術後疼痛管理チーム加算は、医師・看護師・薬剤師などの多職種が連携して、適切な術後疼痛管理を推進することを目的に設けられた加算です。本記事では、術後疼痛管理チーム加算の概要や算定要件・点数、施設基準、届出について解説するとともに、疑義解釈を踏まえた算定時の注意点や、術後疼痛管理チームにおける薬剤師の役割についてもお伝えします。
- 1.術後疼痛管理チーム加算とは?
- 2.術後疼痛管理チーム加算の点数・算定要件
- 3.術後疼痛管理チーム加算の施設基準
- 3-1.専任の看護師
- 3-2.専任の薬剤師
- 3-3.臨床工学技士
- 3-4.術後疼痛管理に係る所定の研修
- 3-5.術後疼痛管理チーム加算の施設基準の届出
- 4.術後疼痛管理チーム加算を算定するときの注意点
- 4-1.看護師の「術後疼痛管理に係る所定の研修」の具体例
- 4-2.術後疼痛管理チームの麻酔科医が術後診察時に疼痛管理を行う場合
- 4-3.入院中に複数回全身麻酔を伴う手術をした場合
- 4-4.硬膜外麻酔における局所麻酔剤の持続的注入等が3日未満で終了した場合
- 5.術後疼痛管理チームにおける薬剤師の役割とは?
- 6.術後疼痛管理チーム加算を算定するために薬剤師ができること
1.術後疼痛管理チーム加算とは?
術後疼痛管理チーム加算とは、手術後の患者さんに対して、質の高い疼痛管理を術後疼痛管理チームにより実施した場合に算定できる加算です。
2022年度診療報酬改定で、入院基本料または特定入院料のうち以下の加算として新設されました。
● 結核病棟入院基本料
● 特定機能病院入院基本料(一般病棟または結核病棟に限る)
● 専門病院入院基本料
● 救命救急入院料
● 特定集中治療室管理料
● ハイケアユニット入院医療管理料
● 小児特定集中治療室管理料
● 総合周産期特定集中治療室管理料(母体・胎児集中治療室管理料に限る)
● 小児入院医療管理料
● 特定一般病棟入院料
参照:令和4年度診療報酬改定の概要 入院Ⅰ(急性期・高度急性期入院医療)|厚生労働省
2.術後疼痛管理チーム加算の点数・算定要件
術後疼痛管理チーム加算の点数と主な算定要件は、以下のとおりです。
点数 | 100点 |
---|---|
算定頻度 | 手術日の翌日から起算して3日を限度として加算 |
対象患者 | 区分番号L008「マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔」を伴う手術を行った患者さんのうち、手術後に継続した以下の治療を行っていること ● 硬膜外麻酔後における局所麻酔剤の持続的注入 ● 神経ブロックにおける麻酔剤の持続的注入 ● 麻薬を静脈内注射により投与 ※覚醒下のものに限る |
質の高い疼痛管理 | ● 患者さんの疼痛スコアの減弱 ● 生活の質の向上 ● 合併症予防 など |
術後疼痛管理チーム | 術後疼痛管理に係る専門的な知識を有した多職種からなるチーム ● 医師 ● 看護師 ● 薬剤師 など |
業務 | ● 術後疼痛管理が必要な患者さんの状態に応じた疼痛管理・評価 ● 診療録への記載 ● 必要に応じて、主治医や術後疼痛管理チーム以外の医師、看護師等との連携 |
術後疼痛管理プロトコルの作成 | プロトコルの内容 ● 術後疼痛管理方法 ● 患者さんの安全管理 ● 合併症予防 ● 術後疼痛管理計画 など |
参照:医科診療報酬点数表|厚生労働省
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省
参照:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
日本病院薬剤師会が作成した「周術期薬剤業務の進め方」では、術後疼痛管理プロトコルは、以下の内容により構成されることとされています。
● チーム回診の対象と方法
● 術後鎮痛薬
● 無菌調製の手順
● 鎮痛薬の用法用量
● 観察項目
● 鎮痛効果と副作用の評価基準
● 減量中止基準
● 鎮痛補助薬の選定基準 など
術後疼痛管理プロトコルの構成内容は、薬剤師の職能を十分に発揮できるものとなっています。プロトコルの作成に携わる薬剤師は、積極的に参画しましょう。

3.術後疼痛管理チーム加算の施設基準
術後疼痛管理チーム加算を算定するためには、医療機関において以下を満たす必要があります。
● 算定対象となる病棟の見やすい場所に術後疼痛管理チームによる診療の実施について掲示するなど、患者さんへ必要な情報提供がされていること
また、医療機関内に以下の施設基準を満たす3名以上から構成されるチームを設置しなければなりません。
(イ)術後疼痛管理に係る所定の研修を修了した専任の看護師
(ウ)術後疼痛管理に係る所定の研修を修了した専任の薬剤師
なお、(ア)から(ウ)までのほか、術後疼痛管理に係る所定の研修を修了した臨床工学技士が配置されていることが望ましいとされています。
それぞれには勤務経験などの基準が設けられています。詳しく見ていきましょう。
3-1.専任の看護師
専任となる看護師は、年間200症例以上の麻酔管理を行っている医療機関で、手術室または周術期管理センターなどの勤務経験が2年以上あることとされています。
ここでの「年間200症例以上」とは、「マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔を伴う手術を行った患者」に係るものを指します。
参照:疑義解釈資料の送付について(その7)2022年4月28日|厚生労働省
3-2.専任の薬剤師
専任となる薬剤師は、薬剤師としての勤務経験が5年以上あることに加え、2年以上周術期関連の勤務経験があることとされています。
3-3.臨床工学技士
臨床工学技士を術後疼痛管理チームに配置する場合には、手術室、周術期管理センターまたは集中治療部門の勤務経験が3年以上あることとされています。
3-4.術後疼痛管理に係る所定の研修
術後疼痛管理に係る所定の研修とは、以下に該当する研修を指します。
(イ)術後疼痛管理のための専門的な知識・技術を有する看護師、薬剤師および臨床工学技士などの養成を目的とした研修であること
(イ)の研修については、次の内容を含むものとされています。
2. 術後疼痛発症例の抽出・早期対応
3. 術後疼痛に対する鎮痛薬の種類と説明・指導
4. 硬膜外鎮痛法、末梢神経ブロックのプランニングとモニタリング
5. 患者自己調節式鎮痛法のプランニングとモニタリング
6. 術後鎮痛で問題となる術前合併症・リスクの抽出
7. 術後鎮痛法に伴う合併症の予防・発症時の対応
8. 在宅術後疼痛・院外施設での術後疼痛管理法の指導
9. 手術別各論
なお、厚生労働省の疑義解釈資料によると、2022年4月28日時点において、薬剤師と臨床工学技士が対象の研修は、日本麻酔科学会の「術後疼痛管理研修」が該当するとされています。
参照:疑義解釈資料の送付について(その7)2022年4月28日|厚生労働省
3-5.術後疼痛管理チーム加算の施設基準の届出
術後疼痛管理チーム加算の施設基準に係る届出は、別添7の様式40の2の2を用いることとされています。麻酔科医と専任の看護師、薬剤師の氏名ならびに勤務経験、その他の構成員の職種と人数に加え、患者さんに対する情報提供体制について記入します。添付書類は以下のものです。
● 医療機関の年間麻酔管理症例数が確認できる文書
● 術後疼痛管理プロトコル
術後疼痛管理プロトコルは、必要な内容が含まれていれば様式は問わないとされています。
参照:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
4.術後疼痛管理チーム加算を算定するときの注意点
術後疼痛管理チーム加算を算定するときの注意点について、疑義解釈資料を参考にお伝えします。

4-1.看護師の「術後疼痛管理に係る所定の研修」の具体例
専任の看護師が受講しなければならない研修には、2022年3月時点で以下のものが該当するとされています。
2. 特定行為に係る看護師の研修制度により厚生労働大臣が指定する指定研修機関において行われる「術後疼痛管理関連」の区分の研修
3. 特定行為に係る看護師の研修制度により厚生労働大臣が指定する指定研修機関において行われる以下のいずれかの領域別パッケージ研修
● 外科術後病棟管理領域
● 術中麻酔管理領域
● 外科系基本領域
4. 日本麻酔科学会「術後疼痛管理研修」
4の日本麻酔学会「術後疼痛管理研修」については、2022年3月31日までに研修を修了し、修了証などの発行がされている場合、次期更新までは「術後疼痛管理に係る所定の研修」を修了したと判断して差し支えないとされています。
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)2022年3月31日|厚生労働省
4-2.術後疼痛管理チームの麻酔科医が術後診察時に疼痛管理を行う場合
術後疼痛管理チームの麻酔に従事する常勤医師が、区分番号L009「麻酔管理料(I)」における麻酔後診察を行い、診察時に併せて必要な疼痛管理を行う場合、術後疼痛管理チーム加算を算定することができます。
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)2022年3月31日|厚生労働省
4-3.入院中に複数回全身麻酔を伴う手術をした場合
一連の入院期間中に複数の手術を実施した場合、それらの手術のうち主たるものについてのみ術後疼痛管理チーム加算が算定できます。
参照:疑義解釈資料の送付について(その3)2022年4月11日|厚生労働省
4-4.硬膜外麻酔における局所麻酔剤の持続的注入等が3日未満で終了した場合
術後疼痛管理チーム加算では、術後疼痛管理チームが必要な疼痛管理を行った場合に、手術日の翌日から3日を限度に算定できます。局所麻酔剤の持続的注入等が3日未満だったとしても、疼痛管理など要件を満たす場合は3日を限度として算定できるとされています。
参照:疑義解釈資料の送付について(その8)2022年5月13日|厚生労働省
5.術後疼痛管理チームにおける薬剤師の役割とは?
術後疼痛管理チームにおける薬剤師の役割は、質の高い術後疼痛管理を実施するために編成されたチームで薬物治療全般について責任を持つことです。術後の疼痛は、患者さんにとって以下のようなリスクがあります。
● 早期離床を妨げる要因となる
● 術後合併症の発生率が増加する
● 在院日数の延長につながる
● 座位・立位の維持時間が短縮する
薬剤師が介入することで、以下のような効果が期待できます。
● 精神的安定を含めた患者さんのQOLが向上する
● 薬剤の適正使用による鎮痛効果の向上と副作用の防止が期待できる
● 注射剤や内服剤などによるインシデント、アクシデントの減少が期待できる
薬剤師は所定の研修を受講し、専任薬剤師として術後疼痛管理チームに参画して、より質の高い疼痛管理を実施することが役割といえるでしょう。
参照:個別事項(その9) 6 周術期疼痛管理について|厚生労働省
参照:周術期薬剤業務の進め方|日本病院薬剤師会

6.術後疼痛管理チーム加算を算定するために薬剤師ができること
術後疼痛管理チーム加算を算定するために薬剤師ができることとしては、知識や知見を積み重ね、チームに参画することが挙げられます。勤務経験などの要件を満たしている薬剤師は、日本麻酔科学会の研修を受講して、術後疼痛管理チームへの参画を目指してみてはいかがでしょうか。
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薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
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