【千葉科学大公立化で答申】「薬学部存続はリスク高い」~選ばれる大学になり得ず
千葉科学大学公立大学法人化検討委員会は25日、私立大としての運営継続を第一としつつ、公立化する場合は6年制薬学部薬学科を廃止し、看護学部看護学科と危機管理学部危機管理学科の2学部2学科体制とするなど条件付きで認めるとの答申をまとめ、越川信一銚子市長(写真=前列左から3人目)に提出した。薬学部については、公立化による学費引き下げで「千葉県内の他大学との競合優位性は高まる」としながらも、薬剤師国家試験合格率の低下など教育の質を問題視し、「受験生から選ばれる大学になり得ない」と判断した。その上で「公立大学法人に移行した場合に薬学部を存続することはリスクが高い」と結論づけた。
答申では、公立化により市の財政負担増加の可能性があるため、私立大として運営継続することが望ましいと明記。経営努力による運営継続を第一とし、困難な場合は、他の学校法人への事業譲渡を検討すべきとした。
ただ、加計学園と市の間で私立大としての存続が難しいことが確認された場合、地元住民と経済界の大学存続ニーズが高いとして、閉学を避けるために市が公立大学法人を設置し、看護学部看護学科と危機管理学部危機管理学科の2学部2学科体制とするなど7条件を満たす場合は公立化が可能とした。
一方、非存続学部学科となる薬学部薬学科に関しては、募集停止・廃止、学園が有する他大学への移転・譲渡を行う。並行して、在学生に不利益が生じないよう学生の卒業や転学に向けた支援を行うと共に、教育研究環境の維持に努めることも強く求めた。
市は公立化への移行を検討する中で、薬学部については教育の質で捉えた場合に「公立化した場合の学費引き下げによる千葉県内の他大学との競合優位性が保持できない」と明記した。
3月に発表された第109回薬剤師国家試験合格率は30.95%、新卒は39.62%と「競合する大学と比較しても低いことから、仮に入学しやすい環境が整っても国家試験に合格が難しいようであれば受験生から『選ばれる大学』になり得ない」と厳しく指摘した。
委員会の議論でも「姫路獨協大学の薬学部が募集停止となり、全国的に見ても新設を認めないということは需要と供給のバランスが悪くなっている」との意見も出されており、「公立大学法人に移行した場合に薬学部を存続することはリスクが高い」と薬学部の募集停止・廃止を求めた。
また、看護学科は国公立大の入学定員の現状を踏まえて定員削減、危機管理学科についても入学定員100人未満に削減し、経済・経営系の学科として特色を持たせるカリキュラムと教員配置に変更するよう提言した。
公立化する場合の建物・設備は市に無償譲渡するほか、市は安定的な運営に必要となる金融資産の移行を学園側に要請する。
矢尾板俊平委員長(淑徳大学地域創生学部長)は、委員長所見で「千葉科学大学が公立化した場合でも聖域なき教育改革がなければ公立大学の成功はあり得ない」との声明を出した。
また、答申提出後の記者会見では「年内にある程度方向性が見えてこないと地域・学生に大きな不利益が出てくるため、早急に協議を再開して方向性を示してほしい」と促し、「仮に募集停止となれば学生はかなり不安に感じるので、丁寧に対応し、より良い形で大学が残ることを期待したい」とも述べた。
これに対して、越川氏は「学生へのケア内容を全力で考えたい。1~2週間以内に答申内容を学園側に報告し、早急に協議再開する」とした一方、協議の行方に関しては「実際に協議しないと分からないが、できる限り早いほうが良い。公立化する場合は7条件が最低限の条件であり、学園側と考えに大きな隔たりがある場合は安易に妥協するつもりはなく、基本的には厳しく対応したい」との考えも示した。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
千葉科学大学公立大学法人化検討委員会は、私立大としての運営継続を第一としつつ、公立化する場合は薬学部薬学科を廃止し、看護学部看護学科と危機管理学部危機管理学科の2学部2学科体制とするなど条件付きで認めるとの答申をまとめ、銚子市長に提出しました。薬学部については、薬剤師国家試験合格率の低下など教育の質を問題視し、「受験生から選ばれる大学になり得ない」と判断。その上で「公立大学法人に移行した場合に薬学部を存続することはリスクが高い」と結論づけました。