大学大学院医学研究科健康情報学特定准教授)は「薬局にはOTC医薬品の販売や、セルフメディケーションを推進する役割が求められている。その情報が不十分であれば、暗闇の中を車で走れと言われているようなもの」と指摘し、情報の充実に期待を寄せる。

 

平氏は、OTC医薬品の適正使用に向けて「患者はどのOTC医薬品を服用しているのかを医療従事者に明示し、医療従事者はOTC医薬品に関心を示すなど、社会の行動変容が望まれる」と話している。

 

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出典:薬事日報

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